ネタバレを大いにしているのでその辺りご注意ください。
満を持してこの作品を語る日が来たようです。
実は今回渡英してから見るのは二回目。
いつか日本上演されないかと夢見ている…
Matilda
です。
まあ、かなり厳しいでしょうね。
お話が日本ではあまり有名では無い上(英語圏とヨーロッパでは知らない人はいないくらい人気です)、15年前にアメリカで映画化されたのに日本未公開、さらに歌詞が言葉遊びが多すぎて翻訳が困難を極めるからです。
初めての方に解説しますと、これはチャーリーとチョコレート工場で知られるイギリスの童話作家ロアルド・ダール原作の「マチルダは小さな大天才(邦題)」を元にした舞台で、自身も俳優であるティム・ミンチンとイギリスの名門劇団ロイヤル・シェイクスピアカンパニーがコラボして手がけました。
今は、イギリス、アメリカそしてオーストラリアで上演中です。オリビエ賞やトニー賞などあらゆる大きな賞を取りまくり、値引きを一切しない人気作品です。でも、今回は学割で観てきました。大学生万歳!
原作は童話を元にしているし、ファミリー向けのポップな作品なのは間違い無いんですが…テーマは結構重いです。
ズバリ、児童虐待と抑制です。
ざっとあらすじを述べると…
下流階級かつ人として色んな面が残念過ぎる両親の間に突如生まれた天才児マチルダは、誰からも理解されず愛情を一切受けず5歳まで育ちました。でもマチルダが小学校に上がった時、唯一担任のジェニファー・ハニー先生が才能を見抜き伸ばしてあげようと奮闘します。しかしハニー先生の叔母で小学校の独裁者でもあるトランチブル校長にハニー先生もマチルダも散々虐められ、マチルダは抑制されていた天才的頭脳を超能力に変え、クラスメートと一緒にトランチブル校長と戦う…
みたいな。だいぶ端折りましたがこんな感じです。
舞台そのものは五回以上観てきているのですが、実はこの舞台が大人向けなんじゃないかと気がついたのはつい最近でして。
最近見たマチルダ役のリジーちゃんがものすごいダークな役作りをしていて、子供らしさを一切見せないんですよ。5歳の子供の設定なのに。
カーテンコールまで一切笑顔を見せない、泣きもしない、淡々と両親に虐げられた分復讐をするマチルダでした。
それに対し、リジーちゃんのマチルダは目が常に座っていてやり取りの節々で両親への不満と怒りが垣間見えます。だから、リジー版のマチルダを見てようやくマチルダの置かれた状況が現実世界で起きたら結構酷いことなのがわかったんです。
両親は基本的に…
マチルダが生まれた日は人生最悪の日、
マチルダの存在は基本無視、
読書しているマチルダをバカにし無理やりくだらないテレビ番組を見せようとする、
マチルダが望まれなかった子であるのを強調するかのように兄のマイケルを依怙贔屓(ちなみに兄はただの凡人)、
あだ名は臭い虫けらとか本の芋虫とか散々な呼び方、
娘であることを認めない(父親は男の子が欲しかったから)、
マチルダが図書館で借りてきた本をビリビリに破く、
これだけ挙げたら、マチルダの扱いがいかに酷いかわかりますね。推測ですが、マチルダとのレベルの違いに両親もついていけなかったんでしょう。でも、それが虐待していい理由にはならないのでマチルダは持ち前の頭脳でやられた分は手痛く両親に仕返しをするのです。
さらに学校も子供達にとっては恐ろしいところ。
校訓は、
「子どもはウジ虫」
というとんでもない場所で、悪さをした子どもはもれなくトランチブル校長の手でチョーキーという壁と床一面にトゲが付いている狭い独房に閉じ込められます。
ハニー先生はマチルダが5歳にして小学校最高学年以上の実力を持っていることにいち早く気がつき、トランチブル校長にマチルダを飛び級させたいと申し出ます。
ハニー先生はマチルダが5歳にして小学校最高学年以上の実力を持っていることにいち早く気がつき、トランチブル校長にマチルダを飛び級させたいと申し出ます。
