妻が彼女だった頃。
彼女と付き合って三年。
会社の売上げも順調に回復し、もうすぐ彼女の誕生日。
これまで仕事で苦しい時、精神的に彼女には支えられてきた。
今度の誕生日に、いよいよプロポーズをしようと思った。
指輪は買った。
どこでプロポーズしようか?
ディナーに行く店か?車の中か?
どうせなら、ずっとなくならない場所がいいな。
テーマパークとか店でもいいけど、将来なくなっちゃう事もあるし、、、。
などと悩んでるうちに誕生日が来てしまった。
誕生日はディナーを一緒に食べて、ポーチをプレゼントした。
結局その夜は、普通に彼女を家まで送り届けて解散となった。
彼女は心なしか寂しそうに見えた。
こないだ見つけた彼女の日記に、その日の事が書いてあった。
昨日誕生日を迎えました。
実は彼氏からプロポーズが・・・あるのではないかと期待していたのですが、
なかったです(泣笑)
今回思ったのは、期待はしすぎると、失望も大きいって事。
元々「期待」は自分勝手なものだから、誰も何も悪くはないんだけど。
イタリアンのコース食べて、プレゼントにポーチもらって。
なのにそれ以上を望んでしまって、自滅。
付き合ってるだけでも十分幸せは貰っているけど、、、、
欲が出ました
やはり彼女もこの時プロポーズされる事を期待していたようでした^^;
そして予定より一週間遅れたけど、場所を決めた。
恐らくこれから先もずっとある場所で、夜景が綺麗なところがいい。
最適な場所があった。
岐阜城の展望台でプロポーズしようと思った。
いつもはロープウェイが6:00で終わってしまうが、ちょうどその日から一週間、初めての試みで夜10:00まで営業されているとの事だった。
彼女を迎えに行って、高速に乗ろうとしたら車がノッキングしてエンストしてしまった。
10年落ちのフォレスターで、前から調子が悪かった。
「今日を逃したら、プロポーズがまた先になる。今日絶対しないと」
何とか実家まで行き、親父に頼んで車を借り、岐阜に向かった。
ちょうど夕方に岐阜城に着いた。
ロープウェイに乗って、上まで行った。
彼女の手をつないで、階段を一歩一歩登った。
昔デートで行った養老の滝の事を思い出していた。
あの時も二人で長い山道を登ったっけ。
今ままでずっと着いてきてくれた。
これからもこうやって二人で一緒に歩いて行くんだ。
日も暮れて来たので、山頂のレストランで食事する事にした。
まだ夜間営業の事はあまり知られてなかったみたいで、店に入った時は私たち二人だけだった。
貸切状態だった。
食事をしていたら、照明が急に落ちてダウンライトだけになった。
窓から見える夜景がより一層綺麗に見えた。
店を出て、外の展望台まで行った。
ちょうどゴールデンウィークの初日だった。
周りは一面の夜景。
少し肌寒い風が吹いている。
夜景を見てる人たち数人と、夜景をひたすら撮影してるおじさんが一人いた。
「しばらく夜景を見て、この人たちがいなくなったらプロポーズしよう。」
しばらくすると、大分人は減ったけど、写真おじさんだけは、すぐ後ろで相変わらず夜景を撮りまくっている。
「おじさん早くどっか行ってくれないかな」
その後さらにしばらく夜景を見てたけど、写真おじさんは全然場所を変えない。
その時、ふいに花火が上がった。
恐らくゴールデンウィークのイベントか何かだろう。
「あっ!花火だよ!すごいね。綺麗だねー!」
彼女が言った。
短い時間だったけど、すごくロマンチックだった。
このタイミングしかない!
手すりの前で夜景を見ている彼女の後ろから、抱きしめるようにして言った。
「あみちゃん、今までずっと俺についてきてくれてありがとう。
これからもずっと一緒にいて下さい。
俺と結婚しよう。」
そういって彼女の左手を取って、薬指に指輪をはめた。
「本当に私でいいの?こんな私でいいの?」
「あたりまえだよ。」
そう言って夜景の中、二人でキスした。
もう写真おじさんの事は気にならなくなった。
ロープウェイで降りて、駐車場の車の中まで戻ると、彼女が言った。
「ねえ!もう一回プロポーズ言って!」
「えっ!もう一回言うの?」
「うん。忘れたくないからもう一回言って。」
車の中で、もう一回プロポーズする事になった。
この時彼女にはめた指は、だいたいのサイズのファッションリングだった。
プロポーズの為だけに買った指輪で、本当の婚約指輪を買うまでのダミー。
「ダミーリングだからね」と言って彼女に渡した。
彼女はこの指輪を気にいってくれていて、婚約指輪が出来るまでずっとつけていてくれた。
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