小出裕章先生:プルトニウムを大量に貯め込んで、何とかしなければいけないという所に既に追い込まれた | 私にとって人間的なもので無縁なものはない

小出裕章先生:プルトニウムを大量に貯め込んで、何とかしなければいけないという所に既に追い込まれた


公共放送NHKの何が問題なのか?(ラジオフォーラム#71)

http://youtu.be/QqvbFE2sTps?t=14m43s
14:43~第71回小出裕章ジャーナル
建設差止め訴訟に揺れる大間原発「フルMOX。つまりプルトニウムをひたすら燃やすためという目的のために造られた原子炉です」

http://www.rafjp.org/koidejournal/no71/

石井彰:
大間原発差し止め提訴北海道の函館市が4月3日青森県大間町で建設中の大間原発について、事業者の電源開発J-POWERと国を相手取り、建設の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こしました。原発差し止め訴訟で自治体が原告になるのは、日本では初めてのことです。

この訴訟が特別な意味を持つのは、函館市が原発のいわゆる立地自治体。自分の所の土地にある原発ではなくて、周辺の自治体であるということが大変注目をされています。

そこで、小出さんに今日はこのお話を伺いたいんですが、まず、この大間原発そのものについて、ちょっと教えていただけますか?

小出さん:
はい。青森県の下北半島の最北端にあります。本州最北端ですね。で、すぐ向かい側が北海道ということで、函館市まで市役所のある所まで30数キロだと思いますし、函館市の一番大間原発に近い所は、20キロ程度しかないという、そんな所なのです。
大間原発からの距離・人口
大間原発建設所

対岸の「大間」差し止め提訴へ 東京新聞 特報そして、もともと大間町というのは、青森県ではありますけれども、青森市とのつながりは大きくなくて、むしろ海峡を挟んだ函館市とのつながりが大きい。要するに、生活文化圏としては函館市と一緒に生きてきたという、そういう町なのです。

そこに電源開発株式会社、最近はJ-POWERとか呼ばれていますけれども、その会社が大間原子力発電所を建てるという計画を随分昔に立てたのですけれども、すったもんだ様々なことがあって、なかなか実現に至らなかったのですが、2008年だったでしょうか? ようやく着工して現在造りつつあるということなのですが、福島第一原子力発電所の事故を受けて、一時期工事すらができない状態でした。それが、また今再開されてるという状態です。
大間原発 経緯

石井:
この原発自体に他の原発とは違う特徴があるそうですが。

小出さん:
そうです。私達の間ではフルMOX炉と呼んでいます。


石井:
フルMOX炉?

小出さん:
はい。モックスと言うのは、MOXと書くのですが、ミックスとオキサイドという英語の単語の頭文字を取っていまして、日本語で言うと、混合酸化物燃料と私達は呼んでいます。
MOX燃料
一体、何を混合してるのかと言うと、普通の原子力発電所の燃料はウランで造られているのですけれども、大間の原子力発電所の燃料はウランだけではなくて、それにプルトニウムという物質を混合させて燃料に使うという特殊な原子炉です。

石井:
これは、他にもあるんですか? 日本には。

小出さん:
はい。もともと日本にある原子力発電所は、ウランを燃やすというために設計されてこれまで運転されてきました。しかし、原子力発電所を運転すると、使用済み燃料の中にプルトニウムという物質が自動的に溜まってきます。

そのプルトニウムという物質は、長崎に落とされた原爆材料だったのです。原爆に使えるぐらいだから、原子力発電所の燃料にも使えるということで、日本では日本の原子力発電所の使用済み燃料の中から、プルトニウムを取り出してきました。
MOX燃料と原爆との違い
と言っても、日本がそれを実行できるわけではなくて、イギリスとフランスに送って再処理という作業をしてもらってプルトニウムを取り出してもらってきたのです。長い間、それを続けてきてしまいまして、今、日本にはいわゆる日の丸という印が付いたプルトニウムが44トンあるという状態になっています。
日本のプルトニウム保有量推移
それを日本では、原子力発電所で燃やすと言ってきたのですが、本来それを燃やすための原子炉というのは高速増殖炉という、今まで日本にはない原子炉なのです。そして、もんじゅという原子炉を高速増殖炉ですけれども、完成させてそこで使うと公式には言ってきたのですが、もんじゅ自身が全く動かないのです。
もんじゅ
そのため、44トンものプルトニウムが行き場がなくなってしまっているわけですが、先程聞いていただいたように、プルトニウムというのは原爆材料そのものなのです。44トンのプルトニウムでもし、長崎型の原爆を造れば、4000発もできてしまうというほどのプルトニウムを日本は懐に入れてしまったのです。

