58.最後の5日間(五日目) | いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

2013年12月、最愛の妻をうつ病による自死で亡くしました。
結婚して1年1ヶ月、あまりにも短すぎました。
体に障害があったけど、懸命に生きていた妻。
妻の事を忘れない為、初めてブログを書きます。

その日の朝はとても寒かった。


私は起き出して、いつものようにコーンフレークとミルクだけの簡単な朝食を摂った。



食事を終え洗面台で歯を磨いていると、妻が起きてきた。



(おっ!今日はお姫様だっこも無しで、自分で起きて来たね。すごいね!)

心の中でこう思った。



声を掛けたかったけど、歯を磨いていたので掛けれなかった。




妻はそのままソファーまで一人で歩いて行った。




私は出勤の準備で慌ただしかった。




携帯や財布をポケットに入れ、かばんを持って出かける準備をする。




リビングにいる妻は、ソファーに座ってブランケットを自分の身体に掛けていた。



妻に朝日を浴びさせるために、私はリビングのカーテンを一気に開けた。




寒い冬の、少し朝焼けの赤い光が残る朝日が、ちょうど部屋一杯に降り注ぐ。




朝日の赤い光に、ソファーに座る妻の身体が照らされた。





この時の妻の姿は、一生忘れないだろう。




朝日を浴びて、妻の顔は明るく照らされていた。



何故だかいつもより少し神々しく、愛おしく思えた。





妻と目が合って、多分数秒の事だと思う。



彼女は私のほうを、ずっと静かに見つめていた。


数秒の事だけど、とても長い時間に思えた。




一言「今日は可愛いね」と声を掛けたかった。



でも言葉に出さなかった。




「じゃあ、行ってくるね。」


私がそう言うと、妻は私を見つめたまま、本当に小さな声で

「いってらっしゃい」


と言った。





それが私が妻と交わした、最後の言葉だった。




私はそのまま玄関のドアを開け、仕事に出かけた。



最後まで朝日を浴びる健康法を続けていた。




妻の最後の姿は、私は一生忘れない。


最後までうつと闘っていた姿だった。







にほんブログ村
にほんブログ村