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2016年05月01日(日)

思い草へ

テーマ:ブログ

野を渡る 青風のうたに 
小さき鈴花の白 朝露を抱いて揺らげば
その微かな音色に和して また季節が少しだけ巡る

ぎこちない指先 手探りの仕草で 
思いの暦をめくる 幼い萌芽を
いつしか青々と繁らせる 時のみわざを信じていて

野を満たし広がるのは
一粒の枯れ種の内にある 命を蘇らせる約束
一面に咲く 瑞々しく艶やかな再生の証しと
信じきった静けさ


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2016年04月26日(火)

夢十夜考 

テーマ:ブログ

夏目漱石著 『夢十夜』。
ここ暫くの間、入院していた母の枕元で、私はこの本を繰り返し読んでおりました。不可思議な夢の話を十夜分集めた短編集です。
特に第一夜の話が好きで前々回の記事にいたしましたが、もう少しだけ私の独断と偏見で掘り下げた第一話考を書いてみたくなりました。
お付き合いいただけますか?

さて…「こんな夢を見た」で始まる 夢十夜の第一話目。
死んだ美しい女を百年待った夢を見た男が淡々と語る 映像美を伴う物語ですが、私が其処に読むのは死んでいった女が抱いた切ない百年の夢の成就です。

死にゆく女は云います。
「死んだら埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って。そうして、
天から落ちてくる星のかけを、墓じるしに置いてください。
そうして、墓のそばに待っていてください。また会いに来ますから」

いつ来るかと問う男に答えて云います。
「日が出るでしょう。それから、日が沈むでしょう。
それから、また出るでしょう、そうして、また沈むでしょう。
 ―― 赤い日が東から西へ、東から西へと落ちていくうちに、――
あなた、待っていられますか」

『あなた、待っていられますか』
この一言に、私は彼女のこれまでの人生を深読みしてしまいます。
「待っていられるような男」=唯一無二の一人として女を愛し貫けるような男を求めた彼女の真直ぐな生き方。
その純粋すぎる求めに応えられるような男と此の世では出逢えなかった女の、それでも最後の最後に一人の男の真実に賭けた問い・・・。
『あなた、待っていられますか』

この問いの言葉の前に立つと、私の内には漱石著『こころ』の「先生」の声が聞こえてきます。
「私は死ぬ前にたったひとりで良いから、人を信用して死にたいと思っている。あなたは、そのたったひとりになれますか。なってくれますか。」
同じ響きを持った問いです。

(話が逸れましたので、夢十夜に戻します。笑)
それから黙って頷いた男を見つめて、女はこともあろうに百年待つことを求め、男の「待っている」という声を聞いた途端に意識が薄れ死んでしまいます。

死後百年愛されなければ癒されない傷を抱いたまま、女は死にます。
死際、女は男が百年待つと信じたわけではないでしょう。
ただ待つと言ってくれた優しさに、生涯の夢を一心に傾けたのでしょう。
それでも死にゆく女にとって、最期に聞いた男の一言は深い慰めだったに違いありません。

女の死後、男は女の願いのままに遺された身体を埋葬します。
その淡々として、なのに心込められた所作が美しく・・・
すべてを終えて墓の傍に座った男の、「これから百年の間、こうして待っているんだな」という気負いのない静かな呟きに私はトキメキます。(笑)

それから赤い日を幾つも見送り、男は百年を待ち遂せます。
百年待った男の存在が女の哀しみと孤独を完全に癒した証しに、
墓石の下から青い茎が伸び、男の胸の前で止まり、真っ白なユリの花が大きく花開きます。 男はその白い花弁に接吻します。

それは一人の女の百年の夢が、百年ののちに叶った瞬間です。
それは一人の男が百年をかけて、一人の女の夢を叶えた瞬間です。

スノウの独断と偏見に満ちた夢十夜考、いかがでしたでしょうか。
第一話は4ページ程のとても短い物語ですので、ご再読くださり共に味わっていただけるなら幸せです。

夏目漱石『夢十夜』は、下の文字をクリックするとお読みいただけます。
青空文庫 『夢十夜』


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2016年04月15日(金)