ところが、その使い道もないということで、日本は国際的に大変不審の目を向けられていまして、使い道のないプルトニウムは持たないという国際公約をさせられたのです。

しかし、もんじゅを含めて高速増殖炉は動かない。それなら、もう仕方がないから、ウランを燃やすために設計された普通の原子力発電所で燃やしてしまおうという、誠に愚かで危険な策謀を始めまして、それがプルサーマルと呼ばれてきた計画です。
プルサーマルのしくみ
でも、そのプルサーマルで燃やしたとしても燃やせる量が知れているので、なんとかプルトニウムをひたすら燃やせるような原子炉を造りたいということになりまして、大間原子力発電所というのはフルMOX。つまり、プルトニウムをひたすら燃やすためという目的のために造られた原子炉です。

石井:
小出さん達専門家の目から見て、単にウランを燃やすだけじゃなくて、そこに大変濃度が高いプルトニウムを混ぜるという事は、非常に難しい技術が求められるのではないかと素人考えで思うのですが。

小出さん:
はい。おっしゃる通りです。特に、今、日本がやろうとしてるプルサーマルというものは、もともとウランを燃やす為に設計された原子炉の中に一部プルトニウムも混ぜ込んで運転しようとする計画です。

皆さん石油ストーブをお使いだと思いますけれども、石油ストーブの燃料はは灯油です。灯油を燃やす為に設計されたのが石油ストーブですけれども、石油ストーブでガソリンを燃やそうとすれば火事になってしまうわけですね。ですから、本来ウランを燃やすために設計された原子炉でプルトニウムなどを燃やしてはいけないのです


私は、ですからプルサーマルという計画に反対してきました。ただし、今度の大間の原子力発電所は初めからプルトニウムを燃やすために設計するという、そういう原子炉ですので、設計の考え方としては私はプルサーマルよりはいいと思います。

しかし、プルトニウムという物質は、ウランよりも核分裂の連鎖反応をコントロールしにくいという。まず、基本的な性質を持っていますし、おまけにプルトニウムという物質はウランに比べて放射能の特性が20万倍も高いというほどの猛毒物質なのです。
MOX燃料の核特性上の影響
100万分の1グラムのわずかなちりをもし誰かにすり込ませることができれば、その人は肺がんで殺せるというほどの猛烈な猛毒物質であって、それを取り扱うということ自身に危険がともないますし、万一事故でもなれば、また事故の被害の危険が大きくなってしまうということになります。
プルトニウムとその他の高度毒性物質との比較
主なα放射体毎の比放射能と発ガン毒性の比較

石井:
こういう新しい形の原子力発電所というのは、小出さん世界にはいくつかあるんですか?

小出さん:
ええ、フルMOXという原子力発電所は世界にひとつもありません。
世界のMOX燃料施設
世界における再処理計画の遺産

石井:
この大間だけですか?

小出さん:
そうです。先程聞いていただいたように、日本の場合にはちょっと特殊な事情がありまして、核兵器材料であるプルトニウムを大量に貯め込んでしまって、それを何とかしなければいけないという所に既に追い込まれてしまっているという。その事情のために、こんな原子炉も必要になっているわけです

石井:
ありがとうございました。

小出さん:
はい、ありがとうございました。


大間原発の不安払拭「党として努力」 石破氏が函館入り
(北海道新聞)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/540014.html
 【函館】自民党の石破茂幹事長は18日、函館市内で記者団に対し、函館市が建設差し止め訴訟を起こした電源開発大間原発(青森県大間町)について、「党の立場で(市民の)不安を払拭(ふっしょく)するよう努めていきたい」と述べた。

