夢はいつも傍にあるものだって思ったから―――。
叶わないって思っても
叶えたいって思ったから・・・。
「助けて・・・・」
この言葉は聞こえないように
この言葉は悟られないように。
「どう・・したんですか?」
振り返ると瞳を揺らし、切なげに見つめる望美ちゃんの姿。
首を傾げ見つめ返すとそっと目を伏せてしまう。
「冷えてきたわ・・。風邪をひいてはいけないから、部屋に戻らないと」
「・・・・はい」
私の言葉に、小さく返事を返し望美ちゃんは頷く。
けれど動くことは無くて・・。
「のぞ――」
「咲弥さん」
俯いたまま名前を呼ばれ開いた口を閉ざし黙って彼女のつながる声を待つ。
「私・・・。絶対運命を変えてみせます」
今度は目を逸らす事無く、顔を上げて見つめる望美ちゃんの瞳は
さっきとは違う強い輝きを放っていて逸らすことはできなかった。
「望美ちゃん」
「あっ!すみません・・。えらそうな言い方」
「ううん。望美ちゃんのそういう所、私・・・好きだよ」
思わず頬が緩んでしまう。
彼女は本当に白龍の神子なんだって感じてしまう。
前を見る力
あきらめない力
揺るぎない心
「神子は何かを変える力を持っているって思うの」
「咲弥・・さん?」
「行こうか」
望美ちゃんの背に手を置いて歩くように促すが
彼女の足は動こうとしなくて。
「軍師ってやっぱり心を隠すもの・・・ですか?」
「えっ・・」
小さく、本当に小さく呟いた言葉だったけどそれは私の耳には届いて
動揺を隠し切れなくて目を見開いた。
「弁慶さんも・・・咲弥さんも、心を開いてくれない」
「望美ちゃん」
「ごめんなさい・・」
ぺこりと頭を下げて去っていく望美ちゃんを追いかけることはできなくて
彼女の背を見送ることしかできなかった。
「心を・・・開いていない」
彼女の言葉は胸に圧し掛かってしばらくその場を動くことができなかった。
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あとがき
望美ちゃんは案外するどいって事で
ちなみに lamento(ラメンソート) はイタリア語で【悲しみに沈んだ】【痛ましい】という意味です。