自殺のサバイバー | いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

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2013年12月、最愛の妻をうつ病による自死で亡くしました。
結婚して1年1ヶ月、あまりにも短すぎました。
体に障害があったけど、懸命に生きていた妻。
妻の事を忘れない為、初めてブログを書きます。

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みなさま、こんばんは。

 

今日は、先日読んだ自死遺族関連の本をご紹介します。

 

 

 

 

 

死別してから思うのは、自死遺族の回復に関する本がほとんどない事です。

 

 

まず多くの自死遺族の方は、PTSDのような症状に陥ると思います。

 

僕も当日の事は詳細まではっきり思い出して辛くなる事があります。

最初の命日の時は、それがフラッシュバックのように蘇り、仕事中に震えが来て、たまらず外に出ました。

 

そして後追いの危険性もあります。

僕は死別後、妻の感情を考えすぎて、同じような事(首にタオルをまいて絞める)もしました。

 

それらは自死遺族のなかではよく起こる感情だという、通常の死別の回復本には書かれていないような事も、この本には全て書かれています。

 

この本のなかでは、サバイバーと言う言葉が使われています。

 

サバイバーとは、自殺で遺された人達のことで、違った意味での自殺の犠牲者という意味です。

 

今回は本の中にある、「あるサバイバーの一日」という文章を紹介します。

 

ちょっと長いですが、自死遺族の方は、とても共感できる内容だと思います。

 

 

『18歳の息子ロビーが縊死してから3週間がたち、ビルは普段の日課の多くを再開するようになりました。

ビルはまだ胸がつぶれるほど悲しい時と感情が麻痺する時の間を揺れ動いていて、日々の活動をまるでロボットのようにこなしていました。

 

ある一日を例にとってみると、まず朝5時に目が覚めます。そして今日は屋根裏部屋で首を吊っているロビーの夢を見ていなかったと気付き、ほっとして枕に頭を沈めます。

ビルは汗びっしょりで悪夢から目覚めることがよくありました。

夢の中では、ビルは早くロビーの元へ行こうと焦っています。その体を床に下ろし、ロープを首から外せば生き返らせることができると思っているのです。

しかし、この恐ろしい夢の中ではいつも体が素早く動きません。脚が鉛のように重くてほとんど動かず、ロビーを救いに行けないのが辛くて仕方がないのです。そんな悪夢を見て目覚めた日は、夢の中の光景が何度もよみがえり、最悪の一日になりました。

 

そういうわけで、この月曜の朝のビルは少なくとも感情が麻痺した状態で、ふらふらとキッチンへ行き朝食をとるために食卓につきました。

ただし、麻痺状態の日でも朝はつらく、ビルにとっては一日で最も無気力な時間でした。

月曜の朝はなおさらで、これから一週間の仕事が始まるかと思うと非常に重荷に感じられます。

ロビーが亡くなる前は全く違っていました。ビルは仕事柄、多くの顧客と会いますが、以前は月曜になると一週間の面会の予定をわくわくしながら思い浮かべたものです。友人でもある顧客と会う楽しみのお蔭で、仕事量の多さも苦にはなりませんでした。

 

ビルにはもう一人息子がいます。16歳のケンです。ケンはビルと一緒に食卓に着き、わずかな量の朝食をとりはじめました。以前は若者らしく旺盛だった食欲も、今は見る影もありません。

ロビーが亡くなってからケンは沈んでいましたが、それは特に食事の時にはっきり見て撮れました。大皿からほんの少しをとりわけ、それすらも食べるより残す方が多いくらいでした。

 

この朝、ケンには特に食べたくもなさそうなトーストを食べるのを中断し、うちの車を使っていいかと父親に尋ねました。その晩、4人の友達を載せてロックコンサートに行きたかったのです。

ビルはいらだたしげに答えました。「平日の夜にコンサートに行こうと思うなんて非常識だな。ただでさえこの、、、何週間か、学校の勉強が遅れているって言うのに。」

ケンは「うれしい返事をありがとう。父さん。俺が何とかして死体置き場に住んでいるような気分から抜け出そうとしているのに。勉強の事まで持ち出してくるとはね。」とつっけんどんに言い返しました。

そしてドアを乱暴に閉めて出て行きました。

 

