小出裕章先生:国民自身が賢くならなければ、これからどんどん酷い時代に向かっていく | 私にとって人間的なもので無縁なものはない

小出裕章先生:国民自身が賢くならなければ、これからどんどん酷い時代に向かっていく



◆【小出裕章ジャーナル~第59】マンガのような話!安定供給・コスト低減・温暖化対策は原発推進の大義名分か?

http://youtu.be/HvDaNFJYmHQ
石井彰:
経済産業省が昨年の12月6日、ちょうど特定秘密保護法案。私に言わせれば、不特定秘密隠蔽法案の可決のどさくさに紛れて、総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が新エネルギー基本計画というのを発表しました。

これは、原発を重要なベース(基礎)の電源として考えていこうと民主党政権が打ち出した2030年代に原発を0(ゼロ)にするという目標をさらりと撤回して、むしろ原発を活用していこうという方針を出しました。

これが閣議決定をされたり、そのいろんなことになってきているんですが、まずこの原発を主要な電源・重要な電源とするっていう理由なんですけれども、

・「安定供給」
・「コスト低減」
・「温暖化対策」

この3つの理由で、原発をベースにするんだっていうふうに経済産業省は言ってるんですが、小出さんはどうお考えですか?

※総合エネルギー調査会基本政策分科会 エネルギー基本計画に対する意見の骨子(案)
http://www.enecho.meti.go.jp/info/committee/kihonseisaku/12th/12th1-1.pdf
総合エネルギー調査会基本政策分科会  基本計画

小出さん:
まったくマンガのような話ですね。安定供給って、今電源が困ってると言ってるのは自民党なんですね。

原発全部止まっちゃってるわけで、なぜ止まったかといえば、彼らが絶対安全だといってきた原子力発電所が実はそうではなくて、巨大な事故を起こしてしまうものであったということを事実が示したから、今原子力発電所は全部止まっているわけですし。だから、電気が足りなくなったら大変だとか言って、節電要請をしたりしているわけですね。

安定供給なんていうものをもし目指すのであれば、原発はやっぱりやってはいけないと思わなければいけないと思います。

東京電力元社長

「コスト低減」なんていうのもほんとにお話にならないほどのことですね。もともと原子力発電所というのは、電力会社の有価証券報告書を使って計算すると一番高い発電方法でした。

電源別実際の発電コスト
ですから、やらないにこしたことはなかったわけですし、ましてややってしまって巨大な事故を起こして、本当であれば東京電力なんか何回倒産しても足りないほどの被害が出ている

そして、もっとちゃんと保障しようと思えば、日本の国家が倒産しても贖(あがな)いきれないというほど酷いことが起きているわけであって、コストの問題をいうならもう原発なんて話にならないほど失格です。

温暖化対策」ということでも私自身は地球温暖化というのは、二酸化炭素が原因だということにはかなり疑問を持っていますし、地球温暖化を防ぐというのであれば、一番良い方法はエネルギー消費を抑えるということですので、これから原子力をどんどんやってエネルギーを供給するという、そういう考え方そのものをまずは改めなければいけないと思います。
原発は温暖化対策になるの?

地球の温暖化を拒否

石井:
なるほどね。それとですね大変気になるのは、この計画のまだ素案ですけれども。素案しか私は見ておりませんが、原発の再稼働を推進するだけでなくて、どうも新設するということもですね匂わせてる。

あえて、この計画の中に盛らないことによって、入れないことによって、新増設の可能性を含ませてるんじゃないかなっていうの、これは僕の穿(うが)った見方でしょうか?

