先週、JICAの委託を受け日本から3名のBOP調査団がやって来ました。調査目的は廃車リサイクルビジネスの実現可能性について。

海とごみとチューク生活-junk cars in residential area

こちらは私が赴任当初にある家の敷地を撮った写真。至る所に廃車がある様子にとても驚きました。

海とごみとチューク生活-junk cars around repair shop

こちらは修理屋の付近に積まれている廃車。


このようにチュークで大きな問題となっている廃車の処理。私も興味を持っていたので、今回調査団の現地ガイド役として1日同行させていただきました。

訪問先は政府関係、車や部品のディーラー、修理屋、リサイクルショップ(中国のリサイクル会社)、港など多岐にわたりました。

そこでの聞き取り調査の概要を簡単にまとめると、

・チュークでの年間登録台数は推定2000台ほど。そのうち90~95%は日本車。その他はアメリカと韓国。使用されている車のほとんどは中古車。(日本では車検をとおれないようなおんぼろの車も多数見かけます)


○修理屋
海とごみとチューク生活-car repair shop

・廃車のうち、使える部品は修理屋へ、部品を抜き取られた後のボディはリサイクルショップへ
・修理屋の経営者の多くはフィリピン人でメカニックも多くがフィリピンから出稼ぎで来ている。
・とにかくパンクが多いため、タイヤ修理が大活躍。故障個所の多くはベアリングかブレーキパーツ。
・中古部品で賄えるものは廃車から抜き取ったものを使用する。新品部品はフィリピンから取り寄せがほとんど。
・廃タイヤはガーデニングに、バッテリー液は成分の鉛を抽出してサビキ釣りの重りとして利用するお客さんがいるため、譲っている。
・最近困っているのは近年複雑化している電子制御のパーツ。点検・修理を行うために分析する機械が必要となるが高額なうえ、車種ごとに対応するものが必要となるため、現状は所有しておらず修理が不可能。

何よりバッテリー液のリサイクル方法にはこんなやり方があるのかと驚きました。

○リサイクルショップ
海とごみとチューク生活-recycling shop
・2011年12月から事業開始。当初は住民からの持ち込みの受け入れで忙しかったが、ある程度落ち着いてから回収に伺うようになった。
・廃車の所有者から連絡を受け、自前のトラックで無料で回収に行っている。
・集めた金属は中国、台湾、韓国へ輸出している。
・リサイクルできないプラスチック部分などは隣接する海辺に埋め立てている。

また、車のエアコンに使用されているフロンガスは、あまりに古い廃車であるため存在していないため、特にケアしていないとのこと。回答してくださった中国人は英語がほとんど通じず、余り詳しくは聞けなかったのが残念。

調査としてはこのような具合でした。


チューク州の廃車リサイクルは、現在のところは中国のリサイクル会社が積極的に回収を毎日行っているため、当面は問題がないように思えます。ただ、廃車の大部分を占めるスチールはプレスをかけてから山積みされている状態で最近は輸出をしていない様子。金属の価格変動は激しく、価格が低い時には今後廃車の回収が滞ってしまう可能性があります。また、この中国の会社もまだ事業を始めて1年数カ月。今後どれだけ継続できるかという不安もあります。

こうした点からは、他州で検討されているように車の輸入時にリサイクル税をかけるというのも一つのアイデア。また現在各州バラバラで行われている金属の輸出を統一することで効率性が上がる可能性もあるそうです。


そして私として気になるのが、チュークの車のほとんどが日本からの中古車である点。日本には自動車リサイクル法により、車の購入時にリサイクル費用が前もって支払われ、そのお金が廃車時のリサイクル費用に使われます。しかし、中古車として海外に輸出される場合はこのお金は使用されません。そうしてチュークにやってきた中古車が数年後にごみとなってしまうのです。

この状況はチュークに限らず、他の途上国も同様のはず。日本としても何か考えるべきだと思うのですが。。。