ビルはそのまま座っていましたが、もう食欲はありません。

ケンの使った「死体置き場」という言葉が心に突き刺さったのです。死にまつわるさまざまな言葉を聞くと、その度に鞭で打たれたような気分になりました。

ビルは座ったまま、食べるのを忘れて物思いにふけりました。平日の夜にコンサートへ行くことでケンを叱りつけた理由のひとつは、車を貸してほしいと頼みに答えたくなかったです。

ビルはどんなことであれ、決定を下すことを避けていました。ケンに関わる決定は特にそうです。

ロビーが亡くなってから、ビルの頭は疑念で埋め尽くされていました。自分と妻はロビーに対して何をどうしていればよかったのか。そしてさまざまな状況にどう対処するべきだったのか。

 

ビルは、ロビーにとって何が最善かを決める時、間違いを犯したことがあったのではないかと気にしていました。ロビーの自殺につながったかもしれない決定は一体どれだったのだろう。そう自問すると同時に、ロビーを激高させた口論や決定を取り消せればどんなにいいかと思いました。

「私がもっと物わかりのいい親だったら、こんなことにはならなかったんじゃないか。」

しかし、そう考えたと思うと、すぐに逆の理由で自分を責めることもありました。

「私がもっと厳しくして、もっと厳格なルールを決めておいたら、ロビーももっと自分が守られているように感じ、こんなことはしなかっただろう。」

要するに、今はケンに関する事柄を決定するのにとても臆病になっていたのです。その決定がケンの安全や幸せに関わるかもしれない場合はなおさらでした。

ロビーがすべきこととして自分が決定したことのうち、謝りだったかもしれない全ての決定について、ビルは自分をひどく責めさいないでいました。そのせいで、ケンに関する決定能力にも自信をなくしていたのです。

ここでまた別の感情がビルの意識に入り込み、怒りを覚えさせました。

「ロビーが逝ってからまだ3週間だってのに、なぜあいつはコンサートへ行く気になれたんだ?兄貴の死をもう悲しんでいないのか?あいつには感情ってものがないんだろうか?なぜ何事もなかったかのように遊びまわれるんだ。」

 

一方のケンは、学校へ歩いて行く道すがら、はらわたが煮えくり返る思いでした。父親が悲しみに浸っていることは気づいていましたが、それによって傷つき、見捨てられたように感じました。

「俺のどこがいけないんだ?父さんは俺がまだ生きていてよかったとは思わないのか?ほんの数分でも暗い気分から抜け出し、俺がいて今もうれしいとは伝えられないのか?もし俺も自殺したら、父さんにはこたえるんだろうか?俺がまだ生きてたんだと思いださせるには、そこまでしなきゃならないのか。」

 

ビルも顧客の元に向かいました。

 

顧客のトムとはかなり親しくなっていました。

ビルが入っていくと、トムは大声で「やあ」と言い、いつものように「元気にしてたかい?家族は変わりない?」と尋ねてきました。

人付き合いにおいて、こうした質問は友好的な気持ちを表しているのであり、特に深い意味はありません。

しかしこの日のビルは、トムの質問に絶句し、顔から血の気が引くのを感じました。

みぞおちに強烈な一撃を食らったように、これ以上はないほどの痛みをおぼえました。ビルが黙り込んだためほかの社員もこちらを向き、ビルは突如として沢山の瞳が自分をいぶかしげに見つめるのを肌で感じました。

ビルは気持ちを落ち着けるために深く息を吸い、考えをまとめて何か言おうと努めました。

そして震える声で「実はとても悲しい事があったんだよ、トム。息子が亡くなったんだ。」と答えました。

水を打ったような静けさが部屋を包む中、トムはビルに柔らかい口調で語りかけました。

「なんてことだ、ビル。一体なぜ?」

 

こう言う事もあるだろうと、心の奥そこでは分かっていました。自殺を知らない人と会い、その話題に触れざるを得ない場面に出くわすこともきっとあるだろう。

でもビルは自分の苦しみと戦うことに没頭していたため、そうした状況への対処法を考えるのを先延ばしにしていました。今その事態がいきなり目の前で起きたのです。

 

まるで海で泳いでいた人が突然大波に飲み込まれて水中に沈み、何とか浮き上がろうともがいているようでした。

トムへの答えを頭の中で組み立てていると、羞恥心や悲しみ、怒り、混乱が一斉に襲ってきました。

やがて口をついて出たのは「ロビーは自殺したんだ。」という言葉でした。

 