小出さん:
いえいえ、必ず、そうだろうと思います。今止まってる原子力発電所も安全性を確認して再稼働させるとまずは言っているわけですね。冗談は私は言わないでくれと思います。

これまで自民党政権が安全性を確認したと言って、日本で58基もの原子力発電所にお墨付きを与えてきました。もちろん、福島第一原子力発電所の1号機・2号機・3号機・4号機もみんな自民党政権がお墨付きを与えた原子炉ですけれども。
福島第一原子力発電所

それが事実として事故を起こしてるわけですから、まずは自分達のやったことが間違いだったと反省しなければいけませんし、私自身は犯罪だと思っていますので、犯罪を犯した人間をまず処罰をしなければいけないと思っています。
福島原発事故の「犯罪」を裁く
それなのに、また「安全性を確認して」というようなことを言う人達がいるのですね。ほんとに困った人達だと思いますし、さらには、新設・増設ということも彼らが考えてるはずですし、その先には原発の輸出ということももちろん考えているわけです。
世界に進出する日本の原子炉メーカー


石井:
それとですね、やっぱり気になるのは、原発から出る使用済み核燃料のいわゆる高レベルの放射性廃棄物の最終処分場の選定についてですね。これまでの自治体による応募方式。それは、どこも応募なんかしないわけで。応募方式から、政府が候補地を示す方式に転換するというふうに盛り込みましたよね。これは、今後どういうふうになると予想してらっしゃいますか?

小出さん:
要するに、ほんとは埋めてはいけないゴミなのです。残念ながら、私達が原子力に手を染めてしまいまして、核分裂生成物という放射性物質を膨大に作ってしまったのですが、それを私達人間が無毒化するという力を持っていないのですね。
わが国の放射性廃棄物の施設別発生量と保管量
ですから、どこかに隔離をしなければいけない。それは、確実なのですけれども。日本の政府は、それを地面の下に埋めてしまえばいいという、そういう方針でこれまでやってきたのです。
放射性廃棄物の処分方法
しかし、埋めてしまったところで、一体そこに何年間じっとしておいてくれればいいかといえば、10万年とか100万年という時間の長さなのです。そんなもの科学が保障できる道理がないわけであって、いや、本来やってはいけないやり方だと私は思ってきました。

で、私自身は国とそういう論争を続けてきたわけですが、一昨年の9月の11日になって、日本学術会議という、いわゆる学者の国会の組織が「埋め捨ては正しくないから、1から考え直せ」という答申を出したのですね。
高レベル放射性廃棄物の処分について
私は、「なんで今まで黙っていたのか」と半ば半分、学術会議に対して文句を言いたくなりましたけれども。でも、学術会議の言ってること自身は正しいことだったと思います。

それを受けて本当であれば、埋め捨てにするという方針を変えなければいけなかったはずなのですが、埋め捨てにするという方針自身は全然変えないで、これまでどこか手を挙げてくれるのを待っていたけれども、それではダメだから、国の方で強権的に今度は押し進めるという、そういうやり方に打って出てきたわけですね。ほんとに酷い政権だなあと私は思います。

石井:
当然ですね、今いくつか候補地がですね、噂の段階ですが出ております。こういう所に対してお金でですね懐柔(かいじゅう)するか。あるいは、最後は強制代執行というようなですね、力ずくでいくか。つまり、なんらかの形で最終処分場を作らなければ、もうこれ以上、原子力発電はできないわけですから、彼らは遮二無二やってきますよね

小出さん:
そうです。これまでにも候補地として狙われていた所はたくさん日本中にあるわけですし、その内のどこかに、また白羽の矢を今度は国家の側から強制的に執行してくるという可能性はあると思いますし、私が今心配しているのは福島です。
フクシマエコテッククリーンセンターの概要
広大な土地が放射能で汚染されてしまっていまして、その内の15平方キロメートルを国有地化するというような方針をこないだ自民党の政権が出してきました。

15平方キロメートルというのは、埋め捨ての場所を取る時に必要な面積にほぼ近いですので、そういう所を国有地化した上で、放射能の最終的な処分場もそこに押し付けようという魂胆かなと私は疑いました。