 石破氏は同日、工藤寿樹市長と会談したことを明らかにし、裁判への言及は避けた上で「建設再開に当たり、自治体の首長や議会が不安や手続きへの問題意識を持っていることに、国や事業者がきちんと答えてきたか」と述べ、国とは別に党として理解を求める努力を続ける姿勢を示した。

 北海道新幹線札幌延伸の工期短縮については「地元の意見を踏まえて可能な限り努力はしていきたい」としつつ、新函館(仮称)まで予定通り開業することを最優先にすべきとの考えを示した。

 石破氏は自民党道8区支部の定期大会出席のため、函館入りしていた。<北海道新聞5月19日朝刊掲載>


石破 カネ これでどうじゃ


大間原発 「福島」後も造る気か

 五日投開票の青森県知事選では、原子力施設の建設を進めてきた現職の三村申吾氏が三選を果たした。本州最北端の大間町では電源開発(Jパワー、東京)が大間原発を建設中だが、東日本大震災以来、中断している。津軽海峡を挟んだ対岸には北海道函館市などがある。安全性は大丈夫なのか。海峡を越えた住民たちも、不安なまなざしで見詰めている。
(篠ケ瀬祐司)

 三月十一日夜、「あさこはうす」にいた小笠原厚子さん(五六)は、ラジオニュースで福島第一原発の異常を知った。
 「これは恐ろしいことになると直感した。原発は事故を起こしたら最悪までいってしまうと言い続けてきたが、とうとう来てしまった」。鳥肌が立つ思いだった。
 「あさこはうす」は大間原発の敷地内にある口グハウス。用地買収に応じなかった母親の故熊谷あさ子さんと一緒に、二〇〇五年に建てた。炉心予定地から三百メートルほどしか離れていない。あさ子さんが所有していた土地の広さは約一ヘクタールある。小笠原さんは月の半分を函館市に隣接する北斗市の自宅で過ごし、残りはここに来て、畑を耕す。
 ○八年に始まった大間原発の建設工事は、東日本大震災後に電源や資機材確保が難しくなったことや、安全強化対策づくりなどを理由に中断中。
Jパワーは「本体工事の再開時期は未定」 (広報室)という。
 ところが、民主党の岡田克也幹事長は工事再開に前のめりだ。
 岡田氏は先月十二日の会見で「あと二年くらいで動かす想定でかなり出来上がっている。ほぼ完成に近づいたものをいきなり全部止めてしまうのは適切ではない」と言及。直後に大間原発を視察した際も「既にある原発、できつつある原発を利用しないと日本の電力を賄えないのは厳然たる事実だ」と強調した。
 Jパワーが公表する工事の進捗率は37・6%。冬でも作業ができるように設けられたほろの中で、格納容器や建屋を造っている最中だ。原子炉や核燃料はまだ運び込まれていない。
 「福島原発のひどい状況を見た上で、なお原発を造る気なんでしょうか。信じられない。『ほ
ぼ完成』どころか半分もできていない。核施設ではなく”カラ施設”なのに」。小笠原さんは、原発ありきのエネルギー政策から抜けられない岡田氏への失望を隠さない。
 「視察するなら『あさこはうす』や大間町全体を見てほしかった。経済的な問題もあるのだろうけれど、大間原発近くに人の命があることを直接見てもらいたい」
 エネルギー政策を転換できないのは岡田氏だけではない。青森県知事選でも、自民、公明推薦の三村知事と、民主、国民新推薦の新人山内崇元県議の二候補は原発の安全確保は訴えても「脱原発」には踏み込まなかった。唯一、唱えたのが共産党の公認候補だった。
 「完全な安全なんてない。原発依存から抜けるのは最初はしんどくても、やろうという気持ち
があれば何とかなるんじゃないでしょうか」。小笠原さんは為政者へのいら立ちを募らせた。

【デスクメモ】

 ゼロベースで見直す原発政策で、建設中が推進とはおかしい。青森県では東電が東通原発を建設中だが、そもそも四月が本格着工でまだ何もない。中止はできる。原発惨禍は続く。収束と並行し脱原発への工程作りも急務で、原発推進の大連立はごめんだ。大間のマクロを風評被害で泣かせてはならない。(呂)