今度はトムが絶句する番でした。社員の一人は文字通り口をあんぐりと開けました。もう一人は急に視線をそらし、書類を机の上でわざとらしくさばき始めました。

 

ようやく多少落ち着きを取り戻したトムが再びビルに向かって「それは大変だったな、サリーは大丈夫?」と尋ねるとビルは「まあ、何とかやってるよ」といった決まり文句をどうにかひねり出しました。

 

トムは少し話題をずらし、二年前に義理の甥が19歳で交通事故死した話をしはじめました。その時のショックが大きかった事、そして遺族が今も死を受け入れるのに苦労している事をビルに語ったのです。

二人はその後も、突然の死が与えるショックについて同情の言葉を交わし、若者の死がいかにつらいかを話し合いましたが、その間ほかの社員は仕事に集中していました。ビルはトム以外の社員とはそれほど親しくありませんでしたが、みんなが自分を避けている事を感じ取りました。

明らかに同情的でビルを慰めようとしていたトムでさえ、ロビーが自ら命を絶ったことには一切触れません。

ビルは弱々しい笑顔を無理に作り、こう切り出しました。

「しかたない、頑張って生きて行くしかないんだ、、、。ところで、新しいシステムへの切り替えはうまくいってる?」

トムがほっとしたのがわかりました。二人は急に新しいワークステーションについてあれこれ熱心に話し始めました。

 

自分の会社の戻る車内で、ビルはロビーの自殺を伝えた後の、凍り付いたような気まずい静けさを思い出さずにはいられませんでした。トムの心にはどんな思いが浮かんだのかを想像を始めましたが、はっきりとは意識しないまま、その疑問について考えるのをやめました。

すると突然、怒りがこみ上げてきました。理由はわかりません。数週間たってこの日の記憶が蘇ってきた時、ようやくビルはある考えが一瞬脳裏をよぎったことに気づきました。

トムが彼の妻にロビーの自殺について話し、彼女がこう考えている場面を想像したのです。

 

「ビルもサリーも良い人そうに見えたのに。あの家族にそんなひどい問題があったなんて嘘みたい。人は見かけじゃわからないものね。」

これはあまりにもとげのある言葉で、ビルの家族にひどい恥辱を与えるものでした。

だからビルは最初にこの考えが浮かんだ時、直視できなかったのです。

もちろんこれはビルの想像の産物ですが、サバイバー自身の罪悪感と、自殺に付きまとう実際の恥辱とが、どのような相互作用を起こすのかを物語っています。

 

トムが帰宅後に妻と語り合う場面を考えたために、会話の内容を考えたくない思いもあって、初めて彼女と会った時の事が思いだされました。

それは会社のクリスマスパーティーでした。あの時の状況が目に浮かんできます。

そう言えば会社のカフェテリアの真ん中に大きなクリスマスツリーが置いてあったっけ。

その瞬間、ビルは冷や汗が噴き出してくるのを感じました。

家族で迎える次のクリスマスを思い描こうとしたのです。

ロビーのいないクリスマスを。

 

突然、その考えはかき消されました。前を走っていた車が止まった事に気づいたのです。

急ブレーキを踏んだ結果、どうにか追突寸前で止まりましたが、事故を起こしかけたことと、つらい光景が頭に浮かび始めた事で、心臓がどきどきしていました。

シートに身を沈めると、強い疲労感が襲ってきました。

書類仕事を片付けに会社に寄るつもりでしたが、予定を変更してこのまま帰宅することにしました。』

 

今回この内容を読んで、自分でも当てはまると思った方は、今回ご紹介した本を読むことをお勧めします。

 

多くのサバイバー達がどうやって回復していったのかが書かれています。

 

僕も共感することばかりでした。

それだけで、少し心が安心するんですよね。

 

 

自死遺族本の良書は、やはり海外本が多いと思います。

 

特に今、孤独と苦しみの中にいる、死別1年目の方達には強くお勧めします。

 

色々な立場(親、子、配偶者、きょうだい、婚約者など)のアドバイスが書かれており、心の置場が分からなくなっている方には参考になると思います。

 

 

 

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