広島忌 夏草のいきれが 空へと立ち昇る朝 その行く手に残る 八月の記憶を 今年も 油蝉の声が呼ぶ あの朝 いつも通りの朝が来て いつも通りに 見送り見送られ そして 八時一五分 見送った人の目に残った 見送られた人の背中と 見送られた人の背中に残った 見送った人の眼差しと 私たちの夏は 重く苦しい それでも そこに残されたものは 恨みや憎しみではなく 祈りだということの奇跡 PHOTO HIDE