御ひいき六花撰 素ッ飛び男   | 映画、その支配の虚しい栄光

映画、その支配の虚しい栄光

または、われわれはなぜ映画館にいるのか。

または、雨降りだからミステリーでも読もうかな、と。

または、人にはそれぞれ言い分があるのです…。

東宝版「次郎長」シリーズの最後の方に、ほとんど次郎長キャストで撮られたマキノ雅弘作品。
この年(1954年)マキノ作品は9月までになんと7本公開されてます。その中で私が観たのは次郎長の最後の三本と「やくざ囃子」。ま、傑作ぞろいな中で、そりゃ手も抜くわな、な一作。

前半の人物説明がやけにもたもたしてて、説明説明してるのがつまらないし、ギャグも冴えない、クライマックスのお白州シーンでは乱暴なズームショットが珍しくも面白いんだけど、どんなもんかと。でも、マキノにノるノラないは観てるこっちのコンディションにもよるから、録画DVDで観て、あまり偉そーなことはいえない。

ちょっと驚いたのは、本筋である事件が結構、陰惨であること。とりわけ森啓子(誰それ?「浮雲」で仏印の女中を妙に色っぽく演じてた娘らしい)の死体が妙にリアル。後年の東映作品で血が出るのはふつーだとして、この時代のマキノ映画で血が出てくるのって珍しい気がするがどうか。

ちなみに、この作品の翌週(!)「七人の侍」が公開されたらしい。なんか、凄いな。

御ひいき六花撰 素ッ飛び男  1954年(S29)//東宝/白黒/105分
■監督:マキノ雅弘/脚本:小国英雄/撮影:飯村正/美術:北猛夫/音楽:鈴木静一
■出演:河津清三郎、小泉博、田崎潤、水島道太郎、田中春男、久慈あさみ、小堀明男、若山セツ子