石井:
は~、そういう動きがあるんですか。

小出さん:
はい。

石井:
なるほどねえ。絶えず、私達は大きなニュースにばかり目を向けてしまう。どうしても福島原発事故のことがですね、忘れられがちになる。あるいは、その一方で私達も毎日暮らしていかなければならない。そういう中で、どうしても忘れている間にヒューヒューヒューっと、こうなんていうのかな。悪政が堂々とまかり通っちゃってることを小出さん、どうやってこう変えていけるっていうか、食い止めるっていうか…

小出さん:
皆さん、きちっとやはり物を考えていただきたいと思います。こういう言い方は良くないと承知の上ですけれども、愚かな国民には愚かな政府という言葉がありましたけれども、国民自身が賢くならなければ今の酷い時代、これからどんどん酷い時代に向かっていくという流れを止められないんではないかと私は大変不安に感じています。

石井:
私達が少しでも賢くなっていくためにですね、引き続き小出さんからですね、こうやっていろんなお話を伺っていきたいと願っております。今日はどうもありがとうございました。

小出さん:
ありがとうございました。


社会はすべて狂人によって動かされているJ.レノン
ジョン・レノン



大島堅一・再生可能エネルギーの政治経済学

http://www.youtube.com/playlist?list=PL9B473659C6F1BF32
原発の本当のコスト
─公表データから見えてくるもの─
大島堅一
http://www.foejapan.org/infomation/news/110419_o.pdf



地球温暖化CO2犯人説のウソ 1/8

http://youtu.be/h6xFe6lXu1Y

地球温暖化CO2犯人説のウソ 2/8

http://youtu.be/_6EEOtgo5Fk

地球温暖化CO2犯人説のウソ 3/8

http://youtu.be/5CpyAGU4FBs

地球温暖化CO2犯人説のウソ 4/8

http://youtu.be/0Wpdc71nO54

地球温暖化CO2犯人説のウソ 5/8

http://youtu.be/msSCDWjRXbo

地球温暖化CO2犯人説のウソ 6/8

http://youtu.be/rId5dg9QKKY

地球温暖化CO2犯人説のウソ 7/8

http://youtu.be/6YsFU5kIKwU

地球温暖化CO2犯人説のウソ 8/8

http://youtu.be/W8ITxLPRbpc



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「アンネの日記」都内での相次ぐ破損被害について。- 2014.02.21

http://youtu.be/mPOJNl--eZg
【犯人は都内のネトウヨの確率・・・99%!?】
米ユダヤ団体「当局は犯人特定を」 アンネの日記破損で

http://blog.goo.ne.jp/sithux7/e/acbbc5fd4e5294242a64800296c856ef
「アンネの日記」200冊超破られる 都内の複数図書館で(東京新聞)
アンネの日記、被害は288冊に 都内の公立図書館(共同通信)
はだしのゲン 都内で撤去請願 教委・議会に14件(東京新聞)
「アンネの日記」破られる被害相次ぐ(NHKニュース)
"アンネの日記"都内で270冊破られる(日テレNEWS24)
「アンネの日記」破損相次ぐ=都内図書館で、被害250冊超(時事通信)
「アンネの日記」破損恥ずべき=菅官房長官(時事通信)
「アンネの日記」破損被害相次ぐ 都内各地の公立図書館(朝日新聞)
米ユダヤ団体「当局は犯人特定を」 アンネの日記破損で(朝日新聞)
アンネの日記、破損相次ぐ 都内図書館で200冊超(MSN産経ニュース)
「アンネの日記」が大量に引き裂かれる 杉並、中野、練馬、新宿など都内の図書館で250冊以上(J-CASTニュース)


【IWJブログ】「アンネの日記」事件と蔓延する歴史修正主義 国際世論から警戒される安倍政権
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/126433
 東京都内の公立図書館に所蔵されている「アンネの日記」や、ホロコーストに関する書籍のページが破られるという被害が相次いでいる。

