- 先日、とある機会があって小林氏の描いている『ゴーマニズム宣言』を最初から
- 『戦争論』シリーズに代表される特別編にいたるまで、振り返ってみました。
- 小林作品からはここ数年、遠ざかっておりましたので、
- 氏の現在に至るまでの思想の変遷をたどることができました。
で、今回氏が編集長として発行していた『わしズム』が
- 30号目にして復刊するという話を伺い、こうして手に入れて
- 読んだところでございます。正直なところを申し上げますと、
- この『わしズム』という雑誌。創刊以来僕はすべてに目は通していたのですが、
- 『ゴーマニズム宣言』以外はほぼ読み飛ばしておりましたので、
- 一言半句にいたるまですべてのページ、文章に目を通したのは、
- 今回が初めての経験で、ほぼ丸一日を費やしてすべての文章を
- 読み終えたときにはすでに窓の外は真っ暗でございました。
僕は日ごろ、文芸誌、もしくは総合誌には余り目を通さないほうですが、
- この『わしズム』は一誌一誌を『これが最後だと思って作っている』という言葉に
- 偽りはなく、まるでジェットコースターの如く硬と軟。聖と俗を
- 巧みに織り交ぜたような紙面でありまして、背表紙に印刷されてある
- 1,000円という価格を見たときには
- 『え、小林先生。ここまでやってこの価格ですか!?』
- と写っている小林先生の写真に語りかけてしまったことを、
- ここに告白いたします。
最初の特集である『女性宮家創設の真相はこれだ』では
- 皇室の『お世継ぎ問題』と女性天皇の存在を認めるか否かで、
- 今、論壇では喧々諤々の論争が行われていることを
- これを読むまで僕は知りませんでした。天皇陛下や皇后陛下は
- 震災地へ赴かれたときや陛下の手術のご様子が報じられた際に
- 『本当に品の良い方だな、できることならば今後も末永くあってほしい』
- ぐらいのことしか考えていなかったので、『男系絶対』を唱える人間との
- 激しい論争が『朝まで生テレビ』(僕はほとんど見ませんが)で
- 行われていることを知りました。で、この問題で一番びっくりしたのは
- 皇族と一般人は『違う』というのは感覚的にわかっていたつもりでも
- 一般人が憲法で保証されている『表現の自由』といったものが
- 一切ないのだということでした。だから、やいやいと自分たちのことを
- 言う人に対しても一切反論ができないのだと、その話を聞いたときには
- 『やんごとなきかたがたも楽ではないんだなぁ』という感想を持ちました。
- 僕がもっと皇室問題や神道に造詣が深ければよかったのですが…。
特集第二弾は『AKB48で日本が変わっていく』で
- 僕は小林先生がここまでAKB48に嵌っていたことを始めて知りました。
- 実を言うと、僕も2006年当時、付き合いのあった人間から
- 何度か秋葉原のドン・キホーテにある『AKB劇場に一緒に行こうよ』と
- 誘われていたものの、なんとなく食指がわかなかったので
- 行かないでいたら、あれよあれよという間に彼女たちは
- 日本を代表するトップアイドルの地位に駆け上がっていき、
- 彼女たちがつぼみから花を咲きかける瞬間を見逃してしまったと
- いうまことにもったいない記憶を思い出してしまいました。
- 秋元康先生との対談では小林先生は熱く、熱くAKBのメンバーや
- パフォーマンスのことを語り、『ゴーマニズム宣言』では
- AKB劇場に実際に足を運んで『チーム4』の公演の様子を
- レポートしたときのことを漫画に描いております。
- 女性遍歴が多いので彼女たちを見る『視点』が鋭かったことが
- 印象に残っています。小林先生の「推しメン」が大島優子、柏木由紀、
- 市川美織(僕ははじめて知った)だというところもニヤリとさせられます。
もちろん、脇を固める論文執筆陣も本当に豪華なもので
- 「女系天皇公認の歴史的正当性」という田中卓先生の
- お書きになられた論文には
- 『もっと僕に神道や皇室に関する知識があればなぁ』
- と思わせ、AKB48を多角的に論じている執筆陣にも経済的なことから
- センターをつとめる前田敦子ちゃんの『ファム・ファタール』ぶり。
- 『フェイクからダダ漏れへ』など、よくもここまでかけるもんだな、
- ともう賞賛しかない文章が目白押しでありました。
小林先生の真骨頂である毒をたっぷり含んだギャグマンガ
- 『10万年の神様』や辛酸なめこさんの家政婦の実態を扱った『アセンション宣言』。
- 照沼ファリーサさんの官能あふれるヌードグラビアありとまさに
- 『魂を込めた』雑誌であることが全編に渡ってほとばしっており、
- 現在でも表現者として第一線をひた走り、新しい世界へ行こうとされる
- 小林先生のバイタリティーにただただ打ちのめされるものでありました。
- 小林先生、これで1,000円は、安すぎです。
- わしズム/著者不明
- ¥1,050
- Amazon.co.jp
←1クリックお願いします。