小出裕章先生:ベントというのは、放射能ごと外に捨てるということ、住民にとっては危険を加えるもの | 私にとって人間的なもので無縁なものはない

小出裕章先生:ベントというのは、放射能ごと外に捨てるということ、住民にとっては危険を加えるもの



女性の社会的苦痛の諸相
~婚活殺人事件・従軍慰安婦問題を通じて

(ラジオフォーラム#132)

https://youtu.be/K6CeqMa_RsM?t=15m5s
15分5秒~第132回小出裕章ジャーナル
2号機ベント失敗の検証報告について「2号機の場合には1号機、3号機に比べてもはるかに大量の放射性物質を環境に撒き散らしてしまうということになりました」

http://www.rafjp.org/koidejournal/no132/
福島第一原発 1~3 号機のイベントツリー分析結果
今西憲之:
2011年3月の東京電力福島第一原発の事故で2号機ですね、外形的には大きな爆発はなかったんですが、非常に危機的な状況になりました。格納容器の圧力を下げるベント、いわゆる中の空気を外に逃がす排気がうまくくいってなかった可能性があるということで、5月20日東京電力は、配管の放射線量等からベント、うまくいってなかったんじゃないかということについてようやく認めました。小出さん、このへんお伺いしたいのですが、まず、格納容器内の圧力を下げるベントという作業については、どういうものなんでしょうか?
格納容器大破の恐れ福島2号機ベント失敗裏付け

小出さん:
原子炉の中心部分・炉心というのは、原子炉圧力容器と私達が呼ぶ鋼鉄製の圧力窯の中に納められています。そして基本的には、原子炉が動いて生み出される放射性物質は、原子炉圧力容器を含めた一時系と呼ばれてる所に閉じ込めると原子力を推進してきた人達は言っていたのです。
原子炉格納容器および隔離弁
でも、何かあった時には放射能が漏れてきても、それを原子炉格納容器という放射能を閉じ込めるための特殊な容器で閉じ込めるから、放射性物質は絶対に外に出てこないというのが、彼らの主張でした。しかし原子力発電所を動かしてくる経験の中で、アメリカのスリーマイル島の原子力発電所の事故が1979年に起きてしまいました。そして、場合によっては格納容器も壊れてしまう可能性があるということに気付いたというか、やはり否定できなくなってしまったのです
Three Mile Island Accident
そして、本来は放射能を閉じ込めるための格納容器ですから、格納容器の中からガスを外に漏らすなんてこと、そのこと自身ををもともと想定していなかったわけですけれども、格納容器が大破壊をしてしまったらやはり困るので、事故がどんどん進んでいって、
水蒸気爆発1
水蒸気爆発2

大きく壊れてしまいそうになった時には、ベントという、バルブを開いて中の放射性物質を含んだガスを意図的に外に出そうというようなことを彼らはやり始めたのです。
一号機のベント
ですから、何かベントが成功すればいいというふうに皆さん思われているかもしれませんが、ベントというのは、もともと放射能を閉じ込めるために設計された格納容器の中のガスをわざわざ放射能ごと外に捨てるということですので、そのこと自身が大変、住民にとっては危険を加えるものなわけですし、原子力発電所というのがそういう機械なんだということを象徴する装置でもあります
WSPEEDI-II による放出率推定結果20110315
2011年03月15日のWSPEEDI-II による放出率推定結果

Environmental Pollution Volume 163_2012
大気拡散状況と放出率推定

今西:
非常に緊急避難的な措置であったということなんですけれども、ベントはですね。福島第一原発の事故で、この2号機ですね、どのような状態になっているのでしょうか?