小笠原厚子さん1

あさこはうす 2013-11-11
http://ameblo.jp/m08068469/entry-11682737468.html

あさこはうすをバックに



大間原発建設再開のウラ「なし崩し」不信広がる
大間原発 建設再開のウラ 矛盾だらけ見切り発車



汚染水 外洋流出続く 首相の「完全ブロック」破綻
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014051702000127.html
 東京電力福島第一原発から漏れた汚染水が、沖合の海にまで拡散し続けている可能性の高いことが、原子力規制委員会が公開している海水データの分析から分かった。安倍晋三首相は昨年九月、国際社会に向かって「汚染の影響は専用港内で完全にブロックされている」と強調したが、現実には放射性セシウムはブロックされず、海を汚し続けている。 (山川剛史、清水祐樹)

福島沖30キロ海水の放射性セシウム137の濃度推移

 かつて海外の核実験により放射性物質が日本にも降り注いだため、国は財団法人海洋生物環境研究所などに委託し海水中の放射性セシウム137濃度などを高精度で分析してきた。原子力規制委員会は一九八四年以降のデータを公開、福島第一の沖合三十キロ付近も調査地点に含まれていた。
 二〇一一年の福島事故で、福島沖の同地点の濃度は直前の値から一挙に最大二十万倍近い一リットル当たり一九〇ベクレル(法定の放出基準は九〇ベクレル)に急上昇した。それでも半年後には一万分の一程度にまで急減した。
 一九四〇年代から世界各地で行われた核実験の影響は、海の強い拡散力で徐々に小さくなり、八六年の旧ソ連・チェルノブイリ原発事故で濃度は一時的に上がったが、二年ほどでかつての低下ペースとなった。このため専門家らは、福島事故でも二年程度で濃度低下が元のペースに戻ると期待していた。
 ところが、現実には二〇一二年夏ごろから下がり具合が鈍くなり、事故前の水準の二倍以上の〇・〇〇二~〇・〇〇七ベクレルで一進一退が続いている。
 福島沖の濃度を調べてきた東京海洋大の神田穣太(じょうた)教授は「低下しないのは、福島第一から外洋への継続的なセシウムの供給があるということ」と指摘する。
 海水が一ベクレル程度まで汚染されていないと、食品基準(一キログラム当たり一〇〇ベクレル)を超える魚は出ないとされる。現在の海水レベルは数百分の一の汚染状況のため、「大きな環境影響が出るレベルではない」(神田教授)。ただし福島第一の専用港内では、一二年初夏ごろから一リットル当たり二〇ベクレル前後のセシウム137が検出され続けている。沖合の濃度推移と非常に似ている。

福島第一原発専用港海水のセシウム137濃度の推移

 神田教授は「溶けた核燃料の状態がよく分からない現状で、沖への汚染がどう変わるか分からない。海への汚染が続いていることを前提に、不測の事態が起きないように監視していく必要がある」と話している。



