「空気」の研究 (文春文庫 (306‐3)) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

「あいつは空気が読めない」

 

「空気読めよ」…。

 

あるいは「忖度」。日本全体、および日本人を

 

呪縛する「その場の空気」という「怪物」について、

 

本書は徹底的に考察・研究したものです。

 

自分は空気が読めない…。

 

 

 

 

 

 

「有坂さんって、ほんっと空気読めないっすよねー。」

僕はかつて勤めていたとある会社で同僚に言われた

 

この言葉を僕は現在まではっきりと覚えておりますし、

 

またこれからも忘れることはないでしょう。

本書は山本書店店主。評論家の山本七平が著した

 

「山本日本学」の決定版であり、1983年(自分が生まれた

 

年だ!)の初版以来、連綿と読み継がれ、時代の岐路に

 

差し掛かるたびにクローズアップされる古典的名著

 

でもあります。

そもそも、自分が本書や関連書である

 

『「常識」の研究 (文春文庫) 』(文藝春秋)を読んで

 

いるのは、(仕事の上とはいえ)「空気」や「常識」を

 

金科玉条、あるいは一神教における「GOD」のように

 

信奉している人間たちと付き合わなくてはならなく

 

なってしまったが故であり、彼らのことを「理解」する

 

ために読んでいたというのが実情です。

本書に言わせると、昭和期以前の人びとには


「その場の空気に左右される」


ことを「恥」と考える一面があったとのことであり、

 

それが戦前、戦中、戦後を通して現代の日本では

 

その「空気」はある種の「絶対権威』として変貌し、

 

この文章を書いている時にもゾッとするほどのような

 

力でわれわれの目の前に立ちはだかっていることを

 

認識せざるを得ないのです。

僕がこれを読みながら連想したのは

 

『日本海軍400時間の証言: 軍令部・参謀たちが

 

語った敗戦 (新潮文庫)』(NHKスペシャル取材班, 新潮社)

 

 

『日本海軍はなぜ過ったか――海軍反省会四〇〇時間の

 

証言より (岩波現代文庫) 』

 

(澤地久枝、半藤一利、戸高一成, 岩波書店)でも

 

旧日本軍の元海軍将校たちの語った「失敗の本質」

 

であり、戦争の行方を左右する会議で下した決断の

 

ほとんどが「その場の空気」によるものだった、

 

という話でした。

その場の空気を読んでそつなく振舞い、周辺とうまく

 

やっていけるのなら自分は本書を読んでこんな文章を

 

書いているはずはありませんし、もともと自分が

 

「王様間の耳はロバの耳!」

 

と言ってしまうタイプの人間であることは自覚して

 

おりますが、その結果自分が「社会」や「世間」から

 

つまはじきになってもやむなしであると、それを再認識

 

させてくれた一冊でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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