小出さん:
1号機も2号機も3号機も結局、最後には原子炉が溶けてしまったのですけれども、2号機の場合には、3月14日の夕方から原子力格納容器の中の圧力がどんどんどんどん上がってきてしまいました。格納容器というのもある一定の圧力までしか耐えることができないという、そういう構造物なわけで、耐えることができる圧力を超えて、中の圧力が上がってしまうと、格納容器が自動的に壊れてしまうわけです。
2 号機の原子炉水位挙動から抽出された課題
そんなんなったら困るということで、先程聞いて頂きましたように、もう意図的に放射能を含んだ格納容器内のガスを外に捨てようという、ベントということをやざるを得ないという、そういう決断を東京電力は下したのです。そして、そういうベントという作業をやろうとしてさまざまな試みを行ったのですけれども、どうも、そのベントの作業が上手くいかずに、大量の放射性物質が外に出てきてしまったのではないかと、ずっと考えられてきました

今回、5月20日にその検証の結果というのが東京電力の方から報告されまして、やはり2号機の場合にはベントができなかったという、そういう報告になりました。

小出裕章ジャーナル

今西:
事故から4年経って、ようやくベントは失敗していたのではないかということになったんですけれどもですね、東京電力、どんな検証をしていたのでしょうか?

小出さん:
はい。ベントという作業は、特殊な配管を使うわけですが、その配管にバルブが付いています。そしてそのバルブを開いて、格納容器の中にある放射能で汚れたガスを外に出すわけですけれども、バルブを間違えて開いてしまった場合に、外に出てしまうというそういう可能性もあるわけで。それを防止しようということで、バルブを開いた先にラプチャーディスクという、破裂板というような薄い金属の板が挟んであったのです。そして誤操作して、特別放出しなくてもいいような時には、そのラプチャーディスクが破れることもなく、放射能を格納容器の中に閉じ込め続けるという、そういう考え方でした。
線量調査結果~ラプチャディスク周辺~
ラプチャーディスク
でも、今回の場合には、意図的にとにかくバルブを開いて、高圧になっている格納容器内のガスを外に捨てようとしたわけですから、自動的にラプチャーディスクと呼んでいる金属の板も破れなければいけなかったのです。でも、どうもそうではなかったようだということで東京電力が調べまして、ラプチャーディスクが設置してあった周辺の配管の放射線量を計りまして、その周辺が線量が低い、つまり放射性物質がそこまで到達していないというそういう結論になって、結局、ベントはできなかったんだという、そういう報告になったのです
白煙を上げる福島第1原発2号機

今西:
それでですね、ベントが失敗したということなんですけれどもですね、2号機においては、原子炉の格納容器が大破してしまうという最悪の事態も想定されていたような所が当時あったのですが、どのような被害が出ていたのでしょうか?

小出さん:
格納容器が耐えられる圧力の限度もあるわけですから、どうしようもなく格納容器が壊れてしまう。そうなれば、もうあとは打つ手がなく、内部の放射性物質が外に出てきてしまうという、そういうことになったわけです。実際に、かなりそれに近いかたちになって、2号機の場合には1号機、3号機に比べてもはるかに大量の放射性物質を環境に撒き散らしてしまうということになりました
大気中だけで広島原爆168発分
でも、格納容器の破壊された場所というものが、まだきちんと解明されていないのですが、破壊された場所によっては、もっともっと大量の放射性物質が環境に放出されるという、そういうこともあり得たと思います。
2号機CAMSの測定データに基づく事故進展の推定

今西:
今回、ベントの失敗というのがようやく分かったわけなんですが、福島第一原発の事故でまだまだ解明されてない謎が大量にあるように思うのですけれども。

小出さん:
はい。もう山ほどあります。東京電力が未確認・未解明事故というものを列挙して、その今、調査・検討ということをやっているわけですけれども、東京電力が上げた未確認・未解明事故だけでも52件もあります。今回報告されたのはそのうちたったの4件でして、これからもまだまだ解明しなければいけないことが残っていますし、最終的な解明というのは、何十年も先にならなければできないだろうと思います
未確認・未解明事項の調査・検討の経緯について

