【遠山響子の異世界探訪】6 | るこノ巣

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隙間の創作集団、ルナティカ商會のブログでございます。

皆様今晩は、榊真琴です。
先日写真を撮りに出掛けたにもかかわらず編集する余裕がなくて放置まっしぐら&ぼんやりとPCの調子が怪しいという状況ですが、私は元気です(・ω・)/

そんな訳で、続きどうぞ~ 相変わらず、分かる人にしか分からないようなネタ仕込んでますがσ(^_^;)

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「さーいらっしゃいいらっしゃい、安いよー新鮮だよー」
「焼きたてのもちだぜー! たった今焼き上がったばかりだー」
「お花ありますよー、綺麗なお花ー」
「びえええええええええええええええええええん!」 
 おお、賑やかな街だ。いや、最後のは転んだ子供の泣き声だけど。
 お、お母さんらしき人、大丈夫でしょう自分で立ちなさい、って。うんうん、素敵な教育だ。
「いいわね、こういう賑わい」
 さっきまでの風景も素敵だけど、この街も素敵よ、ホント。
 城下町、ではあるけど雰囲気的には村に近い感じかな。RPGでも、山の中にあるような感じの。
 並んでる店や家も、北欧の田舎みたいな、何かそんな感じ。上手く言えないもどかしいっ。通りは、決して広くはないけど、あったかい感じがする。来たこともないのに、懐かしい気さえしてくるわ。
 通りを歩く人、何か食べてる人、友達同士かな喋ってる人。ああいや、どうにも人じゃない姿も色色あるわね。今さらだから、もう驚きやしないわ。
「そうじゃろう、ここはいつも賑やかじゃ。ここに来ると、根拠はないけど元気をもらえる気がするんじゃ」
 レインの気持ちは、何となくだけど分かる気がするわ。あたしの世界じゃ、ただただ喧しいだけだからなあ。それを喧噪って、いうんだっけ。それこそ偏見かもしれないけど、どうあれ不快指数がうなぎ登りよ。
「こっちに出ると、もっと賑やかじゃぞ」
「こっち? うわっ……」
 手を引かれるまま、レインと通りを歩いて行くと、ふっと視界が広がった。お陰で、あたしは人生何度目だろうかいい意味で、息を呑んだ。
「すごい……」
 まず目に飛び込んできたのは、大きな噴水。派手なデザインじゃないけど、広場かな、の中心に堂堂と水を噴き上げさせてて、目を見張るわ。日の光を浴びて、キラキラ輝いてるのがまたいい。
 周りは、これも職人技なのかな、美しいレリーフの彫られた堀で囲まれた池があって、それを遠巻きに取り囲むように沢山の店が出てる。フランスの方だったかな、マルシェっていう朝市みたい。
 ごちゃごちゃしてるけど、不快感はない。寧ろ、わくわくしてくる。
 うあ、どこからかしら食欲をそそる香ばしい匂いが。
 今さら気づいたけど、広場(仮)は石畳なのね。お洒落だ、すっげーお洒落だ。
「好きだわ……こういう雰囲気……素敵……」
 うん、もうため息を出さずにはいられないわ。あっちじゃ、ゲームとかアニメの中くらいでしか、お目にかかれない気がする。
「旅人がここを訪れると、誰もがそう言ってくれるそうじゃ。この国が誇る街じゃよ」
 レインが、本当に誇らしげに言った。まるで自分のことをホメられてるかと言わんばかりの、誇らしげな顔。
 素敵だなあ、自分以外のことをホメられてストレートに喜べる人って。
「レインって、本当にこの国が好きなのね」
「へっ?」
 あら、そう思ったから言ってみただけなんだけど、レインがすっげー顔真っ赤になった。
「そ、そりゃあ当然じゃて。仮にも国王じゃからな、国を愛さなくてはのう」
「あはは、照れちゃって。おわっ」
「さー買い食いするぞー」
 からかいすぎたか、腕引っ張られた。つか、買い食いってあんた……
「おや陛下、いらっしゃい」
「こっちも見てってくださいね陛下ー」
「揚げたてですよ陛下、一ついかがですかい?」
 あらま、レインってば人気者。色んな店から声がかかってるわ。キヘルさんが、自然と後ろに回ったわ。気遣いも万全なのか。
「うーむ、何から食べようかな。トーコは、どんなものを食べたい?」
「どんなものって……えーっとぉ……」
 まさかこっちに振られるとは思ってなかったからなあ、ぼけーっと眺めてたわ。つか、どんなものをって言われても、知らないんだよね
「こちらの方はどなたなんですか? 陛下」
「ずいぶんと可愛らしいお連れさんですなあ」
 店屋ではない、おっちゃんやおばちゃんも話しかけてきた。って、おい誰が可愛いっていうんだよ……どーなってんの、この国の美的感覚は。
「うむ、友人のトーコじゃ。遠国から、はるばる遊びに来てくれたのじゃ」
 おお、説明上手いなレイン。みんな納得してる。まあ、ある意味遠国だけどさ。
「可愛らしいわ。陛下も可愛らしいけど、トーコさんもホントに可愛らしい」
「おい誰か映写屋を呼んできてくれよ、お二人の写し絵は絵になるぜー」
 つくづく思うんだが、この世界の審美眼が分からん……その言い方だと、写真のことかな。撮ったからって霊は倒せないだろうけど……いや、違うっつの。
「そーかそーか、楽しんでいってな、トーコさん」 
「ええ、ありがとう」
 もう充分楽しんでるから、とは言えなかった。ちょっとそれじゃ、失礼かもだし。
「映写屋は後でこちらから赴くよ。しかる後には、皆にも配ってくれるよう手配するからの。待っていてくれ」
 何だって? レイン、なんつーことを口走ってんの?
『おおおおおおっ!』
「さすが陛下ー!」
「レイン陛下ばんざーい!」
 くぉら、お前ら何盛り上がってんだ。
「じゃー陛下、トーコさんも、できたての【もっちーの】ですぜ」
 おっちゃんの一人が、そう言って持たせてくれたのは、どう見てもサンドウィッチ。ホットサンドかな、チーズとか鶏肉っぽい具が入ってるわ。いい匂いね。じゃなくて!
「あ、ありがと。すごく美味しそうだわ」
 慌ててお礼を言った。その、どこか誇らしげな笑顔は、とても格好いいと思う。
「あいや、すまんの。いくらじゃったかな……」
「いやいや、俺っちからの気持ちでさあ、受け取っておくんなせえ」
 レインがそう言ってショルダーバッグを開けようとしたけど、おっちゃんは笑ってそれを止めた。おっちゃん、江戸っ子?
「すまんのう。うまそうなもっちーの、ありがたくいただくぞ」
「あいよっ」
 改めてレインがお礼を言うと、おっちゃんはちょっと照れくさそうに笑って、小走りに去っていった。
「あーゆー心意気、格好いいわねえ……美味い」
 折角なので頂いた。ホントに美味い。
「そうじゃのう、私も見習わねばならぬのう……おお、美味しい。チョモ肉はチロンと合わせると絶品じゃな」
 はふはふ言いながら頬張る、あたしとレイン。チョモ肉……すげー名前だ。チーズはチロンっていうのか。って、これ、覚えた方がいいのかな……

