身を捨ててこそ | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

内容(「BOOK」データベースより)

大阪で極道に襲われ入院生活を余儀なくされた梨田雅之は、

生来の放蕩癖を抑えられずにいた。

そんな彼がフラリと立ち寄った雀荘で出会ったのは、

砂押という初老の男。やくざ相手に一歩も引かない

梨田でさえ気圧される独特のオーラ。

やがて梨田は砂押の導きのもとに東京の広告代理店に勤め、

社会や時代の摂理を学んでいく。

周りには一癖も二癖もある男たち。そして、

恋仲になった女子大生・水穂。激動の昭和を、

梨田はどう生きるのか?痺れるほどの

「生への実感」を求めて突き進む男の姿を描く

傑作長編。





病葉・梨田雅之が帰ってきた―。この話を聞いたときには


全身に衝撃が走りました。彼は前作のラストで、先物会社社長である


辻野一派にわき腹を刺されたところで終わっていたからであります。


すんでのところで一命を取り留めた梨田は長期の入院生活を


余儀なくされます。暇をもてあました梨田は病院を抜け出し、ふらりと


立ち寄った雀荘で一人の初老の男に出合うことになります。彼の名は


砂押学。幾多の修羅場を潜り抜けた梨田でさえもたじろぐオーラを持つ


砂押に見入られ、彼のことを師匠と呼び、ともに梨田は大阪を離れ、


慣れ親しんだ東京に戻ることになります。しかし、それ以前に彼を麻雀をはじめ


ギャンブルの世界にいざなった永田は梨田に『もうギャンブルはやめる』と


電話で彼に伝え、ここでひとつの別れが存在します。東京に入って住まいの


ない彼は、そのまま砂押の家にしばらくの間、暮らすことになります。


大阪で出会った頃のたたずまいからは想像もできないほど瀟洒な家に住んでいた


砂押の家は戦争で財を成したいわゆる『政商』であり、砂押自身は


戦争に行っても彼の父は戦争を利用して財をなす。それに嫌気をさした彼は


それをきれいさっぱりくだらないことに使うと決心したというのでした。梨田は


砂押の紹介で広告会社のTエージェンシー(わかる人にはわかりますね)に勤める


事となります。配属されたのはマーケティング部で、ここで梨田は社会の仕組みを


教わっていくこととになります。まわりには一癖も二癖もある男たちがおり、


海千山千の梨田も彼らの生態をつぶさに観察しつつも、広告代理店の仕事と、


砂押との付き合いに終始していきます。ここでの展開は後に恋仲になっていく


水穂との出会いでしょう。彼の女性遍歴でもハキハキしたところは彼女しかない


個性があって、物語に彩を添える存在でございました。やはり、最大のハイライトは


末期のガンで自らの余命がもうあまり残っていないと告白した砂押がなぜ、梨田を


そんなに気にかけたのか、ということについて『死の床』で梨田に語りかける場面で、


ここに関してはご自身で確認をしていただけるとありがたいのですが、梨田は終戦時に


生まれ、日本がどうなっていくかを見ていける―『病葉』というものを梨田の中に見つけ、


彼を導こうとした砂押と、彼の『遺志』を引き継ぎ、


激動の昭和という時代を梨田雅之という男がどう生きていくのか。


今後も展開に目が話せません。



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