今西:
なるほど。この未解明の部分だけで52件ということで、これだけ見てもほんとに深刻な事故だなあということがうかがえます。小出さん、ありがとうございました。

小出さん:
はい。ありがとうございました。




小出裕章講演会 石川県加賀市大聖寺
 2015年6月20日 福島に学ぶ


https://youtu.be/4Y6MfKc4nZA
小出裕章講演会 石川県加賀市大聖寺



Understanding the accident of Fukushima Daiichi NPS - Source IRSN

https://youtu.be/JMaEjEWL6PU


Nuclear Waste: Drone buzzes Fukushima temporary storage facility

https://youtu.be/UCP7PFT9coU



原発運転40年原則危うし 福島以前の60年に逆戻り?
(東京新聞【こちら特報部】)2015年7月10日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2015071002000129.html
 原発の運転を原則四十年とするルールを見直すよう自民党の有志が提言案をまとめた。運転期間の科学的な根拠が不明確だからという。だが、科学に言及するなら、まずは原発の安全性を議論すべきだろう。これまで、原発の運転は政治に重きを置いて決められてきた。過去を振り返りつつ、原発運転四十年ルールについて考えた。
(篠ケ瀬祐司、榊原崇仁)

原発運転40年原則危うし 福島以前の60年に逆戻_1

自民に見直し論
党内の二部には反対
経産省電源構成案も布石


 「四十年という期間に関する科学的な根拠を明確にするため、この期間の妥当性について科学的知見をペースに専門家が再度検討を行うよう、(原子力)規制委員会が検討の場を設けること」 `
 自民党の「電力安定供給推進議員連盟」(会長・細由博之幹事長代行)が七日にまとめた「緊急提言案」に、こんなくだりがある。意訳すると、「四十年ルールが科学的に正しいという根拠がはっきりしないので、あらためて専門家が見直す有識者会議を開きましよう」といったところか。
 東京電力福島第一原発事故を受け、二〇一二年六月に改正原子炉等規制法が成立し、原発の運転斯間は「四十年」と明記された。一回に限り、二十年以内の延長ができる。ただし、規制委の認可が必要だ
 議連が求めるのは運転期間の延長であって、決して短縮ではないだろう。再検討が始まれぱ、四十年の原則撤廃の方向で議論が進められる可能性がある。
 議連の提言案には「緊急」が付いているが、実は、議連が今回の提言案を出す時期は事実上決まっており、唐突なものではない
 規制委設置法の付則には、施行から三年以内に組織のあり方を検討すると記されている。今年九月がその三年。このタイミングで、運転期間を見直す議論もしようというわけだ。
 布石は既に打たれている。経済産業省が四月に示した三〇年の電源構成案は、総発電量に占める原発の割合を「20~22%」とした。全原発を四十年で廃炉にすると20%を下回るのは確実で、運転延長を前提にしている。
 宮沢洋一経産相は六月十日の衆院経産委で、「原発20%」を達成するには三十基台半ばの原発が稼働していることが必要だ」と述べた。国内の原発のうち、三〇年一月一日時点で運転四十年未満の原発は建設中を含めても二十三基。宮沢経産相の発言を実現するには、十基程度の運転延長が必要になる
 〈議連は、自民党の「原子力規制に関するプロジェクトチーム(PT)」(吉野正芳座長)に働きかけている。PTは現在ヽ規制委の組織見直しなどについて、政府に行う提言を策定中だ。
 PTでも「四十年ルール」見直しが議論されている。出席者によると、会合では、原発の専門家らから「原子炉の型式により、劣化の仕組みが違う」「四十年ルールには科学的根拠がない」などの説明かあったという。
 一方で、自民党内には四十年ルール見直しへの反対論もある。
 昨年、脱原発に向けた提言をまとめた党の「エネルギー政策議員連盟」事務局長の秋本真利衆院議員は「科学的根拠というが、延長して六十年間大丈夫という科学的根拠を示せるのか。日本の原発技術は世界一だという。ならば、むしろ今よりも安全基準を高め、原発推進派も反対派も納得する世界一の基準をつくるべきではないか」

