ハウス・オブ・エンジェルズ(ネタバレ) | 映画でもどうどす?

映画でもどうどす?

映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。

モヤモヤムカムカ…全くお前らはっ!
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実の親に売られた少女は、
自力で売春宿を脱出するが…。
男ってーーーー!ヽ(`Д´#)ノ ムキー!!




今回結構長いです。そして真面目です。おもしろレビューじゃないので、
そういうのを期待してる方はスルーしてくださいませ。


12歳になったマリアは、貧しい村で生まれ育ちました。
兄妹も多いので父親は、僅かな金でマリアを売り飛ばします。
不安そうなマリアですが「おねえちゃんも、働きに行った」と言われしぶしぶトラックに。

マリアは人身売買の組織に連れて来られオークションにかけられます。
そこで、一緒に売られたイネスとともにある金持ちに買われることに。


金持ちは自分の息子の相手としてマリアを買ってきたのですが、
マリアが息子に逆らったことから、怒り!金持ちオヤジ自らがマリアを手篭めにしてしまうのでした。

金持ちオヤジは二人がお気に召さなかったようで、マリアとイネスを
売春宿に売り飛ばすのですよ!


夜になり、ひっきりなしに途絶えること無く客が来るその場所で、
わずか12歳のマリアは、他の姐さんたちと同じように客を取らされます。

イネスは、ここから脱走しようとマリアに持ちかけ、
先輩で一番賢い姐さんの手助けも得て、なんとか脱出に成功。

しかし宿のボスは後を追います。

マリアとイネスはある一件の家に辿り着き、助けを求めます。
優しそうに見えたそこの夫婦は、彼女たちのことをボスに知らせ、
マリアとイネスはまたあの、禍々しい場所に再び連れ戻されるのでした。



マリアとイネスだけでは脱出できるわけがない。手挽きした奴がいるはず。
そいつは誰だ?
そうボスは訊きますが、マリアは泣くばかり、イネスは頑として口を割りません。


ボスはイネスをジープに繋がれているロープで縛り、
市中引き回しの刑に処します。
土埃が舞う荒れた道路を引きずり回されたイネスは、ぼろぼろになり死亡。

処刑されることがわかったイネスは、
それまで凛とした姿を見せていたのですが、一瞬クシャッと泣き顔になるのです。
辛い。
ほんとうに辛い。


イネスが亡くなり、マリアは罰として無休で一ヶ月の間客を取らされます。

ある日保健員がやってきて、
「あんな子供に客を…」
と絶句するのですが、彼には何も出来ません。
そして同じ宿にいる一人が「AIDSかも知れない」とボスに告げます。

翌日、その女性は姿を消していました…。

マリアは再び脱走を試みます。
賢い姐さんにもらった一つの電話番号だけを道標とし、
皆がワールドカップに夢中になっている隙に、一人宿を後にします。


捕まりそうになる寸前に、トラックに拾われたマリアは、公衆電話の場所まで連れて行ってもらいますが、
電話のかけ方もわかりません。

人が来て電話をするのを見て、見よう見まねで電話をするマリア。

やってきたおばちゃんは、姐さんの昔の知人。
マリアにIDと、新しい名前を作ってやるといいますが、
何の事はない。彼女もまた娼婦宿の親分だったのでした。

マリアはそこも脱走。

故郷に帰りたいマリア。
しかし金もなく知識もなく、何も持っていないマリア。

ヒッチハイクでトラックに乗せてもらいますが、
その代償は、やはり彼女の身体だったのです。


マリアは名前を変え、新しい一歩を踏み出すのですが、
その未来は決して明るいものではないのでした…。



   おしまい

実話に基づいた映画。
観ていて、胸が苦しくなってきます。



「髪を伸ばしなさい」(=可愛く見えて客がいっぱい付く)
ことに逆らって自分で髪を切るマリア。
それくらいしか反抗の手段をもたないのですよね。

姐さんは、マリアのことを親身になって気にしてくれます。
保健員も、気にかけてくれます。
しかし、彼女にも彼にも、マリアをここから救い出す力はないのです。
可哀想に…と思っても、何も出来ない。
それはこの映画を観ている、こちらの人間も同じ。



雀の涙ほどの金で売られる人生。
身体も出来上がっていないうちから、売られる人生。
逃げて逃げて、それでも結局体を使ってしか次の場所に移動できない人生。
そして移動したと思っても、同じような地獄が待っているだけの人生。


姐さんたちの中には、娼婦の宿でもまだマシだという人もいます。
食事も取れる、微々たるものでも給料ももらえる、ベッドもある、服もある…。
幸福の基準があまりにもささやかで、涙しそうになるのです。


マリアの友人、イネス。
強く気高い彼女は、結局その強さのせいで殺されてしまいます。

暴力も、性的なものも含め、
直接的なシーンは一切ありません。
しかし無いからこそ、観ている人の想像力が問われる作品なのではないでしょうか。



地味に…淡々と描かれていて、ドラマティックな展開もなければ、
どんでん返しもありません。
わ~っと来てガーっとくるシーンもありません。

全ての人におすすめはしませんが、
この映画の舞台となったブラジルだけで無く、世界には貧しさ故に身を売らねばならない(その「身」の中には臓器も含まれます)子どもたちがまだまだ大勢いること。
忘れてはいけないことだと思います。

女の子のお母さんには、ちょっと苦しくてたまらなくなる映画かも…。
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