 2月21日(金)時点での被害は、東久留米市、西東京市、武蔵野市、練馬区、中野区、豊島区、新宿区、杉並区の東京都西部の3市5区で、計294冊にのぼるという。「アンネの日記」以外の、破られた「ホロコースト関連の書籍」とは何か、書名はまだ判明していない。

アンネの日記:関連本破損、東京の3市5区で294冊(毎日新聞、2月21日)

 この事件は日本国内だけでなく、BBC、ニューヨーク・タイムズ、ワシントンポスト、ガーディアン、ハーレッツなど、海外の主要メディアもこぞって報じている。


Anne Frank’s Diary vandalised in Japan libraries(BBC 2014.02.21)

Hundreds of Anne Frank Books Vandalized in Japan(New York Times 2014.02.21)

265 Anne Frank books vandalized in Tokyo libraries(The Washington Post 2014.02.21)

Anne Frank books damaged in Tokyo vandal attacks(the guardian 2014.02.21)

Hundreds of Anne Frank books vandalized across Tokyo(HAARETZ 2014.02.21)

◆広域に及ぶ被害 組織的犯行か◆

 IWJでは、東京都内の各図書館から情報を収集している東京都図書館協会事務局(都立中央図書館内)の担当者に話を聞いた。担当者によると「被害の全体像は分からず、調査中」という。

 「これまで、個別の破損は色々とあったが、これほどの被害は聞いたことがない」とのことで、図書館協会事務局としても、まだ、今回の被害の全貌がつかめていない。

 次に、実際の被害にあった杉並区立図書館の担当者に話を聞いた。担当者によると、2月3日に隣接する練馬区から連絡を受けて調査を進めたところ、杉並区内の全13館のうち11館、計119冊が切り刻まれた状態で発見されたという。

 犯行の動機について聞くと、杉並区の担当者は、「こちらが知りたいくらいですよ」と困惑の様子を隠さずに答えた。

 「職員の対応が悪くて、それに怒って…ということで1~2冊破る、というならあり得るかもしれませんが。だから、そういう目的以外のところに、動機があるのではないでしょうか。特定の本を広範で、というのは初めてですからね」と、単なる愉快犯ではなく、思想的・政治的な背景があるのではないか、との見方を示した。

 「アンネの日記」は、ユダヤ系ドイツ人の少女アンネ・フランクが、第2次世界大戦中、オランダの首都アムステルダムで、アウシュビッツをはじめとする強制収容所にユダヤ人を連行しようとするナチス・ドイツの秘密警察「ゲシュタポ」から身を隠して暮らしていた時の様子を、日記の文体で描いた文学作品である。

 戦争や人種差別、そしてナチスによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)がいかに悲惨なものであるか、これまで世界中の多くの人々に訴え続け、親しまれてきた。「アンネの日記」を破るということ、同時に「ホロコースト関連の書籍」も破損されていることを考えあわせると、事件の背景にホロコーストの史実を疑う「歴史修正主義」の考えがあるのではないかとも疑われる。

 菅義偉官房長官は2月21日の定例会見で記者からこの事件に対する受け止めをきかれ、「わが国として受け入れられるものではなく、極めて遺憾なことであり、恥ずべきことだ」と語った。

菅義偉官房長官 記者会見(首相官邸 2014年2月21日)

 しかし、事態は既に、官房長官が「遺憾だ」と言っておさまるような水域を超えてしまっている感がある。今回の事件に対し、米国のユダヤ人権団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」が緊急の声明を発表したのである。

◆サイモン・ヴィーゼンタール・センターが声明を発表◆

 以下、サイモン・ヴィーゼンタール・センターの声明の全訳を掲げる。

・Wiesenthal Center Expresses Shock and Deep Concern Over Mass Desecrations of The Diary of Anne Frank in Japanese Libraries

・ヴィーゼンタール・センターは、日本の図書館で『アンネの日記』が大量に冒涜されたことに衝撃を受け、深い懸念を示します

The Simon Wiesenthal Center has expressed its shock and deep concern over the vandalization of hundreds of copies of The Diary of Anne Frank in at least two dozen libraries in Metropolitan Tokyo. The shocking development was first reported in The Huffington Post.

