151鞍目の駈歩ナイターレッスン
暗闇に浮き上がるように照らされた馬場に立つと
昼間のレッスンとは違う
特別な舞台に立ったような気分になる
頬を刺激する冷たい空気で
馬の動きがピリッと締まるのに合わせて
私の気持ちも引き締まり、
安全に終えられますようにと願いつつ
そのスリル感にワクワクしながらレッスン開始を待つ
本日のお相手は鹿毛のセン馬、ドン
駈歩レッスンで乗るのは今日で4回目
いつも頭を下げながら忙しなく肢を運ぶため、
一見サクサク歩いているかのような気分になり、
いざ駈歩を出そうとすると手綱が張れず‥‥
‘ 駈けたいの?、駈けたくないの?どっちなのよ~! ’
、とドンは鼻息を荒くし、
私は肩を落として、これまでのレッスンを終えていた
今日はナイターという環境の助けもあり
常歩から脚の反応も良く、順調な出だしに思えたのだが‥‥
やはり最初の駈歩は
ドンの‘ 駈歩しようかな~!? ’の1歩目で
手綱がだらん、ドンの頚もだらんとなってしまい駈けられず‥
何度も発進を試みていると、
速歩半分、駈歩半分の半端駈歩が出始めた
指導員から、
‘ ムチ、ムチ、ムチ、ムチ ’、と
馬の一歩一歩に対してムチを使うよう指示が飛んでくる。
指導員のかけ声に合わせてムチを入れると
ドンの頭がぐぐんっと上がり、
半端駈歩がダイナミック駈歩に切り替わった
‘ ドンの本領発揮っ! ’私は急いで手綱をつめる
初めて体感するドンの‘ 今、全力駈歩 ’
生真面目なサラリーマンと呼ばれるドンは
手抜き無しの、全身を使ったダイナミックな駈歩が持ち味
大きな揺れを全身で感じながら、
なんとも言えない高揚感で私の胸はいっぱいになった
心も身体もすっかり温まったところでレッスン終了時刻を迎える
たくさんのありがとうを込めて最後の手入れ
興奮覚めやらぬ私をよそに、
‘ 今日もよく働いたなぁ~ ’
、と目をシパシパさせて今にも寝てしまいそうな
生真面目サラリーマンに
お疲れ様りんごをプレゼントした
馬が駈けやすいバランスをつくるためには
‘ 駈歩した~い ’という馬の気勢を生み出しながら
手綱を張っていく必要があって‥‥
その気勢を必要最低限のムチ使いで
つくり出せたらなと思うのだが‥
目標高く、理想のイメージを思い描きながらも、
ドンの‘ 今、全力駈歩 ’を見習って
目の前の仕事や課題に
‘ 今、全力 ’の姿勢で向き合い、
1日の終わりに
‘ 今日もよく働いたなぁ~ ’、と
横になったら、ストンと眠りに落ちてしまうような
毎日を過ごせればなと思う
次、ドンに乗る時は少しでも成長した私であれるよう
‘ 今、全力 ’を心に刻む