突然だけど、全肯定やってると、
最近瀬野は母方のじいちゃんのことが頭をよぎるようになった。
瀬野の母方のじいちゃんは瀬野が生まれる前に亡くなった。
だから瀬野はこのじいちゃんとは会話をしたことがない。
瀬野のじいちゃんっていうのはどういう人かと言うと、
ゲキレツな資産家。
大学出の初任給がひと月5万くらいだった時代に、
ひと月50万くらいを豪遊に使ってたとかいう話を聞いた。
でもその豪遊も「人付き合いの一環」だったんだそうな。
……お金持ちの人付き合いってハンパないｗｗｗ
じいちゃんが亡くなったとき、瀬野母の一族は相続で猛烈に大揉めをした。
親戚を相手に裁判をしただとか、
遺産の一部はどさくさにまぎれて他人にガメられたということも聞いた。
瀬野母は相続のゴタゴタで文字通り着の身着のまま夜逃げをしたんだと
しょっちゅう瀬野にぼやく。
瀬野にとっては、全部「聞いた話」でしかないけどね。
* * * * *
瀬野母と瀬野叔父によると、じいちゃんは人柄が超グレイトだったそうだ。
どのくらいグレイトかというと、
「器がでかすぎてどういう人物だか良くわからない」
そんな人だったそうだ。
なにしろ何でもありで、人を判断することがなかったという。
判断基準という物がないんだという
（一代で資産をとても増やした人だそうだから
判断をしなかったということは絶対あり得ないんだけど、
たぶんその基準が母と叔父には理解できなかったってことだと思う
なんせじいちゃんが亡くなった時は、母も叔父も若かったわけだし）。
人のことは全部受け入れる人だったから、誰からもすごい好かれたという。
「清濁併せ呑む」とは正にじいちゃんの事だったと瀬野母と瀬野叔父は言う。
じいちゃんが資産家だったって事だけはやたら聞くけど、
じいちゃんがどんな人物だったのか、瀬野にはまるでわからない。
で、瀬野は数年前から「じいちゃんと話してみたかったな」と思うようになった。
じいちゃんって人としてどんな人だったのか、知りたくなったわけだ。
瀬野母と瀬野叔父によると「話してみたって、多分わかんないよ」という。
だから瀬野母と瀬野叔父に尋ねても全くらちがあかん。
実の子供たちですら理解できないとか、マジでどんな人だか想像できんｗｗｗ
それでも瀬野母はじいちゃんのことがとても好きだって言う。
過去のどんな人間とも再会できるとしたら、絶対じいちゃんにもう一度会いたいって
瀬野母は言う。
じいちゃんとはそういう人だったそうだ。
うん。さっぱりわからん！！
しかしね、全肯定を心がけてから、じいちゃんの「判断基準がない」
「何でも受け入れる」「清濁併せ呑む」っていうのがどういうことか、
ちょこっとだけ、ちょこっとだけだけどなんかわかってきた。
それで、瀬野は今、改めてじいちゃんと話してみたかったなぁと思う。
じいちゃんはどんなことをどれだけ肯定できた人だったんだろう。
全肯定やってたら、瀬野もじいちゃんみたいになるんだろうか。
瀬野はどこまでじいちゃんくらい世界を肯定できるようになれるだろう。
だけどわざわざじいちゃんを目指すことはしないよ。
瀬野は瀬野であればいいんだからさ。
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ちなみに、じいちゃんが一代で増やしたというゲキレツな資産、
じいちゃんが亡くなった後、今ではほとんどが人手に渡った。
瀬野はね、じいちゃんの資産がなくなっていく様子を見ながら育ってきた。
富豪になっても、大資産もってても、
収入がでかくても保持するための支出もすごいんだな。
無くなる時はあっという間。
切り回せなくなったら保っていられないのだ。
株だのなんだので一攫千金だとか莫大な不労所得をめざしてる人が多いね。
まあ、一夜にして大金持ちとか、「大富豪に俺はなる！」って夢は悪くない。
でもその前に、その富に釣り合うビッグな人間になってた方が良くね？ と
思ってしまう瀬野なのだ。
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