- 本書はプロモーターとして裸一貫から
- 一時代を築いた津田博明氏の人生を
- 筆者が18年の歳月を費やしたノンフィクションです。
- 「浪速のロッキー」
- こと赤井英和氏との相克劇は重い読後感を
- 遺しました。
- 世に格闘技は数あれど、個人的にはボクシングが
- 見ていて最も手に汗握るものであると思っております。
- しかし、本書はボクシングに対する『幻想』を
- 根底から覆すようなほど重いノンフィクションで
- あります。
筆者は18年もの歳月をかけて本書を執筆されたの
- ですが、本書の主人公である津田博明氏は既に
- 鬼籍に入り、一方の当事者である元プロボクサーであり、
- 現在は俳優、タレントとして活躍する赤井英和氏にも
- 殆ど当時の事を目して語らず、そういった意味では
- 人によっては不満が残るものなのかもしれません。
それでも、大阪は西成の下町から徒手空拳で
- 身を起こし、様々な職業を転々としながら
- ボクシングのトレーナーとして業界へと分け入り、
- 現在のグリーンツダボクシングクラブを一代で
- 築き上げ、やり手のプロモーターとして数々の勝負を
- 実現させた男の奇跡は一筋縄では行かないものがあり、
- 人間の持つ複雑で、ドロドロした部分がにじみ
- 出ておりました。
赤井英和氏との出会いを別れを読んで行くと、
- 昔とある人に言われた
「有坂君、深く関わりあった人と人が分かれる時には
- 握手をしてハイ、サヨウナラ。お互いに元気でなって
- 言うわけには行かないんだよ。そんなきれいごとの
- 世界じゃない。大抵はおたがいに憎しみあって
- 傷つけあって、そうやって分かれていくものなんだよ。」
と言われたことを久々に思い出しました。
決定的な訣別を経た後に津田氏は体調を崩し、
- 闘病生活をするのですが赤井氏は彼の病室を訪ね、
- そこで最後の邂逅を果たすのですが、後に
「それは、和解だったのですか?」
と当時のことを問われた時に赤井氏は
「和解。そんなものはあらへんよ」
とつぶやくような声で答えていた、と言う箇所がとても
- 印象に残っているのでありました。
光と闇がリングで交錯するボクシングと言うスポーツの
- 『闇』の部分が色濃く浮き出た本書ですが、これを
- 見た後でリングの上で血反吐を吐いて打ち合う
- 選手はもちろんのこと、セコンドを始めとする周辺の
- 人間を見る眼差しも一変することでしょう。
- そんな一冊です。
- 浪速のロッキーを<捨てた>男稀代のプロモーター・津田博明の人生/KADOKAWA/角川書店
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