【遠山響子の異世界探訪】22【完結】 | るこノ巣

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隙間の創作集団、ルナティカ商會のブログでございます。

皆様今晩は、榊真琴です。ひとまずPCも落ち着いてくれているようで、何とか遣り過ごしております。
またしても遅くなりましたが、続きと参ります。というか、最終回ですね今作の。やっとここまできたか。

では、短いですが本編どうぞ。

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「あ、遠山さん」
 うん、あとちょっとで玄関口だったのにね。呼びかけられるとは。
 振り返ってみれば、なんだ三年の図書委員、広瀬さんだった。男子だけど、先輩だからね。そういうところは、一応ちゃんと弁えておかなきゃ。
「広瀬先輩、来てらしたんですね。すみません、ずっと上の階にいたから」
 一応、こっちでもふつうの会話はできるわよ。でなきゃさすがに、学校生活が成り立たないからね。
 それにこの人は、差し当たって面と向かってケンカ売ってくるタイプではないし。
「うん、一時間前くらいからだけどね。僕はずっと下にいたし、うっかり読書に熱中しちゃって……はははっ」
 言って、広瀬さんは照れくさそうに笑う。そう、この図書館の中で、一年ちょっとのつきあいだけど、この人根っからの読書家なんでしょうね。仕事してても、気がついたら読書になってるんだよ。気持ちは、分からなくもないけどな。
 低めの身長にパッツン前髪、細いけど黒縁の眼鏡の下には温厚な瞳。いかにも、読書好きな引っ込み思案男子……つーのは、あたしのイメージ(偏見とも言うか)。だがしかし、割とその通り。
「そろそろ閉めるけど、大丈夫かな。今日は僕がカギ当番だし」
 それで声かけてきたのか。
 あくまでも学校の図書館だからね、テスト期間中でもない限り熱心に利用する人はいないから、図書委員のカギ当番が帰る時点で施錠しても何ら問題がないんだ、ここ。
「あ、はい。大丈夫です、あたしももう帰るところだったんで」
 はて、あたしは今、どんな顔してんだろう。急にそんなことが気になったわ。でも、だからって訊く訳にはいかないし、嫌だし……うん? 気になってること自体、不思議だわね。今までは、気にすらならなかったのに。
──案外、視点が変わっただけかも知れないしね
 それは、さっき山嵜君が言ったこと……いや、こだわるのはまだ早いよね。もう少し、もう少し、考えさせてよ。

「まだ暑いな」
 広瀬さんが、疲れたような声でぼやいた。
 外に出てはみたものの、嫌な感じの暑さはまだ、そこらじゅうにこびりついてる。
 日はもうほとんど落ちて、西の空が紅く燃えてるけど、できれば気温も一緒に持っていってほしいわ。
「それじゃ、遠山さんも気をつけて帰ってね」
「あ、はい。お疲れ様でした」
 手を振る、奇特な先輩にあたしは、何とか頑張って愛想笑いを浮かべた。
「……そういや、あっちはどういう気候だったのかしら」
 四季があるのかどうか含めて、謎だわ。快適な気候だったことは、間違いないけど。
 うん、次に行った時に訊いてみよう。次の楽しみに取っておこう。
 だからあたしは、やけに硬いアスファルトを踏みしめて家路を目指した。
 
                      異世界では魔法が使えます  了

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あー……終わっちゃった……
終わってしまえば、早いものだなあ……ちょっと淋しいかも。でも、ちゃんと完結までお届け出来たのは良かったです。

当面、長編小説の予定はないですね(゚_゚i) というか、書く時間がないというか( ̄Д ̄;;
どこかで、短編でも書けたら良いなあとか思いつつ、ここまでお付き合い頂きましてありがとうございます。
しばらくは小説記事は出来ないっぽいです(・_・;)