「再稼働ノー」特養の叫び 高齢者180人 逃げられない
(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014051702000130.html
「再稼働ノー」特養の叫び 東京新聞20140517 茨城県東海村にある特別養護老人ホームが「原発事故が起こっても、入所者を避難させない」との同意を、家族から取り付けている。首都圏唯一の原発、日本原子力発電(原電)の東海第二原発のお膝元。東日本大震災を経験し、「高齢の入所者全員を、無事に避難させることは不可能」と思い知ったからだ。特養ホームを運営する女性経営者は、再稼働を止めるのが本筋だと、たった一人で「反対」の声を上げ始めた。 (林容史)
 「東海第二原発再稼働断固反対! 利用者・スタッフ避難できません!」。東海村にある特養ホームの玄関口に、大きな張り紙がある。
 高齢者百八十人が入所する「常陸東海園」。東海第二原発からわずか三キロ。周りには、系列の保育園やDV被害の母子の生活支援施設もある。
 原電が、国に提出する東海第二の適合審査の申請内容をホームページで公表するなど、再稼働に向けて大きな動きをみせた四月下旬。常陸東海園などを運営する社会福祉法人「淑徳(しゅくとく)会」の伏屋淑子(ふせやすみこ)理事長(78)が、施設の玄関口やJR東海駅前の所有地に、再稼働反対を訴える張り紙を掲示し始めた。
 「今、できることを百パーセントやらなくては」。伏屋さんは決意を口にする。
 三年前の東日本大震災で、特養ホームのスプリンクラーは壊れ、一棟が水浸しになった。停電でエレベーターが動かず、歩けない入所者を職員が一人一人抱えて階段を移動した。停電と断水が続く中で、何とか三日間を乗り切った。
 入所者は百四歳の三人を最高に、九十歳以上が三分の一を占める。寝たきりの人は、乗用車なら一人しか乗せられない。自分で食事ができず、体力的にどこまで逃げられるか分からない人もいる。
 「東海第二原発で福島と同じような事故が起きれば、全員の避難は不可能。しかし、逃げる順番を決めることはできない」
 今年三月。万が一の原発事故の際に入所者を迎えに来るよう、各家族に連絡すると「来られない」という答えもあった。
 逃げられないなら、どうしたらいいのか-。追い詰められた伏屋さんは、安全な場所に避難できなくてもやむを得ないと納得してもらった上で、入所を継続させる方法を取った。「退避しません」との同意書を家族から取ったのだ。
 しかし、おかしいのは再稼働を進めようとする国や原電の方ではないのか。「逃げられないなら、再稼働を許してはいけない」。伏屋さんは一人で声を上げ始めた。
 「原発の一番近くで三十七年、福祉の仕事をしてきた。私一人の声でも十分、大きいはずだ」と伏屋さん。「行政は、逃げられない人がいることを前提に、原発再稼働の是非を考えてほしい。私たちは、命を預けている」。突き付ける問いは重い。




鼻血問題・・・公害の立証責任は誰にあるのか? 政府・マスコミの変容 / 武田 邦彦 [ 2014.05.15 ] 

http://youtu.be/sfO_61xf5AE
鼻血問題・・・公害の立証責任は誰にあるのか? 政府・マスコミの変容
http://takedanet.com/2014/05/post_98cf.html
小学館のマンガに「被曝で鼻血がでた」という内容があったということで、福島県知事、大阪市長、地元の町長などから一斉に反撃の手が上がり、さらに本来は「鼻血が出た」ことを心配しなければならない環境大臣までが、「不快だ」というような事態である。

相変わらずマスコミは「流れに乗る」ということで無批判に作者のバッシングに参加しているが、「公害=原発事故による放射性物質の拡散による被害」の場合は、通常の犯罪などと違って「調査や立証は発生元、もしくは政府、自治体」にあるというのが大原則で、これまではマスコミもそれを声高に言ってきた。

たとえば1960年代に四日市で起こったゼンソクでは、住民は「新しい工場ができた少し後から、咳こむようになった」と言えばよく、「そんな証拠はどこにあるのだ! データを示せ」などと言わなくても良い。これは公害における大原則である。

数人のゼンソクがみられる時に、テレビ局がゼンソクを発症していない人を数人取材して、それを放映するという手段は犯罪に近い。今回でも「私は鼻血を出さなかった」という取材をして放送していたところもあった。

つまり、公害は「健康に住んでいる人が、何らかの障害を受けた場合、個人は障害を訴えればよく、それが多くの人に該当するのか、何が原因なのかは政府、自治体、発生元と考えられる機関」の責任である。

それなのに、今日のテレビを見ていたらある首長が「鼻血が出たというならデータを示せ」とか、「多くの人が鼻血が出ているかどうかわからないのにいい加減のことを言うな」と言い、それをテレビが放映していた。

これまでの公害では全く見られなかったことで、このようなことが起こったのは、マスコミが「権威に従う」ということ、つまりNHKの会長が言ったように「政府が右と言ったのだから、右と放送せざるを得ないじゃないか」という現代のマスコミの倫理観を示している。

