こんにちはM&A会計士の澤村です。


どうもHOYAの合併仕訳が気になってしかたないので、実際に仕訳を切って考えてみました。

前提条件としては、

PENTAXのBSが資産1,200、負債700、資本金等100、利益積立金400として、
「のれん」のみに着目したいのでのれん以外の資産と負債の簿価と時価は等しいとします。
この会社をHOYAが1000で買収したとします。(数時はデタラメです)
実効税率は40%(事業税の影響の話は省略)


これが単純にHOYAが100%現金でPENTAX株式を購入して連結子会社としたケースだとすると
連結の仕訳はシンプルにこうなりますよね

資産 1,200  負債 700
のれん 500 現金 1,000


じゃあ、これが100%現金合併だったらどうなるかってのが、今回のテーマです。


いきなり合併時で考える前に、非適格合併なんで、PENTAXでの課税関係を考慮するため
まずPENTAX、すなわち消滅会社での税務上の合併移転仕訳を考えてみましょう。


時価譲渡をしたと認識するわけですから、こうなるはずです。

現金 1,000    資産 1,200
負債  700 譲渡益 500


で譲渡益には課税が発生しますから


法人税等 200 未払法人税等 200(500×40%)


で、この未払法人税はHOYAに引継がれるのですが、

その相手方勘定についてものの本とかみると、存続会社株式から減額とあるのですが、
100%現金合併ですんで、利益積立金になるんですかね?


未払法人税等 200 利益積立金 200


で、解散時の税務上の仕訳が


資本金等  100    現金 1,000
利益積立金 900


といった感じでしょうか?

いちおう利益積立金は、当初の400+譲渡益500-法人税等200+引継200=900と一致します。


じゃあ、HOYAすなわち存続会社での税務上の受入仕訳はどうなるかというと


資産    1,200    負債  700
資産調整勘定 500    現金 1,000

となるのかと思いきや、未払法人税等200も引き継ぐんですよね
じゃあ、相手方はとなると資産調整勘定しかないわけで

資産調整勘定 200    未払法人税等 200

って、仕訳になって資産調整勘定が700になっちゃうんですよね。

これを踏まえて会計上の仕訳を考えると


資産  1,200 負債  700
のれん    500 現金 1,000

ではなくて、未払法人税等 200も引き継ぐことになるから


資産 1,200 負債    700
未払法人税等 200
のれん 700     現金 1,000


か?


と思いきや、今度は、のれんの税効果を考慮する必要があります。

のれんは税効果みないのでは?と思った読者さん、偉いです。
正解です。会計上の「のれん」は税効果みません。
これを考慮すると循環計算になってきりがないんで…


でも、税務上の「のれん」すなわち「資産調整勘定」は、税効果を考慮する必要があります。
実は、税務上の「のれん」と会計上の「のれん」は、概念が違うため、
税務上の「資産調整勘定」に対応する会計上の資産はゼロという関係にあり、
かつ、「資産調整勘定」は、償却による損金算入が可能なため、節税効果分を繰延税金資産として
みることができます。


税務上の資産調整勘定が700でしたので、繰延税金資産としては

700×40%=280となります。


ということで、会計上の仕訳としては


資産   1,200     負債     700
繰延税金資産 280      未払法人税等 200
のれん    420     現金 1,000


となっちゃいました。


ってことは、単純に連結のままと比べて、のれんが80ほど減少する結果となりました。


というわけで、先日のエントリーの一部は、修正が必要となるようです。

金額的インパクトを考えると、HOYAのケースの大半は他の資産に配分した結果
という先日のエントリーの内容で大筋はあっているとは思います


しかし、なんか、スッキリしないなあ…
間違ってたら、誰かご指摘お願いします <(_ _)>