諭吉の上に諭吉を造る。 | ★コピーライターが思わず ! となったコピー。

諭吉の上に諭吉を造る。

天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず。
なんて言葉がある。
人間の自由、平等、権利の尊さについて書かれた
「学問のすゝめ」の書き出し。
これを書いたのは、福沢諭吉。幕末日本を生き抜き、
慶応義塾大学を作った人である。
 
しかし、現代社会では時々1万円の隠語として
使われることが多い。「今月最後の諭吉くんが~」、

「諭吉3枚!」とか。天国の諭吉くんもトホホな気分だろう。
ところで現実社会では、残念ながら人間は不平等である。

 
人がだめなら、せめてお金は平等であってほしいと
いうことなのか、いまではすっかり1万円札の
顔として“天は1万円の上に1万円を造らず、
1万円の下に1万円を造らず”を死守しようと
しているように思えるのだが、そんな諭吉の
お金の価値だけは平等なんだ!を揺るがすコピーが…
 
 
★今回の!なコピー。
 
 
1万円より価値ある1万円。
 
 
プリペイドカードの<QUOカード >の広告。

ビジュアルなしのコピー一発で勝負します、というような
ポスターだったので、最初宝くじの広告かと思ったが、
1万円という妙にリアルな数字に???となった。
 
このキャッチコピーの下に、小さくこう書かれてある。
 
とは言っても180円ですが、
10,180円分使えるQUOカード1万円券新登場。

 
お分かりだと思うが、10,180円分の1万円券
1万円より価値ある~」と表現しているのだ。
180円お得です」とか「コーヒー1杯分お得です」という
言い方もあるが、それではありがたみが薄いゆえに

インパクトが弱いので、強気に言っているわけだ。
 
意外性をつく表現は、コピーライティングで
よく使われる方法。意外性があればあるほど
コピーのインパクトは大きいのだが、このコピー、
強気にいったものの、わずか180円のお得では
言い過ぎかと弱腰になったのか、
「とは言っても180円ですが、」と小さくフォロー
しているところが奥ゆかしい。
その実直さに笑ってしまう。東スポの見出しのようだ。
 
とはいえ、この商品の価値を分かりやすくずばりと
表現しているので、読んだ人は!となるかと思う。
願わくば、180円ぽっちではなく、1万円の

消費税分500円くらいの付加価値があればいいのに。
 
世の中キャッシュレス化が進んでいるが、
お札や硬貨の方がありがたく感じてしまう、
大切に使おうと思ってしまうのだ。
お札や硬貨の手触りや匂い、存在感。
やっぱり実物のお金、現ナマっていいなーと思う。

そんなわたくしのもとには、諭吉くんが少ないのは
なぜでせうか?
 
やっぱり人の世は不平等である。
さびしがりやの諭吉くん、なぜ出て行く
そんなにわたくしのお財布は居心地わるい?