【遠山響子の異世界探訪】21 | るこノ巣

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隙間の創作集団、ルナティカ商會のブログでございます。

皆様今晩は、相変わらず予定が大変なことになって自分で自分の首を絞めております榊真琴です。そろそろ限度というものを考えないと身を滅ぼしそう(をいΣ\( ̄ー ̄;)

ともあれ、続きと参りましょう。久し振りすぎてもう、ね……すみません(((( ;°Д°))))

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8.日常ってのは戻ってくるためにあるのかも知れない



「……あ……」
 あらまあ、見慣れた図書館。
 戻ってこられたみたい。何で座ってるのかは分かんないけど、多分ちゃんと、あの日魔法陣が現れたところだ。
「よっ……と……ん?」
 立ち上がってみたところで、どこも痛くない。大丈夫。ただ……
 何だろう、床がやけに、硬い気がする。図書館の廊下って、こんなに硬かったっけ?
「……もしかして、夢だったりする?」
 不意にそんなこと思っちゃって、前髪に手を当てる。
 ……ああ、よかった。ちゃんとヘアピンついてる。夢じゃないわね。って、本気でほっとしてるわ、あたし。初めてなんじゃないかしら、こんな気分。
「とりあえず、帰ろ」
 疲れた感じは、しっかりと体に残ってる。実際のところこっちで、どれくらいの時間が経過してるのかはまだ確認してないけど、疲労感ってものは関係なく残るみたい。
 大して汚れてない掃除用具を持って、時計のある一階カウンターを目指す。

「うぅわ……すげえ……」
 うん、本当にビックリだ。
 ただいまの時刻は、午後五時ちょっと前。ホームルーム終わってここに来たのが四時くらいだったから、本当にいい具合に帳尻が合ってる。
「あれ? どうしたの? トーコ」
「ん?」
 振り返ると、男子生徒のような男の子が一人、こっちを見て首をかしげてる。二十年位前のここの生徒で、病死したけど本好きが高じてこの図書館に住みついちゃった山嵜君だ。
「何かすごい疲れてるみたいだけど、何かあった?」
「え……そんな、疲れてるように見える?」
 幽霊に心配されるなんて、ちょっと鏡を見てみたいな……
「うん、体育祭にでも出た後みたい。あ、可愛いヘアピンしてる」
 分かりやすい喩えをありがとう。つか、そういう表現は何か、照れるな。
 どうしよう、山嵜君になら話してもいいかな。別にあっちでも、口止めはされてないし。まだ、帰っても不自然なくらい遅い時間でもないし。

「……いいなあ、ボクも生きてたら、行ってみたいなあ」
 説明を終えたあたしに、山嵜君はうらやましい光線でも出しそうな視線をよこす。分かりやすい、ものすっごく分かりやすい顔だ。
「連れてってみたいけど、あたし一人限定の方法らしいからね。変に無理矢理連れてって山嵜君が消滅でもしたら嫌だわ」
「うん、それはボクも嫌だ」
 ちょっとからかうように言ってみたけど、山嵜君は本気で嫌そうに眉を寄せた。
 と思ったら、でもさ、とまた不思議そうな表情になった。
「珍しいね、トーコが人間をそんなに心配したり気づかったりするのって。世界が違うと、やっぱり人間も違うのかな」
「あー……」
 それは、あたし自身も疑問だったことだ。
 どうしてレイン達には、あんなに積極的に接していけたのかしら。あたし自身は、いつもと変わりなくやってた気もするんだけど。
「どう、なのかなあ……世界が違うからなのか、人間が違うのか……分かんないわ」
 今のところは、そう答えるしかなかった。
 これから、また遊びに行けば、何度かあっちで過ごせば、違う答えが出てくるかもしれない。それとも、答えなんかないか。
「まあ、急には分かんなくてもしょうがないか。異世界だし。案外、視点が変わっただけかも知れないしね」
「え?」
 妙に楽しそうに、山嵜君は笑った。
 待って、視点が変わっただけって、それじゃ……
「でも、今日は疲れてるみたいだし、早く帰った方がいいだろうね。今日はこれについて語り合いたかったけど、また後日に取っておくよ」
 言いながら、山嵜君が指さすのは『オタク学入門』……渋いとこ突いてくるな。
 そして、あたしが次の言葉を見つけ出せないまま、本好き幽霊は笑ってどこかに消えていった。
「……視点が、変わった……ねえ……」
 むう、何も言えなかったのは何か悔しい。でも、何だろう。その考え方は……
 いや、止そう。今はそんなこと、まだ考えないでいよう。結論を出すのは、まだ先でいいでしょう。
「帰るか……」
 そう、今日はもう、帰ろう。彼の言うように、体育祭の日みたいに疲れてる気がするわ。

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ちょっと短いのですが、キリが悪くなるので此処で止めます。
そして今のうちにお知らせ。次が最終回です。長い連載だったなあ……という語りは次にとっておくことにして、ではまた原稿に戻ります('A`)