【遠山響子の異世界探訪】18 | るこノ巣

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隙間の創作集団、ルナティカ商會のブログでございます。

皆様今晩は、榊真琴です。
先日本棚で発生した雪崩は、何とか本日収束致しました。棚に入れきれず積み上げていた本がとうとう雪崩を起こし、積んでいた場所が悪かったのか一部棚の本まで巻き込んでの惨事(゚_゚i) 
夢はジャック・スケリントン氏(@ナイトメア・ビフォア・クリスマス)の私室のような本棚を手にすることですorz

前置き長すぎますね。本編どうぞ(;^_^A

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7.また逢う日まで、じゃ重すぎるから


「何か、久しぶりで変な感じね」
 袖を通した制服が、違和感になる。糊が利きすぎ、というのもあるかもしんないけど。
 この国に滞在していたのはほんの数日なのに(昏倒してた期間はカウントしないで、記憶ないんだから)、不思議なものね。
「まあ、数日とはいえ、着慣れた服と離れていると違和感が出てくるものじゃろうなあ」
 うんうんとうなずきながら言うレインだけど、何か淋しそう。しょうがないか。昨日もあれからほとんど寝たしなあ、あたし。お陰で今日は元気だけど。
「できれば、もう少し滞在してほしかったんじゃがのう」
「そうしたいのは、山山なんだけどね。あんまり長い間空けてると、あっちで問題起きてるかもしれないし」
 異世界ものによくある話、異世界に行ってる間元の世界ではほとんど時間が経ってなくて、元の世界に戻ったら割と帳尻が合うようになってる。
 なんだけど、現実にそれがあり得るのかは分かんない。だから一度、帰ることにした。絶対に、ちゃんと帳尻が合ってるって保証は、ないものね。確かめなきゃ分かんないわ。
「……むう、それはまあ、確かにのう……」
 ものすごく残念そうに、ちょっと口を尖らせてまでレインは、不満そうに返す。
「いいじゃない、またこっちに戻ってこられる方法があるんでしょ?」
 そうらしい。ピートさんが教えてくれたんだが、ある方法をとることで、あたしはまたこっちの世界に来られるんだそうだ。それも、来たい時に。
「そうか、そうであったな。トーコとは、もっと沢山お話したり遊んだりしたいからの」
 忘れてたのか、そのこと……ともあれ、レインもようやく、笑顔が戻った。
「確かにね。ずいぶんとバタバタしてたからなあ、こっち来てから。まともなお喋りなんて、最初のお茶の時くらいしかできてないし」
 思わず苦笑い。ほとんど、自分から首つっこんだようなもんだしなあ。
 ううん、そういや上履き履いてたんだった。これも何か、違和感だなあ。こっちで借りてた靴と違って、底が実に薄っぺらいわ。
「あたしも、またレインに会いたいし。だから、状況が落ち着いたらまた、早めに来るよ」
 また会いたい、なんて、どういう風の吹き回しなのか。いや、こっちの世界の人達は、あたしを変なヤツとは見ないからね。だから、そう思えるんだろう。

「では、始めますよー」
 朗らかにそう言ったのは、映写屋さん。
 何というか、デカい三脚の上に機械が乗ってて、映す人は撮影時に大きめの布をかぶる、つー説明の辺り、昭和初期辺りの写真撮影を思わせるわね。本体の脇に、フォトスタジオ辺りで見かけるようなでっかいストロボ(?)が置いてあるし。
「うむ、いつでも構わぬぞ」
 ソファで、またしても隣に座るレインが嬉しそうに笑みを浮かべる……だから、何で腕を……ああ、うん、もういいか。
 いつの間にか、映写屋さんを呼んでいたようで、帰る前に一枚撮ってほしいというレインの頼みにあたしが折れた次第だ。本当は写真撮られるの大嫌いなんだけど、まあ異世界だから普段見ることもないし、巫山戯て写り込んでくるヤツらもいないだろうからね。
 あ、一応言っとくけど、魂取られるとか思ってる訳じゃないからね。写真写りが異常に悪いから嫌なだけよ。
「あ、あのさレイン……」
「ん? 何じゃ? トーコ」
 それでも何か落ち着かなくて、思わず問いかけちゃったわ。
「あ、あたしの顔、引きつったりしてる?」
「ふむ、引きつるというほどではないがの。緊張せずとも、いつも通りにしておれば大丈夫じゃよ」
 即答してくれてありがとう。緊張、で片付く範囲だったか。
「はい、お二方ともお願いしまーす」
 言って、映写屋さんはシャッターボタンみたいなのを掴んだ。
 やべ、本気で緊張する……
 ばしゃっ、と派手な音がして、思いっきりあのでかいストロボ的なものが光った。
 あたしの言い訳じゃないけど、昔の人は写真撮られると魂抜かれると思ってた、て話があるわよね。確かに、こんだけ眩しいとビックリしすぎてそう思っちゃうのも無理ないかも。いや、自分の姿が印画紙にある、その状況が原因かも知れないけど。
 とか思ってたら、また光った。
「はい、お疲れ様ですー」
 映写屋さんの、終了を告げる朗らかな声。ストロボの残像で彼の顔の辺りが見えにくくなってるけどな。
「できあがった写し絵は、次に来た時には見せられるからの」
「あー、うん……楽しみにしとくわ」
 自分がどんな顔してたのかは分かんないけど、楽しみに、てのは建前だなあ。
「ふふふ。心配せずとも、ちゃんと額装して部屋に飾っておくからの」
「それはやめて頼むから」

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はい、本日はここまでです。
終わりが近づいてくると、淋しいものですねえ(しみじみ