先日ベルプロダクションの久保智史さんがご逝去されました。

お仕事をご一緒させていただくことは遂には叶いませんでしたが、ご生前はお稽古等で大変お世話になりました。

ご急逝の報を受ける直前に、とある舞台の練習中で偶然その暖かな声を思い出していたところでした。

こういう方がいらっしゃるからと、がんばれたことがありました。

とても良い意味で、珍しい方であった、と思っております。

私が今のこの環境に心から感謝できたり、今の幸せに気づけるのは、こういう方の姿を見て来られたからだと思います。

とある細事でお詫びを申し上げた際に久保さんから頂戴したお言葉は、普通ではなかなか返せない高尚なもので、その響きは未だに鮮明に覚えていて、今度は自分自身がそのような言葉を扱える人間となろうと感じた次第です。

お稽古を共にさせていただくことができ、たくさんのことを学ばせていただきました。受けた恩を石に刻み、感謝の気持ちを送らせていただくとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。

なかなかお会いする機会も少なかった私のような者にさえ、厚い情をかけてくださる方でしたから、ご遺族や親しい間柄であった皆様の悲しみはいかばかりかとお察しします。

雪に好かれていらっしゃる方のようで、雑多な景観や音を雪が美しく覆い消してくれる中、厳かな気持ちでお見送りすることが出来ました。

好きな声、演技を突然聞けなくなってしまうというのは、とても寂しいものがありますね。

今に思いを込めて、大切にしてやって参ります。