 サイモン・ヴィーゼンタール・センターは、首都東京の少なくとも24館の図書館で『アンネの日記』が何百冊も破られたことに衝撃を受け、深い懸念を表明します。この衝撃的な新事実はまず、ハフィントンポストで報道されました。

“The geographic scope of these incidents strongly suggest an organized effort to denigrate the memory of the most famous of the 1.5 million Jewish children murdered by the Nazis in the World War II Holocaust,” charged Rabbi Abraham Cooper, associate Dean of the Simon Wiesenthal Center, a leading Jewish Human Rights organization which also houses a major exhibition on Anne Frank at its Museum of Tolerance in Los Angeles.

 「この事件が広範囲で行われたことは、第二次世界大戦中ナチスによるホロコーストで殺された150万人のユダヤ人の子どもたちのうちで最も有名な子どもの記憶を侮辱しようとする組織化された運動であることを強く示しています」と、サイモン・ヴィーゼンタール・センターの共同センター長であり、ロサンゼルスの「寛容美術館」でアンネ・フランクに関する主要な展示を設置した「ユダヤ人人権組織」のリーダーであるラビ・アブラハム・クーパーは訴えます。

“I know from my many visits to Japan, how much Anne Frank is studied and revered by millions of Japanese. Only people imbued with bigotry and hatred would seek to destroy Anne’s historic words of courage, hope and love in the face of impending doom,” Cooper added.

 「わたしは何度も日本を訪問し、いかにアンネ・フランクが学ばれ、多くの日本人に尊敬されているかを知っています。偏見に根ざした憎悪や強い嫌悪に満たされた人だけが、差し迫る悲運に直面して書かれたアンネの勇気・希望・愛の歴史的に有名な言葉を破壊しようとしたのです」とクーパーは言います。

“We are calling on Japanese authorities to step up efforts to identify and deal with the perpetrators of this hate campaign,” Cooper concluded.

 クーパーは最後に、「私たちは、日本当局に、このヘイト・キャンペーンの犯人を探す迅速な努力をするように要求します」と述べています。

For more information, please contact the Center’s Public Relations Department, 310-553-9036, join the Center on Facebook, www.facebook.com/simonwiesenthalcenter,orfollow @simonwiesenthal for news updates sent direct to your Twitter page or mobile device.

 さらなる情報については、センターの広報部に連絡するか、センターのFacebookに参加してください。また、新しい情報はTwitterで流しますので、 @simonwiesenthalをフォローしてください。

The Simon Wiesenthal Center is one of the largest international Jewish human rights organizations with over 400,000 member families in the United States. It is an NGO at international agencies including the United Nations, UNESCO, the OSCE, the OAS, the Council of Europe and the Latin American Parliament (Parlatino).

 サイモン・ヴィーゼンタール・センターは国際的なユダヤ人人権組織のうちの最も大きな組織のひとつで、アメリカで40万以上の家族がメンバーになっています。国連、ユネスコ、欧州安全保障強力機構、米州機構、欧州評議会、ラテンアメリカ議会を含む国際的なエージェンシーにおけるNGO組織です。

SIMON WIESENTAL CENTER

 日本の言論界と「サイモン・ヴィーゼンタール・センター」との間には、浅からぬ因縁がある。

 阪神・淡路大震災が発生した1995年1月17日、この日発売された、(株)文藝春秋の月刊誌「マルコポーロ」に、内科医の西岡昌紀氏が寄稿した「戦後世界史最大のタブー。ナチ『ガス室』はなかった」という論文が掲載された。

 これはナチスによるユダヤ人虐殺がなかったと主張するもので、この記事に対し、サイモン・ヴィーゼンタール・センターは、(株)文藝春秋に対して抗議を行い、その抗議に対する対応が鈍いとみてとると、日米の経済界に働きかけて、同社への広告の出稿を引き上げさせるなどした。

