地方消滅 - 東京一極集中が招く人口急減 (中公新書) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

「このままでは896の自治体が消滅しかねない。」

若年女性人口を基にして導き出された結論は、

2040年までに多くの地方都市が消滅し、東京都を中心に

大都市圏に人口が流れ「極点社会」となる事を

記した物です。






正直に申しますと、この本について書くことは非常に気が重い…。

(気を取り直して)本書は総務大臣を務めた増田寛也氏を中心として、

「若年女性人口」をキーワードに数々の統計データを駆使して

予測した2040年までの未来図。東京を中心とした大都市圏へと

若年人口が集中し、多くの地方自治体では高齢者が徐々に減り、

大都市圏では高齢者が激増し、果ては人口の再生産が進まず、

2040年までには実に896もの自治体が「消滅」の危機を免れる

ことのできない「極点社会」を訪れるという、大変恐ろしいことが

書かれており、読んでいて時々ページをめくる手が止まって

しまうほどでありました。

その中でも1章を丸々使って論じられているのが

『第5章 未来日本の縮図・北海道の地域戦略』

でありまして、本書にいわく

「北海道は、二〇四〇年に「極点社会」が到来するという点でも

日本の縮図であり、将来の日本社会のモデルといえる。」(p97)

と言われる北海道に関するくだりでありまして、

札幌への一極集中が激しく、それぞれの地域における機関都市では

主要な産業が軒並み衰退していったりするなどの理由から人口の

流出に歯止めがかからず、2040年を迎えるまでにはほとんどの

自治体は「消滅」する…。

この章を読むだけでも本書における「価値」は十二分に

あるわけですが、残念ながらここに書かれている地方の

基幹都市を牽引していく層であろう政治エリート。経済エリートの

大半が本書に目を通してはおらず、その事実は悲劇を通り越して

むしろ喜劇としか言いようがなく、それもまた、僕を心底ぞっと

させるものなのでありました。

そのことはさておいても、後半部には

『第6章 地域が活きる6モデル』

等の解決案を出していたり、『対話篇』と題されている対談では

『やがて東京も収縮し、日本は破綻する 藻谷浩介×増田寛也』

『人口急減社会への処方箋を探る 小泉進次郎×須田善明×増田寛也』

『競争力の高い地方はどこが違うのか 樋口美雄×増田寛也』

という3本の対談・鼎談が収録され、いかにこの問題が根深いもので

あるということを思い知らされるものでありました。

この本を読んで、地方都市に生活している人間は「留まる」か

もしくは「立ち去る」のか? いずれの選択をするにせよここからは

ある種の『撤退戦』を戦っていくしかないのではあるまいか? 

そんなことを考えてしまうのでした。

そして、本書の巻末に収録されている

『全国市区町村別の将来推計人口』

という統計の数字の意向を見るたびに暗澹たるものが

僕の頭の上に覆いかぶさってくるのでした…。

※追記

本書が刊行されて以降、都市圏や全国の地方自治体は

上へ下への大騒ぎとなり、「尻に火がついている」と判った

人々はそれぞれ、「地方消滅」を回避するための取り組みを

始めていることを小耳に挟むわけですが、その「答え」が

出るのは2040年。

どのような「結果」になるかはまさに「神のみぞ知る」と

言ったところでしょうか。




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