じめじめした空気が身体を包み込む。
「あっつー」
流れる汗を拭い、空を見上げると
辺りが灰色の雲で覆われ始めている。
「・・・・・・・・雨・・・・かな？」
最近続いている雨は、異常のような気がして
思わず眉をしかめた。
自分がそんな顔をしても雨が降らないはずも無く
ポツポツと顔に雨が落ちてくる。
雨に打たれながら空を見上げていると
不思議な感覚に陥る。
（まるで・・・雨が私に向かって抱きついてきているよう）
目を閉じると、冷たいはずの雨が暖かく感じるのは
何故だろうか？
「こんなに雨に濡れたから風邪ひきますよ」
屋敷に戻ると少し呆れた顔で迎え入れてくれた弁慶に
「ごめんなさい」と謝り、渡されたもので身体を拭きながら
今だ降り続いている雨をぼんやりと眺めていた。
「どうしました？」
「ううん・・・・、よく振るなーって思っただけ」
「そうですね、まあ雨季の季節ですから」
「うん、雨が降らないと困るものね」
そういいながらたわいない会話をしながらも
視線は雨に向けたまま。
地面に落ちる雨が跳ね水溜りが出来ている。
「せっかく身体を拭いたのに、濡れてしまいますよ」
「あ・・・・れ・・？」
気がついたら、弁慶の腕が腰に回され引き寄せられている。
何でこんな事になっているのだろう？
わからないまま首をひねっていると、頭上から
呆れたというか困っているというか、そんな色を合わせたため息が聞える。
「本当に、どうしたんですか？」
「うん」
「君の身体はここにあっても、心はここにあらずって事ですか？」
「・・・・・・・・呼んでいるのかな・・・？」
「は？」
驚いた声が耳に届く。
そうだよね、何を言っているのかわからないよね。
だけど
「ねえ、弁慶・・・・・呼ばれているみたいな気がする・・」
もう一度、今度はゆっくりと告げたら息を呑んで
おそらく自分を見つめているのだろう。
彼の視線を感じたけれど、今はその視線すら構う事無く
雨に魅入っていた。
「・・・・・・・・ですよ」
「え・・・・・」
小さく呟いた弁慶の声が聞き取れず、聞き返すと同時に
くるりと身体を反転させられ、私の視界に飛び込んできたのは
苦虫を潰したような弁慶の姿。
「どう・・・したの？」
「許しませんよ・・・・あなたの居る場所はここだ」
痛いほどの抱擁を受けながら目を閉じる。
「でも・・・・・呼ばれているようなの・・・弁慶・・」
「・・・・・・」
背中に手を回して言った私の言葉に彼の腕の力が強くなった気がした。
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あとがき
この話は何を書きたかったんだ？
最近、雨ばかりなので考えたお話なんですけどね。
ちょっと長編の更新率が遅くなりそうな気配が・・。（また？？）
そうならないように気をつけますけどね(￣ー￣；