勲章と指環 19 | 最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

最後の哲学者~SPA-kの不毛なる挑戦

このブログは、私SPA-kが傾倒するギリシャ哲学によって、人生観と歴史観を独断で斬って行く哲学日誌です。
あなたの今日が価値ある一日でありますように

「おはよう、リディア!
清々しい朝だな!」

グレゴリウス司教様に遅れるというほどもなく、ロイは私に朝の挨拶をしてきた。
ご機嫌な雰囲気が全身から漂っている。
アルフォンソ=パウエル先生だか教授に会えることが楽しみで仕方ないのだろう。
有力な採掘場の情報を得た時や、興味深いプログラム(オーケストラで販売されてる演目を解説した書籍。パンフレットとは若干異なる)を見つけた時と同じ目の輝き方をしている…。
本来なら私が求婚されたことや、昨日の観劇の一時が頭から飛んでることに腹立たしさを憶えるはずなのだが…正直、ロイの少年のままの眼差しが嫌いではない。
そうだ、今日、ロイが敬愛するパウエル先生と会談するのなら、私はパウエル先生の舞台を見に行こうと、ロイを後日誘えばいいのだ。
主よ、これは好機を逃すな、というお告げなのですね。
エマ、忠告をありがとう。

「どうしたリディア?
元気ねえな?
あぁ、そうか、俺だけアルフォンソ=パウエル教授に会えるから妬んでるな?」

「わ、私はお前ほど考古学に興味はない!
だが…妬みというなら…ハイネ殿下の御前会議に列席出来ない悔しさはあるさ…。
お前は内務大臣で、私は騎士団長。
まだ将軍じゃないからな。」

「安心しろ、リディア。海軍提督や機甲師団長から不満が出ようと、俺はお前を将軍に推薦するさ。」

…何故だろう。
ハイネ殿下が私を将軍に任命しないことには苛立ちを憶えたというのに、ロイに将軍への推薦をされると一抹の不安を憶えてしまう…。
私はロイにだけは騎士でも将軍でもなく、一人の女性で居たいと思ってるのだろうか?
****
先に到着したのは「待ち人」ではなく、「招かれざる客」だった。
馬車から威風堂々としたカイザー丞相が降りてきた。
次に降りてきたのは、昨日の従神ロキを演じた男装の小柄女性だったが、今日は男装をしていない!
髪こそ肩にかからない程度だが、きつくコルセットで締めたであろう細いウエストや、胸元が開き、裾が大きく広がったドレスは、一流の貴婦人そのものだった。

(これが本当に昨日、従神ロキとして道化を演じ、女の私から見てもこんなに美しい女性に日頃は男装させているなんて…丞相はやはり性的倒錯者か?)

と圧倒される私をよそに、女は司教とロイに挨拶し、

「本日はお招きに預かり光栄です、司教様、内務大臣様。
はじめまして、歴史学者のアルフォンソ=パウエル、本名はアンナです。」