しかし、トランチブル校長は一切認めません。
それがまた、トランチブル校長の怒りを買い、彼女の口から人としてありえない罵詈雑言を吐かれます。
それが皮肉にも、マチルダの中でぎゅうぎゅうに抑えつけていた能力を開放するきっかけになるのでした。自分らしく能力を発揮させてもらえない不満が溜まりに溜まり頂点に達し、まさかの超能力に変換されたのです。
校長の弟夫婦はハニー先生の両親にあたり、サーカスの軽業師と縄抜け師でしたが、彼らに借金を背負わせその返済のために当時ハニー先生を身ごもっていた奥さんに無理やり世界一危険な空中ブランコショーをさせます。案の定ショーは失敗して妻は体じゅうの骨を折り、ハニー先生を産みそのまま亡くなります。
父親はまだ小さかったハニー先生がトランチブル校長に虐待されているのを知りながらも突然蒸発し、後から自殺したと知らせがハニー先生に届いたのでした(実際にはトランチブル校長が殺害したとされています)。
で、トランチブル校長は法的な保護者になり、大人になったハニー先生に養育にかかった費用を全て請求し、今度はハニー先生をまた借金責めにします。だからハニー先生は先生という職に就きながらもただ働きをさせられているのです。
マチルダは劇中で、自分の頭の中に流れる物語を図書館の司書のフェルプスさんに語って聞かせるのですが、偶然にもそれこそがハニー先生の半生そのものだったのです。
ハニー先生の境遇を知ったマチルダはトランチブル校長からハニー先生を救おうと決意し、超能力でチョークを目で動かしハニー先生の死んだ父親になりすまし、ついにトランチブル校長を学校から追い出すことに成功するのです。
そして、ハニー先生もまたマチルダが両親から酷い扱いを受けているのを知り、マチルダを引き取って育てることを決意します。
ロシアンマフィアを騙して汚い商売をしていた両親は、詐欺がばれイギリスを追われることになり、マチルダがハニー先生に引き取られるのを快諾してスペインに逃げたのでした。
…ね、子ども向けにサラッとライトに表現されているから事の大きさを感じていなかったのですが、文字にするとかなり重いでしょう?
こういう裏テーマを知っていると、ポップなこの舞台に深みが出るので更に物語の深さに入り込めるのです。
この作品のもう一つの魅力は、子役たちの活躍でしょう。厳しいオーディションを突破したエリートがこの舞台に出演しています。
ビリーにもたくさん子どもは出てきますが、マチルダの場合、マチルダ本人もさることながら他のクラスメイト達も結構キャラが立っています。
例えば、子ども達の反逆心が爆発する人気のナンバーRevoluting Childrenでリードボーカルをとるブルースは、ぽっちゃり君が演じることが多いんです。なぜかと言うとトランチブル校長のケーキを盗み食いした罰に、巨大なチョコレートケーキを食べさせられる設定だから。でも踊るときは俊敏だしなかなかの歌唱力。
自称マチルダの親友役のラベンダーも、2幕冒頭で活躍したりトランチブルの飲み水にあるモノを入れたりして結構大胆です。
トランチブル校長に三つ編みをやめさせられようとするアマンダはなんと、天井から落ちてきます。
そして、主役マチルダの見せ場は何と言っても物語を聞かせる時の超絶な長セリフ。時にはドラマチックに、時には朗々と語ります。表現力が半端ないです。あと、天才児なので5歳にして2の段の九九を九九を通り越して延々と答えることができます。ロシア語をドストエフスキーの小説から独学で学びマフィアと会話することもできます。週に何冊も大人向けの難しい本も読破できます。
そんな彼らが悪い大人をギャフンと言わせる痛快なミュージカルMatilda。きっと観たら元気をもらえずはずです。
英語難易度★★★★☆
子役の凄さ★★★★★∞
童心に戻れる度★★★★★
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