病院坂の首縊りの家(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

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映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

おっつぁん、オレァ風鈴になっちまったぜ…
病院坂の首縊りの家 [東宝DVDシネマファンクラブ]/石坂浩二,佐久間良子,桜田淳子
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謎の結婚写真のあと、
新郎が生首風鈴になって吊るされてた。
これはいかが致したことぢゃ!



作家横溝正史(本人出演)の自宅に、金田一耕助が訪ねてきます。
「アメリカに行こうと思います」

横溝先生から紹介された写真館で、パスポートの写真を撮ろうとする金田一。
その写真館には、
ちょっとおっチョコな見習い日夏黙太郎が働いてました。

このおっチョコ野郎が、金田一のためにあれこれ働いてくれる事になるよー。

その写真館の主人に、
「殺されそうになって命がピンチじゃよって、調べてプリーズ」
と依頼される金田一。


そんなこんなの写真館に一人の女が現れます。
「今日結婚式の写真を撮りたいから、出張してきて欲しい」

写真館の息子とおっチョコが案内された場所は、
「病院坂」にある廃屋で、
花嫁はどうも様子が変でしたが、
新郎の男・矢吹ジョーが、
「かってに嫁に触ってんじゃねー」とか怒ったりするのでさっさと写真だけ撮って帰宅。



後日のその廃屋にもう一度請われて行くと、
そこには男の生首が風鈴の見立てみたいにしてぶら下がってたからさぁ大変。
逃げ出した男、吉沢を捕まえますが、
「犯人ちゃーう」
というだけで何も分からず。


この廃屋の所有者は、病院経営をしている法眼家。
そして新婦は、そこんちのお嬢様・法眼由香利じゃないか、
新郎は山内敏男と判明。


山内…といえば、かつてこの「病院坂の首縊り」の名前の由来になった、
縊死自殺を遂げた山内冬子と何らかの関係が?


そこへ「山内小雪」と名乗る女性から手紙が届き、

「犯人は、このワタクシ!
兄貴と血がつながってないのですが、
彼が、くりいむレモン的感情を抱き、
結婚しようとうっせーのでぶっ殺しときました。


法眼家は、母親山内冬子の敵なので、
兄貴の首をぶら下げといたったわ。ザマァ。


でも私は罪を犯したので、死にます」


しかしこの手紙に小雪の指紋がなかったことから、金田一はホンマに小雪が書いたんか?と疑問を。

事件が膠着したかに見えた頃、写真館の主人が殺されます。
吉沢も死にます。


金田一が調べると、
現・法眼家当主法眼弥生は、かつて母親の再婚相手である五十嵐に無理やり致され、その現場を写真館の主人に激写され脅されていた事がわかってしもうた。

そして、自分が密かに産んだ再婚相手との間に出来た娘冬子もまた、五十嵐(鬼畜)に手篭めにされ、妊娠。
その娘が小雪だったこともわかってしもうた。



弥生は小雪の不遇さに、彼女と由香利は瓜二つなのを利用し、
由香利と偽ることを決意。

由香利は、気が強かったので、
「おどれら、ワシに何晒しとんじゃ、
ただで済むと思うなよ、言わすぞ、ヴォケがぁ!」
と啖呵を切った後、あっさり死んじゃったので、
ちょうど都合も良くね?


由香利を過失とはいえ殺してしまった敏男は、自殺。
「オレが死んだらよぉ~~~、
三途の川でよ~」
じゃなく、
「首を切り落として風鈴にしてちょ」
んもう!わけわからんわ!!な事をお抜かし遊ばしましたが、
まぁ遺言なので、
小雪と弥生は言いつけ通り風鈴にしようとしますが、
殆どの作業を行ったのは弥生。


写真館の主人は、弥生が陵辱されている時の写真のネガを持っていて、
ずっと弥生を強請っていたので、
弥生に殺されますた。


これらのことが余すところなく発覚し、弥生は自ら死を選びます。

全てを知った金田一は、病院坂の上に佇みます。
不幸な宿命に翻弄された女に、悲しみと慈しみのこもった視線を投げかけながら。

        おしまい



前後編。
20年越しの大長編。

これを二時間ちょっとの映画にしちゃうんだから、
色々不都合も出てきますって。

当時アテクシは桜田淳子がキライでした。
彼女の「サ行の発音」が、ちょっと癖がありすぎて(訛りを治すため努力したらそうなったそうです)。


でも今見ると。
淳子頑張ってるやん。
特に歌うシーンは、本職の歌手なので、巧いと思いますよ、素直に。

あの頃は、いまいちよく分からなかった「女の不幸」も、
今見ると、
弥生が運命に抗おうとして泥沼にはまっていく姿に、痛々しさを覚えましたし、
ラスト、
弥生の車夫が弥生の自害を知って悲しみをじっと堪えるシーンや(無法松の一生を連想した)、
全ての真実を知って弥生の心を慮る金田一の姿には、
涙がつぅぅ…と流れ落ちましたよ。


自分が陵辱され妊娠し、産み落とした娘もまた同じ男に陵辱され妊娠する。
手放さざるをえなかったその娘は、
法眼家の正当なお嬢である由香利に「乞食」呼ばわりされ、
自害する。


首を吊って死んだ母親の怨念を晴らすために自分の生首を風鈴にしてくれというあおい輝彦って、
なんというヘンテコな美意識の持ち主なのー?とか、
弥生奥様ってば、いくら小雪に同情したからって首切断を率先してするのかよー!とか、

色々突っ込みたい部分はあるのですが、
そして、話としては完全に破綻してるやん…とも思うのですが。



それでも、それを補って余りある、
女の因果の根深さが身にしみる作品です。


女王蜂中井貴恵が、横溝先生の縁者で薬学に詳しい女子大生?という役どころで出ていますが、
大根具合は抜けきらず。
あと、テンションの高さが浮きまくってて、
ちとキツイものを感じます。

横溝先生は素人なんで、この演技でも仕方なかんべ。


南部風鈴や生首風鈴が因果の糸を絡めとり結びつける。

弥生が小雪をかばいきるところに、
女の負の血脈を見た!



とにかくラストシーンの二人の男の対比が素敵。
車夫と金田一。
坂の下にいる車夫。
坂の上の金田一。
絵になるわ…。

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