浅い夢の間に | 思い草へ              

思い草へ              

               ・ 




    

ベッドの中で眠りに落ちるのを待ちながら、

覚醒した意識を保ったまま 、夢を見ることがある。

一昨日も現実の窓外に風が吹きはじめ、それから雨の気配がして、

寝静まった街に雨音が響くのをはっきり意識しながら…空にいる夢を見ていた。

 

眠る前から夢は始まり、夢を見ながら、いつしか眠りへと導かれてゆく。

そんな時に見る夢は、いつも何気なくて何事も起こらない夢だ。 
登場する人物が、決まって架空の知人である事も特徴かもしれない。

何故か、実在する人は出てこない。

 

夢に登場中の架空人物の顔や声や身体つきや服装など観察しつつ、

この人物設定を私はどこから引きだしてきたのかしら」などと、

目覚めているほうの意識で同時に検証したりして楽しんでいる。

道ですれ違った人や、どこかの店でお隣りの席にいた人などのイメージが

無意識に残って、登場人物のキャラクタ―に影響しているのではないかと憶測する。

 

ところで。

私は、初めて出逢った人に「この人を知っている」と感じることがある。

以前どこかで見かけたのか、知っている誰かに似ているのか・・・考えても心あたりがない。

そんな時、ふと胸をよぎるのが例のような夢に登場する「架空の知人」の件だ。


「もしかしたら、私はこの人と以前に夢で出逢っているのはないか・・・」

私らしからぬ この発想は、いつも瞬時に私自身によって打ち消されるのだが。 

 

打ち消した後に必ず脳裏に浮かぶ、ひとつの情景がある。 

或る人との出逢いの瞬間の懐かしい記憶だ。
その人に初めて対した途端、何の脈絡もなく私の内に唐突に浮かんだ言葉がある。

― とうとう、本当に出逢ってしまった  ―

 

この言葉がどこから来たのかを私は知らない。

そして、この言葉の意味を今でも探している私がいる。 

この現実が、寝入りばなの夢と関係があるのかどうかは・・・永遠の謎に違いない。

 

 

 

PHOTO HIDE