原発運転40年原則危うし 福島以前の60年に逆戻_2

96年のエネ庁報告書で想定
圧力容器劣化の危険指摘されるが…
「むしろ廃炉前倒しすべき」


 原発運転四十年ルールが決まったのは、民主党政権時代だった。一一年九月、首相に就任したばかりの野田佳彦氏は記者会見で「寿命が来た原発は廃炉」と発言。一二年一月には「運転期間は原則四十年」「例外的に二十年延長」と決め、原子炉等規制法の改正に取り組み始めた。
 翌二月の参院予算委員会で、原発事故担当相だった細野豪志氏が「四十年」という数字の根拠について、こんな答弁をした。
 「ほとんどの原子炉は『中性子照射の脆化』について想定年数を四十年として申請している。従ってそこで一つの区切りを付ける」
 「中性子照射の脆化」とは何か。
 東京大の井野博満名誉教授(金属材料学)は「原子炉の圧力容器は、核分裂の際に出る中性子が当たり続ける。そのため、年とともに進む圧力容器の劣化のことを言う」と説明する。
 「多くの原発では設置許可申請時、四十年後の劣化具合を想定し、問題がないか試算している。細野氏はこの点から『四十年で一区切り』と発言したようだ」と解説した。「四十年後という想定は、『そのころが原発の寿命』と考えられてきたことを示す証拠といえる。そこに目を付け、運転をストップさせるルールをつくろうとした意図は分かる」
 井野氏は、運転から四十年という期間にかかわらず、一九七〇年代に建設された原発は科学的にみて、稼働を容認できない状況にあると話す。「当時の圧力容器は不純物のが多く入るなど材質が悪く、劣化しやすい。機器制御の信号や計測データも送る電気ケーブルの問題も深刻だ」
 原発内のケーブルは一基あたりで全長数百キロとも言われる。火災で燃えると深刻な事態になるため、福島の原発事故後に策定された新規制基準は、難燃ケーブルの使用を求める。古い原発の多くは建設時の防火基準が緩かったため、難燃ケーブルを使っていない。規制委もケーブルの問題を重要視している。
 科学的に絶対ではないが、「四十年」は一つの目安となりそうだ。それでも、自民党の議連が撤廃を求めて動いていることに、NPO法人「原子力資料情報室」共同代表の伴英幸氏は「かつて国が六十年運転にお墨付きを与えたことが影響しているように思えてならない」と指摘した。
 お墨付きとは、資源エネルギー庁が九六年にまとめた報告書のことだ。
 このころ、法的には原発の運転期間が定まっていなかった。エネ庁は、国内初の商業用軽水炉の日本原子力発電敦賀原発1号機など、三基の原発が稼働三十年を迎える前に安全性を評価した。六十年間運転する状況を想定し「定期検査、点検の充実により、安全に運転することは可能」と結論づけた。なぜ六十年の想定になったのかは、はっきりしないが、伴氏は「机上の計算で問題なさそうだったのが『六十年』だったのではないか」とみる。その上で、原則四十年、延長二十年以内の運転ルールを決める際、政府の担当者の間には「この報告書が念頭にあった可能性がある」と話す。
 「住民の反発やコスト面で原発の新設や建て替えが難しい中、電力業界や自民党は今ある原発をとにかく延命させたいのだろうが、事故のリスクを科学的に考えれば、むしろ廃炉前倒しの方向で議論を進めるべきだろう

原発運転40年原則危 福島以前の60年に デスクメモ

原子炉の脆性破壊:井野博満

https://youtu.be/HrRE_ziN2so


鉄が一瞬で割れる! あの大事件の原因がここに再現

https://youtu.be/IEGQL1wZrAE