終末論争 4~勲章と指環 24 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「では、お茶が沸きましたので私達はこれで…。お料理が出来ましたらお呼びくださいませ。」

エマは料理長代理?に挨拶し、手際よくティーポットと人数分のカップをトレーに乗せて厨房を出ようとした。
私もティースプーン
とお皿をトレーに乗せ、エマの指示に従おうとしたら…。

「待ちな…。
ミランダ!確かまだ予備のアレを持ってたな?
貸してやれ。」

男は鍋の火加減に注意しながら、私達を見ようとせず、ミランダと呼ばれる調理婦に命令した。
女は最初は何のことかわからない素振りだったが、漸く意味を理解したらしく、厨房の隅に置かれた袋から何かを取り出した。

「…貴女方もどうやら理由ありのようですね。
私の扮装道具です。栗毛の私より、貴女の艶やかな黒髪の方が、より本当の貴女を隠してくれるでしょう。」

取り出したのは金髪のウィッグ(参考画像)
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だった。
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「あくまで考古学者としての俺の見解を言わせて貰えば、『洪水説』は、発掘される物がどれも保存状態が良いことに説得力を与える。
『旧世界』の品々が野晒しで風化したり、獣に喰われたりしてない証拠だ。
これは洪水は水だけでなく、同時に土も運んでくるからだ。
海の底の、その更に下の土に埋もれた旧世界の品々。
比較的緩やかに土が堆積し、なおかつ比較的速やかに水が引いた場所ほど良質の物が発掘されている。
これは地質学的にも遥か昔に大規模な洪水があった証拠には十分だ。
カイザー丞相のような『世界戦争説』ならば、発掘される品々はどれもこれも焼け焦げた物ばかりになりそうだと思うのですが。」

…嗚呼、ロイ!私のロイ!何と雄々しい弁論だ!
あの無作法で下世話なカイザー丞相を見事に言い負かしてるではないか!
嗚呼、私は今まで剣の世界にのみ生き、力の強さこそが男らしさと思ってきたが、頭の良さや論述の巧みさ、信念の強さも男らしさなのだな…。金髪のかつらを被ってメイド服を着て、ララァという仮の名を付けてまでここに来て良かった…。
その中でも、故トレビル隊長の遺志を汲んで『洪水説』を主張してくれて嬉しい。
私とエマとロイは『ノアの方舟』の秘密
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を託され者だ。
世界の秘密を握る鍵は、やはり私達で守らなければ…。
特にカイザー丞相等は、我先に方舟を欲しがる人間に違いない。