祈り

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長い夜の底に佇んだまま 
遠くにいる あなたを思っていました 
烈しい 地の揺れの直中で
無常と向き合っている あなたの
その渇きを思っていました

私の言葉は 虚しく闇に彷徨い 
言葉にならない祈りだけが
あなたの命を求めて 夜を越えてゆきます 
見上げれば  どこからか 星の数の祈りが
青く青く 夜空に瞬く・・・・・・

失われた命と 
生かされた命と
やり場のない慟哭と 
救われた小さな命への歓声と
不安に苛まれる霊肉と 
諦めを知らない数多の手 

すべてが混じり合い 強く命を求めて
星の数の祈りが 青く青く 夜空を染めて瞬く・・・・・


PHOTO  山本てつや

2016年04月11日(月)

眠れぬ夜の夢  『夢十夜』百年ののち

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深まリ切った青が生む群青が
やがて 透るような闇へと色を移して
夜の極まりの静けさが 時を止めてしまう刻
眠れぬ心たちは ゆっくりと漂いながら
あの一番瞬く青星を目指して 夜空を昇ってゆく


眠れぬ心たちが 両手の平に携えているのは 
置き場所のない 想いのカケラ
砕かれた其の想いを 青星の青に播いて 
百年ののちに 白い花となるために
百年待ってくれる人の 百年に一度の接吻を受けるために


PHOTO 山本てつや


  いつのまにか東京は、風に桜花舞う季節が巡り来ました。
あなたの目に映る桜は今、どのような姿でしょう・・・

この詩は夏目漱石の『夢十夜』第一夜へのオマージュです。
不可思議な大人のファンタジ-という色合いの短編で、
私はこの美しい第一夜の物語が大好きです。

今年は漱石没後100年。 漱石の言葉を借りれば、私にとって「百年ののちに咲いた白百合」のようなこの物語に「そっと接吻する」ような気持ちで
この詩を書きました。

この8日の母の手術が奇跡的な成功を収め、私は今一旦東京に戻り
心静かな時を得ております。
皆さまからいただきました励ましに深く感謝を申し上げます。

病院の母の枕元で、私は繰り返しこの物語を読んでおりました。
4F病棟の談話コーナーに図書箱があり、私はそこに漱石生誕100年(つまり、今から50年前)を記念して出版された全集を発見し、母が寝息を立て始めるとページを開いて過ごしました。

目覚めた母がいつも、「何を読んでいるの?」と小さく問います。
「夢十夜の第一夜よ。」と言うと、「死んだ女を100年待つ男の話でしょ。本当にね・・・あれは綺麗。」と、母が応えます。
美しいものは、人を鎮め癒します。

スノウ

2016年04月05日(火)

くちづけ

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小雨混じりの春の嵐が
数万の花弁を地に落とし
ほんの僅かな 時の仕草が
蘭漫の花を 見る間に葉桜に変えても

春の印の 碧い鳥が
しなやかな首を 思い切り伸ばして
それでも稀に 時を越えてゆく想いもあるさ と
花芯に深く くちづける 

一八の春
心密かに決別したはずの古里が
心に迫り来るのは 何故か決まって桜の頃
突然降り立った鳥のくちづけの碧さに震えて 恋うる今



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2016年03月30日(水)

イースターの朝に

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花霞む 淡いグレイの点描の空の 
雲の切れ間から 黄金の粒 降りる朝 

光の柱が辿りつく窓辺で 
衰弱した母がたてる寝息に いとしく いとしく 耳を澄ます 

眠れぬ長夜の闇の果てに
新しい朝があると信じられることの救い―

母よ  新しい朝が来ました 
イースターの朝です
与えられた命を 今日は一日喜びましょう


PHOTO HIDE


  12日ぶりの更新です・・・
母の具合が思わしくなく、
私は24日から帰省し母の傍で過ごしております。
PCに向かうこともできずにいる間に、桜の開く時が巡りきて。
気づけば、春たけなわですね・・・。
あなたはいかがお過ごしでしょうか。

