課題と目標、そして発達と成長。目が不自由な生徒さんたちにとって大きな目標となっているコンクールで、確認できたことがたくさんありました。
みなさん、こんにちは!
FUKUON♪福田音楽教室、ピアノ講師・音楽療法士の福田りえです。
音楽を目指す視覚障害者の登竜門とも言われる『ヘレン・ケラー記念音楽コンクール』。67回目となる今年も、都内にあるトッパンホールで開催されました。
ヘレン・ケラー記念音楽コンクールは、1949年(昭和24年)12月13日、全国盲学生音楽コンクールとして、東京・有楽町の毎日ホールで始まりました。当初は東日本及び西日本ヘレン・ケラー財団を統括する日本ヘレン・ケラー協会などが主催し、盲学校音楽教育の実態を知ってもらい音楽家を志す盲学生の登竜門にするのが目的でした。
引用:東京ヘレン・ケラー協会Webサイト
私のピアノ教室からは3名の生徒さんがチャレンジ。それぞれの課題と目標をもって、取り組んできました。さて、その結果は?
ヘレン・ケラー記念音楽コンクールへ向けて、それぞれの選曲と課題・目標
小学5年生のYさん(初出場)
選曲:
ギロック『フランス人形』目標:
まず参加すること。そしてお辞儀をすること。ステージのピアノで最後まで演奏すること。ステージで喋ったり騒がないこと。コンクール自体が初参加となるYさんは、ピアノをはじめて1年ちょっと。知的な遅れもあるため、五指を動かすことと同時にペダルを使う曲の指導はなかなか大変でした。
全盲だけに耳で周りの空気を読み取りますが、微妙な空気を察知すると、テレビで聞いたセリフや電車やバスのアナウンスなどが、どんどん言葉として出てしまいます(=遅延エコラリア)。
はたしてステージ上でどうなるか……ここが心配でした。
しかし「ピアノの前で椅子に座ってエコラリアも出さず、ピアノの演奏ができたことだけでも奇跡に近いです」とお母さんも喜ばれていたので、参加できたことだけで、ひとまず目標クリアとなりました。
小学5年生のKくん
選曲:
ベートーヴェン『ソナチネト長調 第5番 第1楽章』目標:
去年よりも長い曲を弾くこと。強弱をつけて弾けること。フレーズ(スラー)を意識して弾くこと。一方、3回目の参加となるKくんは余裕の表情。それもそのはず。初出場で第2位、去年は奨励賞と、場慣れしているのです。
本番ギリギリまで耳元で曲の注意点をチェックし、メロディーを歌い、そして手を繋いでステージに出ていきました。準備もバッチリです。
かつて、はじめてのピアノ発表会の自分の番で「ギャー出ない!」と叫び、なんとか演奏が終わったら「ギャー降りない!」と叫んでいた彼はいったい何処へ……(笑)。
ずいぶん成長したなぁ~と、本当に思います。
そして結果は、ピアノ2部での『奨励賞』受賞。
おめでとう、Kくん。
▲出番を待つ小学5年生組の二人
高校1年生のトモ君
選曲:
創作の部『ボクの卒業』 / 独唱の部『サンタ・ルチア』目標:
お母さんや先生(私)への依存から離れること。声変わりの前に歌に挑戦すること。ピアノ伴奏をほかの人にしてもらい自立心を育てること。自作の曲をまちがえずイメージ通りに弾くこと。高校生になったトモ君には、自立心を持ってもらうのが大きな目標。年末には『ハーネス・キャンドルナイト』への参加を控え、リーダーとしての役割も待っています。
そのため独唱では、これまでは私がやってきたピアノ伴奏を、中学2年生の女の子にお願いしました。彼女は2歳から習いに来てくれているので、信頼感バツグン。いつも頼りになります。
介助はほとんど彼女に任せられたことで、トモ君の歌やピアノ演奏をはじめて客席でゆっくり聴くことができました(障がいのある子が演奏するときは、ほとんどステージ袖で聴いているので)。
はたして結果は……
▲女子の介助にほっぺが上がるトモ君。それを後ろから見ている弟の図。
創作・編曲の部での『奨励賞』、おめでとうトモ君。
まとめ - 発達と成長のステージ
リハーサルや本番でアチコチ走り回っている間に、Yさんの学校や保育園の先生方も見に来られていました。
知的にも重いYさんのこれまでをよくご存知の先生方は、「あの子がピアノの前に黙って座っている!?」「ピアノを両手で弾いてる!!」と、いたく感激され涙されたそうです。
▲Yさんの盲学校の先生と
ピアノや音楽によって発達・成長し、それをステージで発揮する。そしてそれが、ご家族や関わっている方々に感動や希望の光を与える。
そんな発達と成長を確認できた、ヘレン・ケラー記念音楽コンクールとなりました。
みんなの福をスイッチ(〃^∇^)オ~ン*:゜・.。..彡☆
FUKUON ピアノ講師☆福田りえ
【過去5年間のヘレン・ケラー記念音楽コンクールへの軌跡】
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