少年は残酷な弓を射る(ネタバレあり) | 映画でもどうどす?

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映画と読書の感想を気が向いたら書いてます。
どちらも、ホラーとミステリが多め。
ホラーなら悪魔よりゾンビや怨霊。
ミステリならイヤミス。


やっぱりお父ちゃんは、なんの役にも立たへんやないかー!
少年は残酷な弓を射る [DVD]/ティルダ・スウィントン,エズラ・ミラー,ジョン・C・ライリー
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聡明で行動力もある自立した女性、エヴァ。
彼女は、ちょっとイケてない旦那と結婚し妊娠するのだが、この懐妊はどうも本意ではなかったらしい。
ニンプリンセスなのに浮かれた表情ひとつ見せない。
そして生まれてきた子供ケヴィンは、エヴァに対し「憎悪」と言う感情しか持ち合わせていないかのようだった。
ケヴィンに対しどう接していいのか戸惑いと苛立ちを隠せないエヴァ。

家族の上に残酷な運命が降りてくるまで、あと少し…。



四六時中泣き続けるケヴィン。
あまりの泣き声に工事中の騒音の中に身を置き、
我が子の泣き声を騒音で消してしまうまで追い詰められているエヴァ。
なのに旦那は「ゆすったら泣き止むや~ん」とお気楽。ヽ(`Д´#)ノオマエナー


年月が過ぎるのに、何時まで経ってもおむつが取れないケビン。
コミュニケーションも取りづらい。


それでもエヴァはよく頑張ったと思いますよ。
普通なら、あのボール遊びの所で、
「そんなにやりたくないなら、もうお母さん知らんっ!」
とぶちきれてもおかしくないし。

まずあんなに泣く子なら、
マンションの窓から放り投げる母親だっていると思うの。

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成長しても、反抗的で母に対しどこか軽蔑と敵意を含んだ態度をとるケヴィン。
父親に対しては、ニコニコしてるのに。

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         あら、奥様!ハンザミングメーンですやん。性格悪いけど。

前半、時系列が前後してて、
エヴァの過去がフラッシュバックのように映しだされます。

観ている方は「ケビン、なんかしでかしよったな」とは思うものの、

家にペンキを投げつけられたり、
いきなり女性からビンタ食らったり、
買った卵を全部割られたり、
ものすごい憎しみをぶつけられてるエヴァに、

一体、何があったんだ?と興味が湧いていきます。


エヴァは、所謂、家庭的でミルクの香りのするママではないかもだけど、
一方通行でもケヴィンとコミュニケーションを取る努力はしてますよね。
夫のフランクリンも、彼なりに良かれと思うやり方で家庭を支えようとしてるけど、
エヴァの望むやり方じゃない。
はっきり言って、表面的に波風立たなかったらええんちゃうん?という風に見えちゃう。

ケヴィンに弓の面白さを教えたのも彼だしね。


そうこうしてるうちに、エヴァに娘が誕生します。
セリアと名付けられたその子は、可愛く砂糖菓子のような「オンナノコ」
でもケヴィンはこの子のことも嫌い。


ある日、排水管掃除に使う溶剤で、セリアが片目を失う事故が起きます。
フランクリンはちゃんと保管をしてなかったエヴァを責めますが、
エヴァは「ケヴィンがやったに違いない」と反論。
その答が「カウンセリングに行けや」

……これだから、オトンってやつはーーー!

そして、事件が起こります。
通っている高校の生徒たちを次々弓で射るケヴィン。

逮捕されても、平然とし、剰え母親に対して嘲笑いさえ浮かべるケヴィン。

精神的に崩壊寸前で家に帰ったエヴァは、
そこで弓で射抜かれて殺されているフランクリンとセリアを発見してしまいます。

ここまでして、母に嫌がらせをしたいのか?

何度も何度もケヴィンに面会には行くけど、
会話もない面会。


そしてある日の面会で、ケヴィンは「大人の監獄に行くのはちょっと嫌かも」な弱音を吐きます。

今まで、家庭の中で残酷な王様として君臨していたケヴィン。
苦しみ、悲しみ、怒るエヴァを軽視し、無視しいなすことが生きる糧だと思っていたケヴィン。

理解はあるけど浅い付き合いの父でなく、
苦悩しながらも息子を理解するために努力している母を苦しめることが今までのケヴィンの生き方そのものでした。


それは倒錯した愛に違いないのに。
彼はそこに気づけなかった。



少年は残酷な弓を射る、その行為は、
学校の生徒達の命やその後の生活を奪っただけでなく、
彼の母の世界と、
自分の狭小な世界すら奪ってしまったのでした。



多分…、少年院でかなり酷い扱いを受けていると思われるケヴィン。
彼の後頭部にある大きな傷跡がそれを物語っています。

ここに来て初めて彼は、
裸の王様だった自分が行なっていた母へのあてつけ行為が、
母の許容と庇護あっての事だったと知ることになったのではないでしょうか。
うっすらとだけれど…。



それでも母は、
町から逃げ出すこともせず(逃げ出しちゃえば、今よりはましになると思うけど息子のところに行きにくくなるんだろうね、距離的にも)、
セクハラまがいを受ける様な職場で働き、
町の人の嫌がらせにも屈せず、

ここにいる…のでした。


この後ケヴィンが改心するかどうかはもはや問題じゃないんですよ。
だって、彼が残酷な弓で破壊した世界は元には戻らないんだから。

なんというか、
とても重くて、

でも、観る人によって受け取り方もきっと変わってくるんだろうなぁ…と思っちゃう映画でした。


あの父親からあんなイケメンが生まれるなんて!
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