ぼんち(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

船場の若旦那の恋遍歴
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ババァ、
オカン、
ボンボン(愛妾抱えてはる)、
こんな家嫁に行きとうない…。




船場にある足袋問屋河内屋のボンボン、喜久治。
河内屋は女系家族で、
未だ大婆様の、きのが権力を振るっておりました。

きのに依存しまくる娘の勢以

代々養子旦那が続いているため、喜久治のオトンも、
きのたちには頭が上がりません。


きのと勢以に、乳母日傘で育てられた喜久治は、
きのが見初めてきた砂糖問屋の弘子と所帯を持ちます。

しかし、きのと勢以の、
今ならガルちゃんで大炎上しそうな仕打ちに耐えかね
せっかく妊娠した弘子は、
「腎臓が悪い」と言い訳をして実家で赤ん坊を産みます。


怒りまくるきのと勢以は、赤ん坊だけ取り上げ離縁。

父親が死亡し、喜久治は河内屋の旦那になります。

中居の幾子(草笛光子)。
仲居頭のお福(京マチ子)。
芸者のぽん太(若尾文子)。
カフェの比佐子(越路吹雪)。


喜久治は様々なタイプの助成と関係を持っていきますが、
嫁にはしません。


きのと勢以は、お福を気に入り、娘を産ませようと画策します。


ぽん太が男の子を出産しますが、
きのは5万円(戦前ですから、かなりの金額)を渡し、
子どもと縁切りをするように言います。

幾子もまた、赤ん坊を孕みますが、
出産時に死亡。


妾の葬儀に主人は出られないという「しきたり」で、
喜久治は幾子の葬儀にも参列できず、お福の計らいで、
二階の窓から葬儀の列を眺めることしか出来ませんでした。


日本は、戦争への道を歩み始めます。
その渦の中に巻き込まれるのは、どこも同じ。


船場も焼け、蔵一つを残して河内屋は焼失してしまうのです。

蔵にぽん太たちが避難してきます。
きのと勢以は、すっかり意気消沈。
「男のものである蔵を残して、女の城である家屋敷を見捨てた」と勢以は怒り狂います。


喜久治は金庫から有り金を全部取り出し等分に分け、
河内屋の菩提寺である、河内長野の寺に行くよう皆に勧めます。
自分はここに残って足袋問屋の再開に尽くしたいと…。

きのは、ショックで自殺。
勢以は、きのという依存対象を失い消沈。


日々が流れていき、
喜久治が菩提寺に女達を訪ねて行くと、
戦後なのにふくよかに、たくましく明るく生きていく女たちの姿を見、
何も言わず帰宅するのでした。

これで女達とは縁が切れたと感じながら。


そして戦後。
喜久治はもういい年になっていますが、
未だ足袋問屋再興の夢は捨てていません。


時流を見極められない父親を、息子は、
ちょっと嘲笑してます。


喜久治は、息子から小遣いをもらいながら、
見果てぬ夢を追いかけているのでした。

     おしまい



昭和初期の浪速の商家。
しきたりがモノを言う世界。


弘子が大根を煮付けてたら、
「丸く切った大根ではあきまへんがな!
細こう切ってかさ増やす、
そういう気配りがなかったら、代々続くこの家の分限者にはなれしまへん!」
まぁこういう言い方をされます。

弘子が包丁を掴んで、
勢以を切り刻むんかと思ったら、

大根を細かく切り始めたー!
(泣きながら)


弘子が御不浄に入った後、中を見て月の物の有る無しまでチェック。

プライバシーも人権もあったものではありません。

きのも勢以も、嫁したことがないので、
姑にいびられたことがない。
だから、自分たちのしていることがえげつないとは全く思っていないんですね。
まぁ当時は、フツーにこういうのあったようですし。


喜久治は、大変優しい人なんだけど、ババァとオカンには逆らえない。
「喜久ぼん」
と持ち上げられてても、
しっかり首根っこ掴まれてますよ。
ちょっと皮肉を言ったりもしますが、ダメージを与えるほどのものじゃない…。


弘子役の中村玉緒さんが、もう、めっちゃ可愛いーー!

女優陣が皆さんお綺麗で、うっとり。
そして市川崑マジックの映像美。



舞台となったのは確か昭和前半~戦後直後にかけてだと思われます。

モラハラだパワハラだ、
義実家はおかしいだ、
そんなこと思うことも出来なかった時代。

時代は変わったなぁとつくづく思います。
同時に、
当時の「嫁」の立場に、泣けてきます。


原作者の山崎豊子さんは、
喜久治はこんな人ではなく、
ほんまの「ぼんち」になれるお人やったのに、
あんな、情けない人にされてしまった…と嘆いていたそうですが、
これはこれで非常に面白かったですよ。

と言うかこの映画、
ぼんちになる喜久治の話ではなく、
彼を取り巻く女達のたくましさを描いた作品なのでは?思ったんですが、どうかしら?


ちなみに「ぼんち」はせんべいの名前ではなく、
なんと申しましょうか、器が大きいぼんぼんのことらしいです。

ぼっちゃん→ぼんぼん→ぼんち
ええとこ(商家?)のぼんぼんの最終形態。
金の使い方も綺麗で、人としてもよう出来てはって仕事もできる、

それが、ぼんち!
既に死語。「ぼ」が「ぽ」になったらとたんにスカタン…ポチプリーズ
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