福島原発以後、私は「なんということか!」と驚くほど、それまでの発言や報道と正反対のことが多い。少しの被曝も怖いと言ってきたのに「平気」になり、公害をまき散らす企業を糾弾してきたのに「教えてください」と東電に言い、環境を守るはずの環境省が法律で決まっていたがれきの処理基準(100ベクレル/キロ)を8000まで上げるなどが起こっている。

心理学者はこれを「危機に瀕して、判断力や胆力がない」場合、正反対に動いたり、極端なことをするようになると解釈している。まさに日本中の歯車が狂った状態と考えられる。

公害で国民の健康を守る原理原則は「被害を受けた個人は、被害を受けたと言えばよい」というもので、つい最近までそれは政府、マスコミ、専門家を含め「異論もなく、決まりきったもの」であった。それなのに、「鼻血がでたというなら立証しろ」とは驚くべき変わり身である。こんなことが起きたら、今後、私たちの環境は基本的に破壊されてしまう。

「被害を受けた人がおとがめを受ける」というのは江戸時代にはあったし、明治時代などには残っていたが、戦後の公害を経て全滅したと思っていたが、またその醜悪な姿を現した感じがする。

(平成26年5月14日)

お母さんのための原発資料展望(10) 鼻血・・・なにが隠されているのか? / 武田 邦彦 [ 2014.05.15 ] 

http://youtu.be/TQtaF8_P4NQ
お母さんのための原発資料展望(10) 鼻血・・・なにが隠されているのか?
http://takedanet.com/2014/05/post_95d5.html
鼻血の問題が大きく取り上げられていて、「公害の倫理」、「低線量被曝の確率的疾病」について整理をしましたが、少し踏み込んで、この問題の裏に何が隠されているのかを明らかにしたいと思います。

原発事故の後、本来なら政府が必死になってやらなければならないことがありました。原子力予算は1年に4000億円近くあるのですから、十分に研究資金はあります。それは日本の国民の健康を守るためでもあり、今、政府が進めようとしている原発再開に政府として「合理的な判断」をするためにも必要なことです。

1.原発からの放射性物質の飛散状態を公表する・・・最初に100京ベクレル程度の放射性物質が飛散し、その後(現在も)、継続的に原発から放射性物質が飛散していると考えられる。スピーディは動いているのだから、時々刻々、それが危険かどうかは判断せずに、データも飛散地点もわかるので、公表するべきだが、それに話が行くことを防ごうとしている。
というのは、100京ベクレルだけで、それがもし日本人全員に降りそそいだとすると、全員が致死量の被曝を受けることになるからだ。しかし、だからこそ、みんなが心配しているのだから、「風評」ではなく、「知らなければいけないデータ」である。

2.放射性物質の汚染状態を公表する・・・2011年に飛散した放射性物質はセシウムのように一年で土の中に1センチずつ沈んでいく(チェルノブイリの例で、日本の場合はまだデータなし)ものや、再飛散するもの、森林から田畑などに移行するものなどがある。その状態を明らかにすることは、公害(広い環境汚染で被害が予想される)については環境省や国立環境研究所などが税金をもらっている立場から義務と言える。
また、再飛散したものが、空気中にどのぐらいの濃度で存在するか、それを呼吸した時に咽頭、肺などにどのぐらい取り込まれるかを明らかにしていく必要がある。今回の鼻血や、私が三重県の個人の測定データから三重県の汚染を推定したように、安心した生活をするには必須のものであるが、それを明らかにするのを政府や専門機関は避けている。
環境関係および原子力、放射線関係の学会や専門家は、社会的責任としても、また学術的にも、特別な計画を立てて原発による汚染の研究を進める必要がある。これはこれまで原子力を進めてきた日本、原爆を落とされた唯一の国としての日本、そして事故を起こした責任としての集団の責任があるからでもあり、さらに時々刻々、貴重なデータは失われている。

