こんにちは、M&A会計士の澤村です。


今朝の日経で、HOYAのPENTAX合併時の会計処理に関する非常にわかりにくい記事が載っていましたね。


株式交換じゃなくて、合併を選んだから「のれん」を圧縮できたかのような内容の記事でしたが、やっぱりこれはおかしいと思います。


一瞬、現金合併で非適格合併となったから、税務上資産等調整勘定がたって、その税効果が見れるから、繰り延べ税金資産が増加したことによって、のれんが圧縮されたのかとも思ったのですが、資産調整勘定が計上される段階でPENTAX側で課税が生じて、対応する時価純資産も減少するのだから「のれん」にはニュートラルなはずです。


確かにHOYAの決算をみると、中間決算時に計上していた「のれん」よりも本決算での計上額が大幅に減少していたけれど、これはあくまで中間決算時は個別の資産への取得原価の配分がまだだっただけであり、いろいろと他の勘定に配分した結果、「のれん」が圧縮されただけの話だと思います。



ただ、今回の現金合併は、実はHOYA側にものすごいTAXメリットがある結果になっています。


のれんの償却に関しては、課税関係全体でみればニュートラルですが、合併以降のPLインパクトは大きいですね。株式交換で100%子会社のままだったら、「のれん」は連結上の話だけですから、償却の損金算入はとれませんからね・・・。


で、これよりもすごいのが、組織再編税制の盲点というか欠点である。みなし配当課税と、株式譲渡損のダブル計上の問題です。


通常、合併において、存続会社が以前から所有する消滅会社の株式(いわゆる抱き合わせ株式)に対して、合併の対価は交付しませんが、税務上は交付があったとみなしたうえで、償却を行ったという扱いがとられます。


現金合併は非適格合併ですから、交付された対価のうち、資本等を超える部分はみなし配当となります。


ところが、半年以上25%以上保有する会社からの配当は全額益金不算入となりますから、今回のような合併の場合は、みなし配当に対応する課税は生じません。


一方、以前から所有していた株式の簿価に対して受け入れる資本等が少ない場合、差額が株式譲渡損となります。


つまり、非適格合併だと、みなし配当と株式譲渡損が発生するのですが、配当の益金不算入が使えると株式譲渡損の部分だけ税務メリットが得られるというわけです。


今回のHOYAの事例では、HOYAで繰越欠損金が生じるほどの税務上の損1400億円も出たとのこと(ソースデータは、決算説明会 http://www.hoya.co.jp/data/current/briefingsubobj-284-pdffile.pdf )。


ただ、TOBでの取得額が950億円程度だったのに、それを上回るほどの1400億円もの損が出ている理由はよくわかりません。直前に行ったPENTAXの子会社合併が影響しているのでしょうか?


合併というと、つい適格じゃなきゃいけないと思ってしましますが、実は非適格のほうがタックスメリットとれること多いんですよね。