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恋愛小説『Lover's key』
#18-1 偶然の一致(yua's side)
「弟になるかもしれなかった、、、って……どうして?」
テルくんの話には深く触れたくなかったのに、、、意味深な発言が気になって即座に聞きかえしてしまった。
聞きたいような。聞いたら後悔するような。。。
心がどっち付かずでざわついているのは確かだったけれど、私は緊張しつつも進一の返答に耳を傾けた。
「うん、、、。実はさ、俺の親父と輝の父親が知り合いってことは由愛も知ってるだろ?」
私はひとつ、こくりと頷いた。
それは知ってる。。。
前に進一がそんな話してて、、、それでお父さんから頼まれて進一がテルくんの家庭教師やることになったって言ってたから。
「俺の親父達って大学の同級生だったんだけどさ、輝の母親も同じ大学の学生で……。なんか……、三角関係な事情があったらしいんだよね」
───ガチャン。
『三角関係』という言葉に大きく反応して、私は思わず持ってたお茶碗をテーブルに強く音を立てて置いてしまった。
進一もその音に驚いた様子だった。視線が『大丈夫か?』って言ってる気がする。。。
だめ…。こんなに動揺してる姿見たら進一に何か感づかれる。そう思った私はすかさず、
「あ……ごめんね、、、今ちょっと手が滑っちゃって、、、。それで?」
と、苦し紛れな言い訳と精一杯の笑顔で切り替えした。
「輝の母親、結構キレイな人だったらしくてさ、なんかハーフ?クォーター?どっちか忘れたけど、とにかく純な日本人じゃなくて、大学行きながらモデルの仕事もしてたんだって。まぁ、、、親父達は友達同士で同じ人を好きになったってことだよな」
私は息を呑みながら、進一から出てくる言葉に聞き入っていた。
「俺、あんまり親父からそういう恋愛っぽい話を聞いたことなかったから最初は驚いたんだけど。俺の姉貴が結婚してなくて家にまだ居た頃、食卓で輝の話になって、それからなんで輝の父親と友達なのかとかって話を聞いてくうちに姉貴がうまいこと聞き出してくれてさ」
進一は「姉貴らしいよな…」って、関心した顔をしながらまた話を続けた。
「2人で同じ人を好きになって、、、なんか色々あったらしいけど、結局は輝の父親と結婚することになったんだって」
「・・・。」
私は返す言葉も見つからなかった。親同士が三角関係、、??この話、、、テルくんも知ってるのかな。
境遇があまりにも似すぎてる。こんな風に親と子の境遇が偶然にも重なるなんて、、、そんなことってあるの?
しかも、、、お母さんが混血って…。
この間テルくんの家で会った優しそうなお母さんはハーフでもクォーターでもない。
まるっきり日本人だったと思うけど。。。
あれはテルくんの本当の母親じゃないってこと?
進一から聞かされる話全てが、驚きの連続だった。
父親同士の三角関係のことが一番気になったけれども、その話に何か質問をしたら、テルくんとのことが進一に知られてしまう気がして怖かったから、私はテルくんのお母さんの話に質問の焦点を当てた。
「ねぇ…。この間、テルくんの家に行った時に私が挨拶したお母さんって…日本人だったと思うけど…?」
私の目の前できゅうりの浅漬けを美味しそうにポリポリと頬張っている進一にそう尋ねてみた。
「ああ、あの人は再婚した母親みたいだね。輝とは正式に血が繋がってないんだ。だからかわかんないけど、輝は義母のことを『美佐さん』って呼んでたな。あんまり義母とも会話しないみたいだし」
・・・そうだったんだ。。。知らなかったよ。。。。輝くんのお家は複雑なんだ。。。
「だからさ、もしかして俺の親父と輝の母親がその当時上手く行って結婚してたら、輝は俺の弟になってたかもしれないだろ??……まぁ実際はそんなことありえないけど、運命が違ってたらと思うと何か深く考えちゃうよな」
進一はあははと笑いながらまたご飯を食べ始めた。
でも私はそんな話に笑えるはずもなく、ただ目線をおかずに落とすしかできない。。。
「由愛、、、どした?俺、ご飯おかわりしてもいいかな?」
進一に茶碗を差し出されて我に返る。
私は席を立ってそそくさとご飯をよそって戻ってきた。
茶碗を渡してから席に着き、自分もゆっくりと箸を持ちご飯を食べ始めたけれども頭の中は『三角関係』の話が離れなかった。