無銭横町 (文春文庫) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

芥川賞作家、西村賢太先生によるデビュー10年を
 
迎えた短篇集です。田中英光の作に出会い、耽溺
 
していく19歳から20歳にかけての日々。
 
不払いの家賃をため、家主とのやり取りを私小説へと
 
昇華させていきます。






 
本書は

『無頼の芥川賞作家』

の称号をほしいままにする西村賢太先生による短編集です。
 
もはや「怨念」に近い言葉の選び方やストーリの組み立て方。
 
合間合間に挟まれる「笑い」の要素までもが「円熟」の域に
 
達しており、今回も愉しませていただきました。

ここでは6つ短篇小説が収録されており、内容は自らの
 
人生から搾り出すような赤裸々な「私小説」であり、
 
田中英光の作に出会い、耽溺していく19歳から20歳にかけての
 
日々。不払いの家賃をため、家主とのやり取りを繰り広げ、
 
母親に金をせびるために「帰郷」しては罵声を浴びせ、暴力を振るい、
 
『秋恵もの』では「お約束」の罵声に暴力は露骨な形では
 
出なかったものの、「その後」の不穏な展開を会話や
 
微妙なやり取りで魅せてくれるのです。

そして、表紙の絵を手がけるのは今回も画家、信濃八太郎氏に
 
よるもので、僕自身も実際に見たことのあるようなうらぶれた
 
風景を深みのある黒を貴重とした版画で仕上げているのを
 
見ると、素晴らしい仕事をされているなと毎度のことながら
 
深い感動を覚えるのです。

僕は西村作品を全て読んでおりますが、おそらくその
 
理由は既に幾度も書いていることを承知で言えば、
 
自分の持っている『ダークサイド』の部分を彼の小説に
 
担ってもらっているからなのかもしれません。






 

 

 


人気ブログランキング ←1クリックお願いします。