3.被曝による健康被害調査を実施する・・・大気汚染や水銀汚染などと同じように、政府や関係機関は公害の恐れがあるときには積極的に健康調査を実施し、その結果を報告する必要がある。被曝の場合は、甲状腺がん、急性白血病、一般のガン、遺伝性疾患などは必須だが、日本は世界にかんたる技術国であり、さらに原発を積極的に推進していたのだから、福島事故では精密なデータを取り、今後の人類の発展のために供さなければならない。
現実に、甲状腺がんは増加しており、急性白血病も増えているといわれる。これが「風評」になるのは、信頼性があり学問的に中立なデータが測定されず、公表されないことにある。
この件は厚労省や医学界にも責任がある。厚労省は政府機関ではあるが、国民の健康を守る役場でもあるので、より積極的に世界的にレベル高いデータを出すべきであり、医学界は学会として政府からは独立しているので、被曝と健康障害に関する人類の智慧を確実なものにするために、学問として、第三者として、専門家集団として、学会を上げて調査を進めるべきである。

4.食材の汚染を経時的に調査し、公表する・・・食材についてはよく「風評」というが、政府や学会がデータを公表しなければ、すべての情報は「風評」になる。これまで私の記憶では、政府が食材について網羅的、個別的に「ベクレル表示」をしたことがない。
つまり国民はこの3年間、「日本の食材は汚染されているが、その程度は不明」と言う状態の中にいる。「子どもに責任を持つ親」が何とか情報を得ようとするのは当然であり、政府もそのような日本の親は歓迎すべきだろう。その親はどこからデータを得ればよいのか、どうしたら子供を守ればよいのかというと政府の言う「風評」以外にはないからだ。
この世に悪人はいない、誰も法律違反はしないということなら、「政府の言うことを信じろ」ということだが、政府はすべての食材を測定していないことは事実であり、さらに流通段階での怪しげな情報は後を絶たない。この状態で「政府の言うことを信じろ」というのは具体的にどういうことを言っているのだろうか? これも隠ぺいの一つである。

鼻血という小さな問題が、漫画に描かれただけで、日本の政治家や自治体がこれほど敏感に反応するというのは、彼らの心の中に、「堂々とした考え」がないことを示している。また福島や近県の人が「被曝は安全だ」という政府の説明を信じていないことも十分に理解しているのだろう。それなら、積極的に国民の疑問を解消する方に舵を切るべきだ。

数年前、「安全、安心社会」と言われたとき、多くの人が「これからは「安全だ」と言うだけでは不十分で、「安心する状態」を作っていかなければならない」と言った。でも原発事故の後の被曝の問題では、法令で1年1ミリシーベルト以下となっているのだから、国民が具体的に1年1ミリシーベルト以下の被曝に収めるように自ら生活できるだけの情報を提供することが「安心」につながるのは当然でもある。

今回の鼻血問題は、1)表現の自由、2)公害の訴え、3)放射線のデータ隠匿、4)国民が計算できないデータ公開、5)安全安心社会、のいずれにも大きく悖るにも関わらず、大臣、首長、専門家、マスコミなど社会の指導層が単に「原発を再稼働したい」という目的以外の目的を示さずに強引に国民をバカにした言動が続いたことは残念だった。

またマスコミはSTAP事件も同じだったが、「組織が正しく、個人は間違っている」(STAPでは理研と小保方さん、鼻血は大臣や首長と作家)という前提を置いているのは報道にあるまじきことで、放送法第4条の違反でもある。

(平成26年5月14日)

自治体の首長は国会議員が怖い?・・・鼻血の記録 / 武田 邦彦 [ 2014.05.17 ] 

