妻と一緒に心療内科に行ってから、一か月とちょっと過ぎた。
ずっと妻を見てきたが、調子の悪い時とそうでもない時が、何となくわかるようになってきた。
調子が「まし」な時は、まだテレビを見ていても時々喋っていられる。
調子が悪い時は、じっと膝を抱えて小刻みに震えている。
3日程前に心療内科から処方される薬が変わった。
今までの薬は、その病院でも妻を含め3人しか処方されていなかったらしい。
一般的に処方されている薬に変わったと言っていた。
薬が変わる時は、副作用で落ち込むことがあるらしい。
妻は今までないほど激しく落ち込んでいた。
私が仕事を終えて帰ってきたら、リビングにじっと座って、毛布にくるまって小刻みに震えていた。
一緒に食事をしていても、一言も喋らず、眉間にしわをよせて溜息ばかりついていた。
家事を全て終えて、私がテレビを見てくつろいでいると妻が話しかけてきた。
「こないだの食事会は楽しかったの?」
3日前に私の実家の食事会に行った時の事を聞かれた。
母から兄弟夫婦がみんな集まって食事会をするから、来るかどうか聞かれていた。
妻の事があるので最初は断ったが、よく考えたら母の誕生日だという事を思い出した。
妻は実家で泊り、私だけ行ってきた。
「うん、楽しかったよ。一番下の弟の子が来ててね。ちょうど一歳になったけど、すごい人懐っこいよ。
全然泣かなくて、顔見るとニコニコ笑ってくれるんだ。可愛いかったよ。」
子供の話題を聞いたからだろうか。
妻はしばらく考え込んだ顔をして、口を開いた。
「yoshiちゃん。ずっと聞くのが怖かったんだけど、私が子供いらないって言ったらどうする?」
この言葉は本当にショックだった。
ずっと妻との子供がほしいと思ってきた。
だから反射的に言葉に出てしまった。
二度と取り消せない言葉を、、、。
「挑戦してダメならしょうがないけど、挑戦もしないなら、その時はどうなるか分からない」
「分からないって、どういう意味?」
妻が聞いた。
しまった!俺何を言ってんだ。
こんな落ち込んだ状態なのに。元気づけなきゃいけないのに、、、。
「もちろん今すぐって意味じゃないよ。今の状態じゃ無理なのはわかってるよ。
でも何年か後には挑戦はしてみたい。
でも今は治る事だけを考えてほしい。」
そういって言葉を濁した。
「もう(子供の事は)大丈夫だよ、って言ってほしかったな、、、。」
妻は悲しそうな顔でそう言った。
消え入りそうな小さな声だったけど、私にははっきり聞こえた。
この言葉は一生忘れない。
そして私が発した言葉も、、。
この私が言った言葉が、彼女を殺してしまったのだと今も考える。
なぜなら、この10日後に妻は自死してしまうのだから、、、、、。
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