毎年、イースターの朝には新生の詩をUPして参りましたが、
今年はそのような余裕が無く・・・。
身体の苦痛は、自分の命を喜ぶことを難しくします。
そんな母と向かえたイースターの朝。
長い夜の先に光は必ず生まれると信じます。
                                      スノウ

2016年03月18日(金)

時の咲く日

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春をうたう 淡き夢咲き 
薄紅に染まる胸に抱く 時の花 

遥かから注ぐ言葉に焚き込められた
柔らかに満ち足りた静けさ薫り 
この胸を優しく満たせば 

ここに命あることの喜び
ただ  ここに命の続いてあることの喜び



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2016年03月11日(金)

レントの詩 3.11

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春まだ浅い あなたの海に
それでも 凍った光の結晶は躍り 
水底から運ばれてきた貝殻たちが
小さく はしゃぎ声をたてている 

三月の海は 哀しいけれど
あの人は今日も 店先に魚と烏賊ゲソを干し
売れた干物よりも多い数のゲソをおまけに付けて
照れくさそうに笑うだろう

受難節の三月十一日
城壁のような堤防に狭められてゆく海岸線の手前で
本当に欲しいのは 思い出よりも今なんだと
ルフランする あなたの声



  PHOTO  山本てつや
2016年03月08日(火)

青へ ⅱ   

テーマ:ブログ

そこにある 生が描く 軌跡
空の青を切り裂いて飛ぶ鳥の鋭さで 
あなたは 生きる
描かれる直線は きっと 
より深い青へと繋がる 天への澪を遺して
後に続く小舟を導く


あなたが 命を削って遺す澪に沿って 
仄かに瞬く 喜びの欠片を散りばめたい
それが 私のささやかな願いです
月白の宵には 空に水鏡の小舟を浮かべ
あなたの喜びを探しに 櫂を漕ぐ
それが私の日々の祈りです


PHOTO  HIDE


 春雨が路面を濡らす今日・・・
あなたはいかがお過ごしでしょうか。
いつのまにか白木蓮の蕾がふっくらと膨らみ、
もうすぐ天へと祈りの姿を現すようです。

恐怖と喪失の記憶が今年もこの国の三月を包み、
薄らぐことのない哀しみは、今も海に地に広がっています。
それでもそこに沈み込むことなく、東北の地で、さらに6年目からを
生き抜く人々からの便りは毎月届きます。
いわきの浜風仮設商店街・・・女性たちの笑顔と底力が煌めく場所です。                                        スノウ


 追記いたします!
「浜風仮設商店街」について、たくさんお問い合わせをいただきました。
お答えいたします。

福島県いわき市の久之浜商店街の皆さんは、壊滅的な被害のまっただ中、震災後2011年9月3日に日本初の仮設商店街を立ち上げました。
それが浜風商店街です。

私は2012年10月に初めて伺い、教会の支援チ―ムを立ち上げてから毎月数名のチームで訪問して参りました。
佐藤電気さんを筆頭に笑顔の奥さんたちが、お客さんにコーヒーやお茶やお菓子などを無料でふるまっておられます。

少しでもお役に立てればと、我がチームからも毎月お茶菓子とお手紙を送っており、丁寧なお礼状や電話が届きます。
また、名物ごぼうチップスやお米や電池などの商品を送っていただき、教会で販売したりと交流が続いております。

ここにリンクを張っておきますので、ご覧くださいませ。
からすや食堂の餃子、石井魚店の塩からと干物、てんぐ酒店の地酒など最高ですので、ぜひ遊びに行ってください。
こちらからどうぞ→
浜風商店街

2016年03月02日(水)

青へ ⅰ

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群青く 鳥影射す地平に 
薄暮の静けさが 戻ってくる頃
眠れる想いは 目覚めはじめる 

指に挟んだペンを置き
指先に宿るものを見つめれば 
暮れなずむ生の あえかな溜め息洩れて

沈黙への応答である 沈黙が響く世界を抜けだし
やがて来る夜に紛れて この窓に忍んできて
告白を 月への賛辞に託して 


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