14.彼女の誕生日に | いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

いつかまた君と会う日のため(自殺・自死遺族ブログ)

2013年12月、最愛の妻をうつ病による自死で亡くしました。
結婚して1年1ヶ月、あまりにも短すぎました。
体に障害があったけど、懸命に生きていた妻。
妻の事を忘れない為、初めてブログを書きます。

妻が彼女だった頃。


彼女と付き合って三年。

会社の売上げも順調に回復し、もうすぐ彼女の誕生日。


これまで仕事で苦しい時、精神的に彼女には支えられてきた。


今度の誕生日に、いよいよプロポーズをしようと思った。


指輪は買った。

どこでプロポーズしようか?

ディナーに行く店か?車の中か?

どうせなら、ずっとなくならない場所がいいな。

テーマパークとか店でもいいけど、将来なくなっちゃう事もあるし、、、。


などと悩んでるうちに誕生日が来てしまった。



誕生日はディナーを一緒に食べて、ポーチをプレゼントした。


結局その夜は、普通に彼女を家まで送り届けて解散となった。

彼女は心なしか寂しそうに見えた。



こないだ見つけた彼女の日記に、その日の事が書いてあった。




昨日誕生日を迎えました。


実は彼氏からプロポーズが・・・あるのではないかと期待していたのですが、
なかったです(泣笑)

今回思ったのは、期待はしすぎると、失望も大きいって事。


元々「期待」は自分勝手なものだから、誰も何も悪くはないんだけど。


イタリアンのコース食べて、プレゼントにポーチもらって。


なのにそれ以上を望んでしまって、自滅。


付き合ってるだけでも十分幸せは貰っているけど、、、、

欲が出ました



やはり彼女もこの時プロポーズされる事を期待していたようでした^^;



そして予定より一週間遅れたけど、場所を決めた。


恐らくこれから先もずっとある場所で、夜景が綺麗なところがいい。


最適な場所があった。

岐阜城の展望台でプロポーズしようと思った。


いつもはロープウェイが6:00で終わってしまうが、ちょうどその日から一週間、初めての試みで夜10:00まで営業されているとの事だった。


彼女を迎えに行って、高速に乗ろうとしたら車がノッキングしてエンストしてしまった。

10年落ちのフォレスターで、前から調子が悪かった。


「今日を逃したら、プロポーズがまた先になる。今日絶対しないと」


何とか実家まで行き、親父に頼んで車を借り、岐阜に向かった。



ちょうど夕方に岐阜城に着いた。



ロープウェイに乗って、上まで行った。

彼女の手をつないで、階段を一歩一歩登った。


昔デートで行った養老の滝の事を思い出していた。

あの時も二人で長い山道を登ったっけ。

今ままでずっと着いてきてくれた。

これからもこうやって二人で一緒に歩いて行くんだ。



日も暮れて来たので、山頂のレストランで食事する事にした。


まだ夜間営業の事はあまり知られてなかったみたいで、店に入った時は私たち二人だけだった。

貸切状態だった。


食事をしていたら、照明が急に落ちてダウンライトだけになった。

窓から見える夜景がより一層綺麗に見えた。






店を出て、外の展望台まで行った。

ちょうどゴールデンウィークの初日だった。


周りは一面の夜景。

少し肌寒い風が吹いている。

夜景を見てる人たち数人と、夜景をひたすら撮影してるおじさんが一人いた。


「しばらく夜景を見て、この人たちがいなくなったらプロポーズしよう。」



しばらくすると、大分人は減ったけど、写真おじさんだけは、すぐ後ろで相変わらず夜景を撮りまくっている。

「おじさん早くどっか行ってくれないかな」


その後さらにしばらく夜景を見てたけど、写真おじさんは全然場所を変えない。



その時、ふいに花火が上がった。


恐らくゴールデンウィークのイベントか何かだろう。

「あっ!花火だよ!すごいね。綺麗だねー!」

彼女が言った。


短い時間だったけど、すごくロマンチックだった。


このタイミングしかない!



手すりの前で夜景を見ている彼女の後ろから、抱きしめるようにして言った。


「あみちゃん、今までずっと俺についてきてくれてありがとう。

これからもずっと一緒にいて下さい。

俺と結婚しよう。」


そういって彼女の左手を取って、薬指に指輪をはめた。


「本当に私でいいの?こんな私でいいの?」

「あたりまえだよ。」


そう言って夜景の中、二人でキスした。


もう写真おじさんの事は気にならなくなった。



ロープウェイで降りて、駐車場の車の中まで戻ると、彼女が言った。

「ねえ!もう一回プロポーズ言って!」

「えっ!もう一回言うの?」

「うん。忘れたくないからもう一回言って。」


車の中で、もう一回プロポーズする事になった。



この時彼女にはめた指は、だいたいのサイズのファッションリングだった。

プロポーズの為だけに買った指輪で、本当の婚約指輪を買うまでのダミー。


「ダミーリングだからね」と言って彼女に渡した。


彼女はこの指輪を気にいってくれていて、婚約指輪が出来るまでずっとつけていてくれた。





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