ペインレス(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

ある種の想像力&補完力が無い人には、つまらない映画
ペインレス [DVD]/アレックス・ブレンデミュール,トーマス・レマルキス,イレーネ・モンターラ
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事故ったら、自分にガンがあることがわかっちゃった。
家族から骨髄を貰い受けねばならぬのに、
家族だと思ってた人は、赤の他人でした。
ギャーΣ(゚Д゚)




1930年代のスペイン。
痛みを感じない、無痛症の子たちが、わんさか生まれてきました。

彼らは、痛みを感じないことで、
他者の怪我に対する危機意識も少なく、
また自分の体にも無頓着。

政府は、彼らを危険視し、親元から離し拘束することに。


時は移り2000年代。
有能な外科医であるデヴィッドは、ブラック・ジャックさながらの、天才的な手腕でもって手術をこなす日々。

恋人を乗せて車を運転してたら事故りました。
恋人は死んでしまいますが、彼女のお腹にいた赤ちゃんは辛うじて生き残ります。


ところがデヴィッド、この事故で体内にリンパ腫があることが発覚。
「骨髄移植をせねば助からないよ」
そう言われ、オトンとオカンに泣きつきますが、
そこでわかったこと。

「アンタ、実は、うちの子ちゃうねん」
ガボーーーン!マジカ☆マジカ!


こうしてデヴィッドは、実の肉親を探し求めることになるのです。

自分のルーツを訪ねて行くと、無痛症の子どもたちが収容されていたところに辿り着き…。



1930年代と、2000年代が交互に描かれていきます。

1930年代。
子どもたちは、幽閉され続けていました。
そんな中、1人の少年、ベルカノは、同じく幽閉されている無痛症の少女と心を通わせます。
歌のうまい彼女との出会いが、
ベルカノの安らぎになるのに時間はかかりませんでした。



拘束されていた子どもたちは、ホフマンという医師により、適切なリハビリを受けることに。

痛みを感じることは無理でも、
想像力とか、愛情とか、理性とか…そういったもので、
「他者には、痛みというものが存在して、それは大変不快で辛いものなのだ」と、
感覚でなく、シミュレーションで「知っていく」様なリハビリが開始されます。


しかし、このリハビリが上手くいかない少年がいました。
自分の身体を喰っていた、ベルカノです。


彼には、どのようなリハビリも効きません。


戦争が始まり、子どもたちは「生かしておく価値なし」と次々殺されていきます。
ベルカノが大好きだった彼女も、また…。

ここでベルカノの心は完全に砕け、
人ならざる何か…に変わってしまったんでしょうね。



理性でも「痛み」を認識出来るようにならなかったベルカノだけは生かされ、
成長した彼は、
捕まえてきた敵を拷問する係になっていました。

モンスターが、生まれたよぅ!


痛みを想像できないが故に、恐ろしい拷問も平然と繰り返せるベルカノ。

そんなベルカノですが、
かつて愛した少女に似た女性に対しては何もすることが出来ず、
彼女を愛してしまうのです。



デヴィッドの育ての親は、ベルカノを拷問係にした軍人(?)でした。
共産主義者を徹底的に痛めつけるためだけにベルカのを生かしておいた奴らの1人。


ベルカノと、彼女の間に生まれた子供を、
自分のことして育てることにしたそいつこそが、
育ての親だったっちゅーね。


育ての親は「オメーの眼が、ベルカノにクリソツで、わしゃもう、辛うて、辛うて…、
生きててすみません」と、自殺します。

うヲイ!!!

そう、デヴィッドは、ベルカノの子供だったのです。


デヴィッドは、探し、探し求めてぇぇ~~と、ベルカノがかつていた場所を見つけ出しますが、
そこには、とっくに死んじゃってた(でもご遺体は美しい)ママンと、
殺戮拷問モンスター・ベルカノがおりました。


ベルカノに襲われるデヴィッド。
しかし、その美しい緑の目こそ、ベルカノの息子の証。
ベルカノは、彼をじっと見つめます。
感動の親子再会。
「と…父ちゃん…」



この人からどうやって骨髄をもらうんでしょう?
「骨髄頂戴」ってド直球に言ったところで、理解できなさそうだし…。


杞憂でした。
なんかしらんけど、火がつきます。
火事です。


母親のご遺体が燃えろよ燃えろよ~~ってなっちゃって、
ベルカノさん「はわわ~~、どうしたらいいんじゃよ~~」。

息子であるデヴィッドは、
すっかり己の運命を受け入れ、
家族一緒に燃えて死ぬ…。


赤ん坊は?
赤ん坊は、放っておくんけ?
ちょ、デヴィッドはん、
赤ん坊は…?



         おしまい



すげー鬱END。

赤さんは、多分無痛症の遺伝子を持ってるでしょう。
だから、世間から理解されないかもしれない。
そんな荒海の中に、赤さんを一人残して、家族全員死亡ENDて…!


あの同僚の女医さんが、赤さんに情けをかけてくれるかもしれないという一縷の望みはあるものの、基本、育児放棄じゃね?


赤さん側に立っちゃうと、
不甲斐ないオヤジめっ!ってなっちゃいます。


でも、考えれば、
育ての両親は鬼籍に入り(他人様の子を略奪同然に奪ってきたアカン奴)、
実の親は、モンスター。

世を儚んじゃう気持ちも、分からぬではないのですけどね。
あと、実父へのシンパシーとかも、あったでしょうし。


誰も幸せになってないやん。
スペイン内戦の傷痕は、今の今になっても残っているのですよ。
そんな強烈なメッセージを受け取りました。


ホラーじゃないです。
一応R-15指定がかかってるくらいの、痛いグロはあります。


無痛症の子が、自分の腕を焼いて、炎の美しさに陶酔してるシーン。
ベルカノが、時分の身体をついばんでいるシーン。
爪で身体を刳り合ってるシーン。

子供がする事だけに、無邪気さが加わって、余計痛い。


ベルカノが、麻酔もしてないのに痛みを与えずワンちゃんを開腹手術しちゃうところとか、
この遺伝子が、いい方に導かれれば、デヴィッドのような優秀な医者になったんですよね。



胸が痛くなる様な話。
アテクシは、スペイン内戦が絡んだ映画にハッピーエンド無し!と思っていつも観ておるのですが、これもその一つでした…。


合わない人には、徹底的に合わない、
そういう作品だと思います。


内戦ってのは、同じ民族が争うことだから、
諸外国相手の戦争とは違う、いろんなものがあると思うんですよ…。


だから戦争は良くないんだ!なーんて短絡的な結論には持って行きたくなくなるような…、
それくらい、心が引っ搔かれる映画。

「パンズ・ラビリンス」ほど完成してはいないけれど、これはこれで、
アテクシは好き。


ベルカノのキャラがすげーいいです!
腰の手術をした後の三日間は、
「無痛症になりたい」
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