「風が気持ちいいのう」
「まったくだわ」 
 広場からは離れて、路地の一角で一休み。通り抜ける風が、涼しくてまあ心地いいこと。
 もっちーのでお腹もいい感じに膨れたあとは、探索じゃ、と手を引かれるままにぶらぶらと歩いて回る。
「で、いつの間にかお供って言ってた二人が見当たらないんだけど」
「うむ、初めからあやつらを撒くつもりで歩き回ったからの」
「堂堂と言うことなのか?」
 なんてこった、SP撒いちゃったよこの女王。すげードヤ顔してる。
「構わぬよ、あやつらが一緒じゃと息苦しゅうてかなわぬ。それに、」
「いっ?」
 何で抱きつかれた?
「二人きりの方が楽しいのじゃ」
「あ、あー……確かに、始終怖い顔の人らに見られてるのは、あたしも嫌だなあ」
 なーんか、レインの笑顔が怪しい気がするんだけどなあ……こういう笑顔、何かのゲームで見たことあるぞ。何だったっけ? とりあえず、解放してくれ。
「そうじゃろう? うふふ」
 よっぽど言いそうになったけど、その前にレイン自ら解放してくれた。
「では、そろそろ広場に戻ろうかの」
「そうね」
 また、手を引かれる……もしかしてレイン、同世代女子の友達がいないとか? 城の中は、出会った範囲全員ずっと年上みたいだし。まあ、あたしにそんな推測されちゃおしまいだろうけど。


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はい、ひとまず此処までです。
素敵、を索敵、と読み間違えている自分が悲しいorz
では、また続きをお待ちくださいませ。