証人の椅子(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

日本の映画やなぁ(いい意味で)
証人の椅子 [VHS]/奈良岡朋子,吉行和子
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ワイは無実や!
無実なんや!
叫べども叫べども声届かず。




昭和28年11月5日。
未明に事件は起こりました。

ラジオ商店主が強盗に殺害され、
内縁の妻も刺されます。


警察は証拠物件を集め、犯人を捜査しますがどうも決め手にかけるものばかりなりけり。

検察が乗り出してきて、
「これ、強盗犯ちゃうんちゃいます?
内部犯ちゃいます?」

と言い出したー!


検察の山口検事は、
証人として二人の少年を呼びし、
内縁の妻・洋子が旦那を殺した…と証言させます。


洋子は最初こそ「殺してへんわ!」と頑張っていましたが、
どんどん疲弊していき、
とうとう罪を認める供述をしてしまいます。


我に返り「殺していない」と言い続けても、
「洋子犯人」が覆ることがりません。

一審で有罪が確定し、
上告した洋子と親族たち。

しかし洋子は、上告取り下げをしてしまうのです。


裁判が長引くことで、
莫大な費用がかかり、
子どもや親族にまで迷惑をかけてしまう

それくらいなら、無実の罪でも受け入れて、さっさと刑期を終え、
自分で犯人を探す…。


何も訊く耳持たない検察に対する、
洋子の抵抗。


しかしながらこの行動は、弁護士を呆れさせ、
また親族にも衝撃を与えるものでした。


洋子の義理の甥、流ニは、洋子を無実と信じ続けます。

家業の瀬戸物商を続けながら、
洋子を支援する流二。


そして流二は、当時証言をした二人の少年を問い詰めるのです。

そこで発覚した事実。
まだ年若かった二人は、
検察官の連日の追求に耐えられず、
「早く開放されたい」
との思いから、偽証(検察側に有利な証言)をしていたっていうじゃねーですかい。



少年たちは、今でもその「偽証の過去」の呪縛に囚われ、
1人は自殺未遂までしでかしたそうな。


流二の説得で、少年たちは、
「あの証言は嘘でございました」
と証言しなおしてくれますが、
二人のうち1人は、いざというときにまた証言を翻します。


山口検事もまた「嘘の証言を強要させたんちゃうん?」と上層部から責められますが、
「んなこと、ありまっかいな!」と強固に否定。


検察と流ニ&弁護士(この人は、以前の弁護士とは違いやる気がある)との丁々発止のやり合い。
しかし、権力のある検察に外堀を埋められ屈しそうになる流二。


その時、
国会が動いた!


それでも、再審への道のりはまだまだ遠く険しいものなのでした…。

     おしまい



「徳島ラジオ商殺し事件」を元にして書かれた開高健の小説「片隅の迷路」を映画化したもの。

「徳島ラジオ商殺し事件」も、
開高健も知らない人は、
自分で調べなさい。


リンク貼って誘導するのは簡単だけど、
そこは自分で調べないと。


この映画が世に出た時、まだ被告の方は無罪を勝ち取っていませんでした。
彼女に無罪の判決が下ったのは、何と死後です。


彼女が犯人として拘束されている間に、
自首してきた男もいたけれど、
「牢屋の中で飲食がしたいだけ」(当時の日本は本当に貧しかったのですよ)と言い放たれスルーされてます。


最初こそ気丈に否定を繰り返していた洋子が、
やつれ果て夢うつつのような状態で自白させられるのは怖い。


そして、韓国映画なら、
ここぞとばかりにドラマティックにケレン味たっぷりに作り上げるであろう部分も、
この映画は、ものすごくあっさりと淡々と描いています。



救いは、
洋子の身内が皆彼女を信じていること。
「あの女のせいで人生めちゃくちゃや」
そういう人が出てこないところは(現実には、そういう問題もあったのでしょうが)、
観ていて少しだけ心の負担が軽減しました。


「もう、転ばへんから…」
証言を二転三転させた彼も、
ホンマ苦しかったんやろうなぁ
…と、
ヒシヒシ伝わってきます。

派手さは無いし、
積み上げて積み上げて…だけで、
どんでん返しもない映画ですが、

それでもこれは、
観ておくべき映画です。


イマドキの若い人は、
カット割りが多い映画じゃないと飽きるそうで(師匠が言うてはった)。
ならば余計に修行だと思って観れ!
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