わしズム 夜明けの復刊号 Vol.30 | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

先日、とある機会があって小林氏の描いている『ゴーマニズム宣言』を最初から

『戦争論』シリーズに代表される特別編にいたるまで、振り返ってみました。

小林作品からはここ数年、遠ざかっておりましたので、

氏の現在に至るまでの思想の変遷をたどることができました。

で、今回氏が編集長として発行していた『わしズム』が

30号目にして復刊するという話を伺い、こうして手に入れて

読んだところでございます。正直なところを申し上げますと、

この『わしズム』という雑誌。創刊以来僕はすべてに目は通していたのですが、

『ゴーマニズム宣言』以外はほぼ読み飛ばしておりましたので、

一言半句にいたるまですべてのページ、文章に目を通したのは、

今回が初めての経験で、ほぼ丸一日を費やしてすべての文章を

読み終えたときにはすでに窓の外は真っ暗でございました。

僕は日ごろ、文芸誌、もしくは総合誌には余り目を通さないほうですが、

この『わしズム』は一誌一誌を『これが最後だと思って作っている』という言葉に

偽りはなく、まるでジェットコースターの如く硬と軟。聖と俗を

巧みに織り交ぜたような紙面でありまして、背表紙に印刷されてある

1,000円という価格を見たときには

『え、小林先生。ここまでやってこの価格ですか!?』

と写っている小林先生の写真に語りかけてしまったことを、

ここに告白いたします。

最初の特集である『女性宮家創設の真相はこれだ』では

皇室の『お世継ぎ問題』と女性天皇の存在を認めるか否かで、

今、論壇では喧々諤々の論争が行われていることを

これを読むまで僕は知りませんでした。天皇陛下や皇后陛下は

震災地へ赴かれたときや陛下の手術のご様子が報じられた際に

『本当に品の良い方だな、できることならば今後も末永くあってほしい』

ぐらいのことしか考えていなかったので、『男系絶対』を唱える人間との

激しい論争が『朝まで生テレビ』(僕はほとんど見ませんが)で

行われていることを知りました。で、この問題で一番びっくりしたのは

皇族と一般人は『違う』というのは感覚的にわかっていたつもりでも

一般人が憲法で保証されている『表現の自由』といったものが

一切ないのだということでした。だから、やいやいと自分たちのことを

言う人に対しても一切反論ができないのだと、その話を聞いたときには

『やんごとなきかたがたも楽ではないんだなぁ』という感想を持ちました。

僕がもっと皇室問題や神道に造詣が深ければよかったのですが…。

特集第二弾は『AKB48で日本が変わっていく』で

僕は小林先生がここまでAKB48に嵌っていたことを始めて知りました。

実を言うと、僕も2006年当時、付き合いのあった人間から

何度か秋葉原のドン・キホーテにある『AKB劇場に一緒に行こうよ』と

誘われていたものの、なんとなく食指がわかなかったので

行かないでいたら、あれよあれよという間に彼女たちは

日本を代表するトップアイドルの地位に駆け上がっていき、

彼女たちがつぼみから花を咲きかける瞬間を見逃してしまったと

いうまことにもったいない記憶を思い出してしまいました。

秋元康先生との対談では小林先生は熱く、熱くAKBのメンバーや

パフォーマンスのことを語り、『ゴーマニズム宣言』では

AKB劇場に実際に足を運んで『チーム4』の公演の様子を

レポートしたときのことを漫画に描いております。

女性遍歴が多いので彼女たちを見る『視点』が鋭かったことが

印象に残っています。小林先生の「推しメン」が大島優子、柏木由紀、

市川美織(僕ははじめて知った)だというところもニヤリとさせられます。

もちろん、脇を固める論文執筆陣も本当に豪華なもので

「女系天皇公認の歴史的正当性」という田中卓先生の

お書きになられた論文には

『もっと僕に神道や皇室に関する知識があればなぁ』

と思わせ、AKB48を多角的に論じている執筆陣にも経済的なことから

センターをつとめる前田敦子ちゃんの『ファム・ファタール』ぶり。

『フェイクからダダ漏れへ』など、よくもここまでかけるもんだな、

ともう賞賛しかない文章が目白押しでありました。

小林先生の真骨頂である毒をたっぷり含んだギャグマンガ

『10万年の神様』や辛酸なめこさんの家政婦の実態を扱った『アセンション宣言』。

照沼ファリーサさんの官能あふれるヌードグラビアありとまさに

『魂を込めた』雑誌であることが全編に渡ってほとばしっており、

現在でも表現者として第一線をひた走り、新しい世界へ行こうとされる

小林先生のバイタリティーにただただ打ちのめされるものでありました。

小林先生、これで1,000円は、安すぎです。



わしズム/著者不明
¥1,050
Amazon.co.jp

人気ブログランキング ←1クリックお願いします。