「裏取引を看破する悪魔」の安藤真利子さんは、このロケが茶番劇であることを見抜いた。
「一般人のカップルコンテスト」と言いながら、優勝は芸能事務所所属の高校生カップルに決まっているという出来レースだ。
元々、騒ぎを起こすのが私達の参加理由だから、それは構わないのだが、問題はその女の子だ。
私がコンテスト披露でした歌を聞くなり、彼女は
「優くんが歌ってくれた歌じゃん?」
と呟いた。
私だってこの曲は近藤くんに教えて貰った曲だ。
間違いない。彼女こそ、近藤くんが聞き込み調査に行った「ネイチャーハウス」でバイトしてて、現在失踪中の女の子だ。
彼女を保護すれば、近藤くんの疑いは晴れる!
チャンスだわ…。
亜由美と呼ばれる子に話しかけようとしたが、彼女のパフォーマンスの時間となり、タイミングを逃した。
亜由美という女の子は、流行りのアイドルの歌を歌ったが、私や真利子さんほどのインパクトを観客に与えることは出来なかった。
それだけで「騒ぎ」の意味は十分なのだが。
「第二次審査は彼氏さんのパフォーマンスです!」
司会の女性がわざとらしく煽り、亜由美って子のパートナーの男の子が舞台に立った。
敬という彼は、流行りのお笑い芸人の真似をしたが、会場は冷えていた。
私はこのタイミングで彼女に話しかけ…。
「私、OLって言ったけど、本当は四谷署の刑事で、近藤優の先輩なの。
なんで貴女にこんな事言うかわかる?」
彼女はやっぱり、という表情を見せ、私から逃げようとしたが…。
「嫌!私は事務所の寮でちゃんと寝泊まりしてるんだから!警察に補導される憶えないわよ!
ママの元には帰らないから!」
近藤くんから聞いてた女の子とは全然イメージが違ったけど、「子供達の面倒を見ながら、真面目に勉強する女の子」
というのも間違いないではないのだろう。
「じゅあ、未成年の貴女に対して、事務所は親の承諾を得てないんでしょう?
貴女、このコンテストで優勝したら、どんな『代償』を払わされるか解ってる?」
「な…。警察が私の夢まで一々口出ししないでくれませんか?
同じ警察官でも優くんとは全然違うんですね?」
「真利ちゃ~ん。この子に『現実』を教えてあげて。」
「やれやれ、サタン様、天界の姉上様の方が、同族の私達よりアンドロマリウスを上手く使えてるじゃあありませんか?」
「全くだ…。つまり能代という男が、余やお前とは遠く、姉上に近い証拠だ」続