 「マルコポーロ」誌への広告だけでなく、同社の柱をなす月刊「文藝春秋」や「週刊文春」へ広告を出稿していたスポンサーも続々と降りてゆく事態に至って、同社はようやく、事の深刻さを理解することとなった。

 2月2日、文藝春秋とサイモン・ヴィーゼンタール・センターは共同の会見を開催。文藝春秋の田中健五社長は辞任し、「マルコポーロ」誌は廃刊に。「マルコポーロ」の編集部員らはサイモン・ヴィーゼンタール・センターの求めに応じて、改めて、アウシュビッツ強制収容所でのユダヤ人虐殺について「勉強」させられる羽目となった。

 当時、「マルコポーロ」の編集長を務めていたのは、文藝春秋のエース編集者として業界に名前が知られていた花田紀凱(はなだ かずよし)氏。「マルコポーロ」に、西岡論文を掲載した責任者である。花田氏は「マルコポーロ」の廃刊が決定した後、(株)文藝春秋を退社、現在は雑誌「WiLL」の編集長を務めている。「WiLL」は、田母神俊雄氏の特集を発行するなど、「タカ派」色の強い雑誌として知られている。

 私はこの「マルコポーロ」廃刊騒動のただなか、「ナチ『ガス室』はなかった」を執筆した当人である西岡昌紀氏を取材。高等教育を受けた人間が、ホロコーストを否定ないしは過小評価する歴史修正主義者のプロパガンダに飛びつく心理を分析した、「無邪気なホロコースト・リビジョニスト」というルポを「宝島30」誌に発表した。このルポは、「IWJウィークリー13号」に全文転載しているので、ご一読いただきたい。

※メルマガ「IWJウィークリー」はIWJ定額会員の皆様に無料でお届けしています。会員登録はこちら

 ちなみに、記事の執筆者である西岡昌紀氏は、「マルコポーロ事件」から19年経った現在も、ユダヤ人虐殺の史実を疑う主張をやネット上で繰り返している。彼の読者や信奉者は、「マルコポーロ事件」当時よりも、むしろ増えているかもしれない。

 この「アンネの日記」破損事件が明らかになる前日の2月20日(木)、私はツイッター上で西岡氏から唐突にメンションを送られ、それに返答したばかりだった。なぜ、彼がこの日、私にメンションをつけてこのツイートを送ってきたのか、真意は不明である。



 サイモン・ヴィーゼンタール・センターが日本に向けて抗議声明を発表したのは。「マルコポーロ」事件と今回の事件の2回だけではない。昨年の夏、2013年7月29日に飛び出した、麻生太郎副総理による「ナチスの手口を学んだらどうか」という発言に対して抗議を行ったことは、記憶に新しい。日本国憲法を改正するにあたり、正当な手続きによるのではなく、ナチスが当時最も民主的と言われていたワイマール憲法を機能停止に追い込んだやり方を麻生副総理が「学ぼう」と発言したことに抗議を行ったのである。

 この抗議声明の中でサイモン・ヴィーゼンタール・センターは、「麻生副総理は、ナチス・ドイツが権力の座についたことが、間もなくして世界をどん底に陥れ、人類を第二次世界大戦の計り知れない恐怖に巻き込んだことを忘れたのか」と厳しく追及している。なお、麻生副総理はこの抗議声明に対し、8月2日の会見で「(謝罪するつもりは)ありません」と突っぱねた。

2013/08/02 麻生太郎財務大臣兼金融担当大臣 定例会見

“What ‘techniques’ from the Nazis’ governance are worth learning—how to stealthily cripple democracy?” asked Rabbi Abraham Cooper, associate dean of the Simon Wiesenthal Center, a leading Human Rights NGO, adding, “Has Vice Prime Minister Aso forgotten that Nazi Germany’s ascendancy to power quickly brought the world to the abyss and engulfed humanity in the untold horrors of World War II?