http://youtu.be/67fP23dWqMw
自治体の首長は国会議員が怖い?・・・鼻血の記録
http://takedanet.com/2014/05/post_ae67.html
福島県知事、大阪市長などが「美味しんぼ」に被ばくによる鼻血のことが書いてあるということで、猛烈に抗議をしましたが、下の資料の通り、原発事故の後、多くの鼻血がみられるということが国会で4人の参考人と議員が質問しています。その時に自治体の首長(福島県など)は異議を申し立てていません。
国会や国会議員は怖いからクレームをつけないけれど、個人や出版社などは弱いとみて攻撃する。 そんな人は民主主義における指導者ではありません。少なくとも、なぜ国会での質問には表現の自由があるけれど、個人にはないかということを言わなければならないでしょう。
マスコミも報道する場合、「首長だから」というのではなく、もちろん国会での発言は聞いているのですから、放送や記事を書くときに「被曝と鼻血のことはすでに国会で4人の議員が追及している」とか、そのことに関する取材をして放送法第4条の規定を守らなければならないと思います。NHKも殿様ではないのです。法律に基づいた放送をしなければ受信料は払うことができません。
また私へのバッシングも来ましたが、ネットでも「自由に発言できる」という権利とともに、「ウソを言ってはいけない」という義務もあります。ネットでの発言も良く事実を調べて発言しなければならないのは当然です。特に匿名と言う権利をさらに使う場合は、名前を出して発言するより高い道徳が必要とされます。
資料
参議院・東日本大震災復興特別委員会8号(平成23年12月02日)
宍戸隆子参考人(議員ではありません)
北海道に避難している方たちといろいろ話をしまして、その中で、例えば鼻血なんですけれども、そういうような症状を訴えていたお子さんが非常に多かったです。
国は安全だと言う。これぐらいの低線量では身体的な影響は出ないと言います。私も初めはそう思っていました。自分の娘も鼻血を出したりしたんですが、それでもそれを被曝のせいだと私は初め考えておりませんでしたし、今でも疑っているのも事実です。
目の前で今まで出したことのないような鼻血を出している子供たちがいたら、皆さんどうしますか。偉い学者さんがどんなに安全だと言っても今起きているその事象を優先しませんか。本当に、お手元に資料配られていると思うんですが、みんな目の前で起こったことを、それを見て避難を決めている方もたくさんいらっしゃいます。
参議員予算委員会8号 (平成24年03月14日)
熊谷大議員(自民党)
ある小学校の、県南の小学校の保健便りです。四月から七月二十二日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血、これ鼻血ですね、順に多くということ、これ結果で出ているんですね。
参議員文教科学委員会3号(平成24年03月22日)
熊谷大議員
四月から七月二十日現在の保健室利用状況では、内科的症状で延べ人数四百六十九名が利用しました。内科的症状では、頭痛、腹痛、鼻出血の順に多く、鼻出血というのはこれ鼻血のことですね、外科症状では擦り傷、打撲、虫刺されが順に多かったということで書いてありますが、平野大臣、この事実もう一度、どのようにお考えになりますでしょうか。
参議員憲法審査会4号(平成24年04月25日)
山谷えり子議員(自民党)
井戸川町長が雑誌のインタビューでこんなことを言っていらっしゃいます。
放射能のために学校も病院も職場も全て奪われて崩壊しているのです。私は脱毛していますし、毎日鼻血が出ています。この前、東京のある病院に被曝しているので血液検査をしてもらえますかとお願いしたら、いや、調べられないと断られましたよ。我々は被曝までさせられているが、その対策もないし、明確な検査もないという。本当に重い発言だと思います。
フランスの原発関係のジャーナリストに聞きましたら、こんなに情報公開がなくて、しかもいろいろな、沃素剤一つ取っても国、県の指示があって初めて服用できるというような、非常に不十分なままほったらかされていたと、この十三条と二十五条、幸福追求権と生存権が妨げられているのではないか。
参議員東日本大震災復興特別委員会8号(平成24年06月14日)
森まさこ議員(自民党)
例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。子どもが鼻血を出した、これは被ばくによる影響じゃないかと心配なんだけれども、それを診察してもらった、検査してもらった、そのお金はどうなるんですかということです。
(国会の記録は読者からご提供いただいたものです)

(平成26年5月16日)


福島県双葉町で鼻血「有意に多い」調査 「避難生活か、被ばくによって起きた」
(J-CAST ニュース)
http://www.j-cast.com/2014/05/16204959.html


井戸川克隆 鼻血01
井戸川克隆 鼻血02


2014/05/12
「すべてが『実害』」 前双葉町長・井戸川克隆氏、石原環境相の「風評被害」発言を批判~岩上安身による前双葉町長・井戸川克隆氏インタビュー
(IWJ)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/139458
※ 公共性に鑑み、会員以外の方へ記事・動画全編を公開中!5月20日まで!

http://youtu.be/XoP1eCGjjeQ