【遠山響子の異世界探訪】19 | るこノ巣

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隙間の創作集団、ルナティカ商會のブログでございます。

皆様今晩は、榊真琴です。Twitterにも出しましたが、当サークル発行の胡散臭い観光ガイド本がやっとこさ、ダウンロード販売始めました……遅えよ準備orz 

とはいえ、今回はあくまでも小説の続きなので宣伝はこの程度です。
では本編どうぞ。

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「それでは、ご説明致します」
 そう切り出したのはピートさんではなく、あのエジプト神話……いや、魔法士四人組の一人。鰐頭だ。他の三人も、並んで立ってる。ピートさんは、ドアの前に立ってるけどな。
 場所も、最初に見た部屋だ。今は、レインと一緒にソファに座ってる。
「この世界から元の世界に戻るには、二つの方法がございます。片方はトーコ様には無縁の方法でございますが、仕組みをご理解頂く上で必要になるかと思いますので、参考までに両方ともご説明致します」
 小難しい喋り方だなあ。
 そういや、結局この人達の名前、まだ聞いてないなあ。次に来た時には、聞いてみようかしら。
「まず一つ目は、来た時と同じ方法でございます」
 おや、猫頭にバトンタッチ。
「帰還の魔法陣に立って頂ければ、我我が帰還魔法によって元の世界にお送り致します。到着場所は、元の世界で魔法陣が光った場所です。ですが、この方法はあくまでもお送りするだけ、となりますので、こちらで経過した時間も元の世界の換算時間で経過しています。更に、戻られた時点でこちらの世界のことも全て、記憶から消えてしまいます」
「そして、こちらでも、トーコ様に関する記憶が全て、消えます。これは、仮にこちらで永遠の愛を誓った者同士でも同じことです」
 更に犬頭が続ける。
「一見すると無情とも非情とも思えますが、互いの世界の為には、どうしても必要なことなのです」
 何でバトンタッチする必要があるのか知らないけど、更に鳥頭がそう続けて、ぺこりと頭を下げた。
「あー……何となく分かるかな。お互いの世界のことを変に知ったままだと、探ろうとかなんか、よからぬ考えも起きかねない……って、そんな感じかしら」
 格好良く言うと、機密保持ってやつかしら。
「ご明察にございます」
 鳥頭よ、恥ずかしいからそんな深いお辞儀はやめてくれ。
「では、もう一つの方法について申し上げます。これは、先に要約した方法で申し上げますと、カギを用意してドアの開け閉めをする方法、でございます」
 鳥頭は、更にそんな言葉を続けた。
「カギで、ドアの開け閉め? 帰るっていう概念じゃないのね?」
 何となく思って訊いてみただけなのに、四人ともからお辞儀された。やめろっての、こっぱずかしいから。
「さすがトーコ様、その通りでございます。この方法は、単純にこちらとそちらの世界をつなぐ、ということになりますので、時間も状況も問題のないよう修正されますし、記憶も双方で維持されます。こちらの方法でも、元の世界では最後に立っていらしたところに辿りつくこととなります」
「まず、ドアにはこちらで得た物品を使用することとなります」
 鰐頭の後に続いて言うと、犬頭が後ろを向いた。そこにあるテーブルで何やらガチャガチャ音が立ってるわね。よく見れば、箱の中を探ってるみたい。
 ほどなく向き直った犬頭の両手には、アクセサリーっぽいものがいくつかある。
「トーコ様は学生でいらっしゃると伺いました。あまり大振りなものではご勉学の邪魔になるかと思いまして、小さくていつも持っていられるだろうものをご用意致しました。お好きなものをお選びくださいませ」
 そう言って、わざわざあたしの目の前まで犬頭が持ってきてくれた。にしても、しつこいけどホントに逐一言葉づかいがカタいなあ。
「へえ。ヘアピンとか細めのブレスレットとか……あ、ピアスは無理だ穴空けてないから」
「むう、もっと可愛らしいデザインのものは用意できなかったのか? じゃから私に選ばせろと言うたのに」
 隣からのぞき込んできたレインが、ものすっごい不満そうに犬頭をにらみつけて言った。
「も、申し訳ございません陛下。ですが、その、トーコ様はご勉学中とのことですので……」
「いいのよ、レイン。あたしだって、あんまり派手なものはつけないタイプだしさ」
 あんまりにも犬頭が不憫(ふびん)だったので、助け船。いやホント、叱られた犬そのまんまなくらい、ショボン顔になってるからさ。猫派だけど犬も好きよ、あたし。
「じゃあ、これにするわ」
 さっさと選ぼう。このバッテンになってるヘアピンは何か好みだ。銀色も好きだし、シンプルだし。
「むうう……ならば次に来てくれる時にまで、もっと可愛らしいアクセサリーを用意しておくぞ」
「何でそうなる?」
 えっらい真剣な顔で言われた。参ったな……
「では次に、カギをお選び頂きます」
 説明を継いだのは猫頭、犬頭は、残ったアクセサリー持ったまま元の位置に戻った。
 つーことは、カギってのはものじゃないか、あるいは場所か……
「カギとは、言葉です。どんな言葉かはお好きに決めて頂いて結構です。トーコ様ご自身が忘れずにいられる言葉をお選びください。それを、この後行う術式によってカギと定めます」
「それ以降は、そのヘアピンをドアとして身につけ、お言葉をカギとして宣言することで、いつでもお好きな時に二つの世界を行き来することができるようになります」
 説明をしめたのは、鰐頭。いや、だからバトンタッチの必要性はどこに……まあ、いいか。それより、カギになる言葉を考えなきゃ。
「忘れずにいられる、言葉、か……ふつうの単語の方がいいの? それとも、こっちで魔法として使うような言葉の方がいいの?」
「どういったものでも問題はございません。どこの誰がそれを知ろうとも、カギとして使えるのはトーコ様だけですので」
 鰐頭が、即答してくれた。
 なるほど……だったら、なるべく短くて分かりやすい単語がいいな。うーん……
「術式の用意を致しますので、決まったら胸の内にとどめておいてくださいませ」
 猫頭がそう言うと、四人は静静と動き出した。
 眺めててもしょうがないね、考えよう。さっきの答え方だと、口には出さない方がいいのかしらね。こっちとあっちをつなぐ、カギになる言葉……つなぐ……つなぐ、ねえ……

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小難しい部分なので、短めに止めておきました。
終わりが近いと、本当に物悲しいなあ……