 「ナチス統治の『手口』、すなわち、いかに秘密裏に民主主義を損なわせるかという点の、どこに学ぶべき価値があるのか」と、有数の人権NGOであるサイモン・ヴィーゼンタール・センターの副代表であるエイブラハム・クーパー師は問いかけた。「麻生副総理は、ナチス・ドイツが権力の座についたことが、間もなくして世界をどん底に陥れ、人類を第二次世界大戦の計り知れない恐怖に巻き込んだことを忘れたのか」とも加えた。

Simon Wiesenthal Center to Japanese Vice Prime Minister: Which ‘Techniques’ of the Nazis Can We ‘Learn From’”?”

 サイモン・ヴィーゼンタール・センターが日本国内の「事件」に対して抗議声明を発表したのは、1995年の「マルコポーロ事件」、昨年の麻生副総理による「ナチスの手口」発言、そして今回の「アンネの日記」事件の3回だけである。後述するように、日本は先進国の中では「例外的」に反ユダヤ主義の陰謀論が言論界で野放しに横行している国だが、それでも、同センターがこの約20年の間に抗議声明を出したのは3回だけ、ということは、今回の事件とその背景をなす日本の政治状況にいかに深刻な危機感を抱いているかという証左でもある。

 思想家で神戸女学院大学名誉教授の内田樹氏は、今回のサイモン・ヴィーゼンタール・センターの抗議について、ツイッター上で以下のように連投し、右傾化する安倍政権に対する国際世論の反発の「徴候」であると分析している。



◆田母神氏の支援者が「ヒトラー生誕パーティー」を呼びかけ◆

 私は、昨日(2月21日)の深夜、この「アンネの日記」破棄事件の報を受けて、このようにツイートした。



 私のツイートに対して、日本の歴史修正主義と、ネオナチのような歴史修正主義がどこで結びつくのか、という疑問がいくつか寄せられた。

 それに対する回答のひとつとして、先日の東京都知事選で61万票を獲得した田母神俊雄氏の支援者から、驚くべき計画が浮上していることを指摘しておこう。

 田母神氏の支援者で、政治団体「維新政党・新風」の元副代表・瀬戸弘幸氏が、今年4月、「アドルフ・ヒトラー生誕125周年記念パーティ」の開催を計画しているというのである。

ヒトラー生誕パーティー呼びかけ 田母神氏の支援者(しんぶん赤旗 2月14日)

 「維新政党・新風」代表の鈴木信行氏は、都知事選の際、田母神氏の宣伝カーの上にのぼり、横に並んで田母神氏を応援する演説を行う人物である。一方的に田母神氏を応援している「勝手連」の一人ではない。田母神氏も瀬戸氏や鈴木氏の応援を受け入れているのである。その瀬戸氏が、自身のブログで自らの思想をこう述べる。

 「ヒトラーを賛美して何が悪いのか分かりません。ユダヤ人600万人の大虐殺ですか、そんなことを今でも信じている人がいるのでしょうか? あれは嘘です。南京大虐殺、慰安婦強制連行と同じ歴史の捏造です」。

せと弘幸BLOG「日本よ何処へ」

 田母神氏を支持する瀬戸氏のブログにおいて、日本における歴史修正主義とネオナチの歴史修正主義が、同じレベルで並列されている。

 麻生副総理の「ナチス」発言から、今回の「アンネの日記」事件、瀬戸氏の「ヒトラー生誕パーティー」に至るまで、現在の日本では、地続きの現象であると見なされてもいたしかたないであろう。

 憲法解釈を閣議で変更可能だとして立憲主義を踏みにじる総理、「ナチスの手口に学んだらどうか」と言う副総理という権力のトップとNHKという公共放送のトップ、そしてそれを支える草の根 に歴史修正主義者とレイシズムがはびこる国、日本。そのような国が、はたして国際社会での信頼を得ることができるだろうか。

