「彼女の味」
作:macoto
「おっはよっ♪」
朝から調子外れな浮かれた声で
妙(たえ)はベッドにもぐりこんでくる
「ぅ~ん…あと5分~」
低血圧な僕はなかなか布団から
出られないのが悪いクセ
「ほらっまーくんってば朝ご飯できてるよぉ~」
「…お・きっろ~~~~!」
掛け布団ごと妙は立ち上がり
僕から布団をひっぺがす
暖かなぬくもりを急に奪われた僕は
枕を抱えて猫のように丸くなった
「う~さみぃ~なぁ…
もう少し優しく起こしてくれよなー」
「だってまーくんこうしないと起きないじゃない?」
妙は暖かな僕のぬくもりの残る
布団に包まれたまま舌を出すと
「ほら、もう朝ご飯食べようよ」
と僕から枕も取り上げて僕を引っ張る
僕は真(まこと)、この春に入学したばかりの
花の高校生 えへ(笑)
幼馴染の妙の家とは隣通しで
小さい頃から家族ぐるみの腐れ縁だ
うちは4年前に交通事故で母さんが亡くなって
それから妙がいつも朝食を作ってくれている
妙のうちは小さい時に父親を肺がんでなくしてから
隣通し片親なので支え合ってきたんだ
そんな訳で妙の母親も女手ひとつで
子どもを育てるために必死で働いているから
家事全般は妙がやっているというわけ
ついでだからとうちのキッチンの方が広いという
理由で朝ごはんはうちで食べるようになった
「ほら、まーくん、ボーッとしてないで
早く顔洗ってきなよ~みそ汁冷めちゃうでしょ」
妙はみそ汁だけはインスタントは嫌だと言って
ちゃんとにぼしと昆布でダシから作るので
実は朝のこの一杯で僕の目が覚めるんだ
「妙、なんか母ちゃんみたいだな」
「花の女子高生つかまえて、なんてことを!」
妙はお玉を振り上げてふくれてみせた
僕は濡れた顔をタオルで拭きながら
小さく聞こえない程度の声で
「ありがとな…」
そう言ってテーブルに着く
「え?なぁに?」
振り向く妙に一瞥して
「いっただっきま~す」
と真っ先に春キャベツの甘い香りのする
みそ汁をすすった
母が亡くなってから妙は朝食を
作りに来てくれていることに
僕は本当に感謝している
僕にとってのおふくろの味は
いつの間にか妙のみそ汁になってた
続く ...
Copyright macoto All Rights Reserved.
-------ここからブログネタ--------
ブログネタ:スープとみそ汁、どっちが好き?
参加中