黒澤明が描こうとした山本五十六 | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

本書は黒澤明監督が映画『トラ・トラ・トラ!』を

 

降板させられたいきさつを映画の主人公である

 

山本五十六の生涯。

 

さらには米軍側のキンメル太平洋艦隊長官や

 

スターク海軍作戦部長にも言及したノンフィクション

 

です。

 

 

 

 

 

『羅生門』『まあだだよ』など映画の歴史に不朽の

 

名作を残した映画監督、黒澤明。本書は黒澤監督の

 

人生において最大の挫折の一つであるハリウッド

 

映画『トラ・トラ・トラ!』の監督降板劇を黒澤監督と

 

主人公である山本五十六の二人を軸に、配給・制作

 

会社である20世紀フォックス側の動きに加え、さらには

 

米海軍側の悲劇の主人公、キンメル太平洋艦隊長官や

 

スターク海軍作戦部長たちにも論を加えた

 

ノンフィクションです。

本書を読む前、『トラ・トラ・トラ! 』の降板劇に関しては

 

黒澤監督の伝記漫画である

 

『クロサワ―炎の映画監督・黒沢明伝 (Big spirits 

 

comics special―日本映画監督列伝)』(園村昌弘、

 

中村真理子, 小学館)を読んで知ってはいたのですが、

 

この文章を書く上で肝心かなめのことを一つ忘れて

 

おりました。

「しまった…。『トラ・トラ・トラ!』の映画自体を僕は

 

まだ観ていない…!」

本書を読み始めた直後から僕はTSUTAYAに

 

駆け込んで、『トラ・トラ・トラ!』のDVDを借り、本書を

 

読むのと並行して観終えました。ラスト5分前に

 

『寝落ち』してしまいましたが…。

話を本書に戻して黒澤監督と山本五十六の悲劇を

 

追いながらあくまでも芸術至上主義で映画を完成

 

させようとする黒澤監督と、そのやり方に慣れない、

 

あるいはついていけなくなってくる製作・キャスト陣。

思うようにならない撮影に業を煮やし、精神にも

 

変調をきたしていく黒澤監督と、あくまでも

 

「ハリウッドの論理」に従って映画を制作しようとする

 

20世紀フォックス側の思惑…。

ついに両者は決裂し、黒澤監督はすべてをかけて

 

制作していた映画『トラ・トラ・トラ!』を降板させられ、

 

そこから不遇を味わった末に自殺未遂までしてしまう

 

わけですが、この辺のくだりはある程度知ってはいても、

 

心の中に重苦しい物を残してくれました。

なお、本書の巻末には『参考文献』として様々な資料が

 

紹介されており、そちらも参考になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

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