◆ヘイトデモと重なりあう「アンネの日記事件」◆

 IWJでは、今回の「アンネの日記」事件について、大阪大学助教で、ユダヤ学研究者である赤尾光春氏に話をうかがった。

 第二次世界大戦中にナチスの迫害から隠れて暮らしてきたユダヤ人家族の様子が描かれている『アンネの日記』は、第二次世界大戦後にユダヤ人によって建設された国家イスラエルでは、どのように扱われているのだろうか。「イスラエルで5年暮らしましたが、アンネという名前を一度も耳にしたことはありません。ひとつ言えるのは、アンネのような存在は無数にいたので、アンネだけが特別にあつかわれていないことです」と赤尾氏は述べる。

 それに対して、『アンネの日記』が特別な位置を占めているのは、日本とドイツだ。「ドイツで『アンネの日記』が相当なベストセラーになっていることを考えれば、ユダヤ社会以上に、非ユダヤの方が、”アンネ熱”が高い」。

 日本人の”アンネ熱”は、2014年1月22日にイスラエルのハアレツ紙でも紹介され、その理由が分析されている。

Why are the Japanese so fascinated with Anne Frank?

 オランダのアムステルダムにあるアンネが住んでいた家には、数多くの日本人が訪れているという。ハアレツ紙は、日本人がアンネに共感する理由について、「第二次世界大戦中の日本の犠牲に関心が向いていて、ナチス・ドイツの同盟として闘った日本軍によって行われた残虐行為の責任に目を向けていない」と冷静に分析している。

 日本人の多くが、戦争の「加害者」としてではなく、「被害者」としての側面に目を向けがちで、そのため「被害者」としてのアンネに感情移入するのだという。厳しい評価である。

 赤尾氏は、こうした海外からの批判を受けてこう語る。

 「日本人の歴史観は被害者意識が強い。アンネに感情移入はしても、ヘイトデモには無頓着な人もいる。レイシズムやナチズムの実態をしっかり学べば、マイノリティ差別が起きた場合に、同じような構造上の問題として認識することができますが、そういう認識が生まれにくい」。

◆一線を超えてしまった反ユダヤ的論調◆

 赤尾氏は、今回の件が陰謀論の蔓延が背景にあるのではないかと指摘する。「陰謀論にのっかってやっているのは間違いないと思われます。アンネ・フランクの話はでっちあげだという歪んだ正義意識からです」。
 
 こうした「正義意識」はどのような事情で生じてきたのか。赤尾氏は、ユダヤ問題に関する日本の言論や出版事情が特殊であることを指摘する。「反ユダヤ的な本が無制限に流通している国は先進国では日本くらいです。欧米ではあり得ないような反ユダヤ本が出回って、そこそこ売れています」。

 そのことを踏まえ、今回の『アンネの日記』の本が破られた件について、「すでに氾濫している反ユダヤ的な論調で、今回は一線を超えてしまった感じではないでしょうか」と赤尾氏は分析した。

 日本の外交と安全保障は、同盟国である米国に全面的に依存しているが、その米国から日本の右傾化に対して、ひっきりなしにアラームが鳴らされていることを、日本の政府も、日本の社会も聞き流し続けてきた。「アンネの日記」破損事件が明らかになる直前、17日にはワシントンポスト紙が、20日にはニューヨークタイムズ紙が、立て続けに釘を刺す論説を掲載した。

以下略


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2014年2月15日 京都大学原子炉実験所の小出裕章氏の講演 1 / 3

http://youtu.be/41Np_TSVNbM

2014年2月15日 京都大学原子炉実験所の小出裕章氏の講演 2 / 3

http://youtu.be/6pTPqD3b3Nw

2014年2月15日 京都大学原子炉実験所の小出裕章氏の講演 3 / 3

http://youtu.be/BSXu8JFnPJQ

参考
あさこはうす
http://ameblo.jp/m08068469/entry-11682737468.html


AFTER311 第2回脱原発弘前映画祭