聖バーバラ女学院。
町のはずれの北条連山頂上に構えるミッション系女子高等学校。
全寮制で男子禁制のその「要塞」は、教師や職員、教会関係者も全て女性である。
厳しい規則の中での生活は生徒からの不満も多いが、高い偏差値と可愛い制服、そして何よりも「聖バーバラ女学院卒」という評判欲しさに年々倍率は上がっている。
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移動の車中
「ねえ、おじさん。何で真理亜のお願い聞いて車に乗せてくれたの~?
学校にバレたらおじさんの会社もヤバいんじゃない?」
町を目指す私達に協力してくれたのは、食材を運ぶ出入り業者のおじさん。
私と行動を共にすることになった五月と弥生は自転車で山を下りるつもりだったみたいだけど…。
「おいおい、俺はまだギリギリ30代だぜ。お兄さんと呼んでほしいなぁ。
それと俺が協力した理由は…そうだなぁ、照れるから真理亜ちゃんから話してくれよ。」
「別に~。ただ世の中はギブアンドテイクってだけよ♪
乗せてもらう代わりにこっちも言うこと聞いてあげただけよ。」
「まっ、まさか真理亜駄目よ!えっちぃ交換条件とか!手が後ろに回る様なことに私は協力出来ないわよ!」
「大丈夫よ五月。願いを叶えるのは私じゃなくて、そこは大人同士の話し合いよ。
私は仲を取り持っただ~け♪」
「ねえ、手が後ろに回るってどういう意味?」
『弥生は黙ってて!』
「播磨屋のお兄さんが熱を上げてるのは、私達よりももっと大人の女性よ。
例えば…警備主任の 後藤梨恵ちゃんとか~?」
「ええ!お兄さんゴリエなんか…ってごめんなさい!」
「ハハハ!いいってことよ!お嬢ちゃんくらいの年はイケメン・美女を追っかけて当然さ。
まっ、俺くらいの年になれば、正門受け付けを通る度に彼女の『お疲れさまでした』の笑顔にどれだけ癒されることか…。」
「あ~、でもわかる~。見た目じゃなく、雰囲気で好きになるってありね。」
「でもゴリエちゃん、さっき真理亜に蹴りとば…。」
『弥生は黙ってて!』
「で、真理亜は何で院長から説教されてたの?
今度は何やったの?」
「何もやってないわよ!『文化祭のアイデアある?』って聞かれたから、キリスト教系の学校に相応しく、『懺悔室パブ』はどうですか?って言っただけよ。個室が醸し出す背徳的空間が…。」
「やめてよ真理亜!去年は『聖歌隊キャバクラ』を内緒でやって凄く怒られたでしょ!」
「う~ん儲かるんだけどな~」