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恋愛小説『Lover's key』
#15-1 相談(yua's side)
進一からの電話を切り、私はまたベッドにごろんと横になった。
携帯は握り締めたまま、天井を見上げる。
───テルくんに好きだと告げられてキスまでされた日から3日が経っても、相変わらず私の頭の中はあの時の出来事が離れない。
考えすぎて眠れない日々が続いてる。
あんな風に誰かから激しく『好きだ』と言われたのは初めてで。
しかも、彼氏が居るって知っていながら堂々とキスまでしてきたテルくんはある意味大物だと思った。
そんなだから余計に心がざわつく。
『連絡しないから。』
そう言い放ったテルくん。一体何を考えてるの??
考えるの止めたいのに、『バイバイ』の一言も気になる。
『バイバイ』ならそのほうがいいじゃない。私には進一が居るんだから。だけど、自分の中にそれじゃ嫌だとだだをこねるもう一人の私がいる。
心の鍵をスンナリと開けて行ったテルくん。でも、開けっ放しで、一体どうしろというの??
昨日の深夜。
進一からメールが入ったのに返せなかった。
そして今も朝一で進一が電話をくれたっていうのに、後ろめたくてどう喋っていいかわからなくて。
明日は看護婦の仕事をしている母親は夜勤だから、いつもみたいにウチで夕飯作ってあげようと思って誘ったけど。後ろめたい自分を隠すために何だか進一のご機嫌とりをしてるみたいで、そんな自分が嫌だった。
本当に、このままじゃダメだ・・・。
ベッドの上でゴロゴロしながらあれこれと考えてみても、全然スッキリする答えが見つからない。
ゴールにたどり着かない複雑な迷路を脳内で行ったり来たりしている感覚。ひとりじゃ、とても抜けられそうにない。
・・・誰かに相談したい。
ふと、親友の香帆の顔が浮かんだ。
前に一度、テルくんに抱きしめられたことは話してあったから、内容は理解してくれると思う。今日は私は講義が無い日だけど、確か香帆は午前中に講義があったはず。
そう思ったら急に会いたくなって、ベッドから勢い良く起き上がった。
朝の9時。パジャマのままリビングに行っても誰もいない。お母さんはもう病院に出勤しているし。
テーブルには菓子パンが何個か置いてあったけど、全然食欲がわかなかった。
顔を洗ってから自室に戻って、香帆に【相談したいことがあるんだけど、講義の後会えるかな?】ってメールを打ってみると。すぐに【いいよ!】と返信があった。
私は急いで洋服に着替えて化粧も済ませ、身支度を整えるとすぐに家を出た。
*******
「はぁ??キスされたぁ???」
待ち合わせをした大学近くのカフェで、ホットサンドを食べながら香帆は目をパチクリしていた。
「ちょっと香帆!声おっきいよ!!」
私は唇に人差し指を当て、軽くシーっと言いながら周りを見回した。
「はーーー・・・。イマドキの高校生は手が早いね~。だって再開した日に抱きしめられて、次はキスでしょ?このペースで行くと次会うことがあったら間違いなくラブホだね」
香帆は笑って言った。
「ちょっと、ヘンな事言わないでよ・・・。これでも結構悩んでるのに」
私はカップを手に取り、ホットミルクティをごくんと一口喉に流し込んだ。
「はは。ごめん、ごめん。でもさ、由愛は何を悩む必要があるの??まぁ実際いきなりキスされちゃ驚くだろうけどさ、由愛が好きなのは櫻井さんでしょ?」
「・・・」
「・・・え?って。あれ?違うの??」
香帆にそう言われて、私の表情が曇った。『好きなのは進一だけ』と即答できない自分が居る・・・それだから困っているんだ。
「なんかね、進一のこと・・・本当に好きなのか自分でも分からなくなってきちゃってるんだ」
私はそう告げると、今まで自分が不安に思いながら付き合っていたことを洗いざらい香帆に打ち明けた。
自分が本当に進一に好かれているのか分からないこと。付き合ってても2人の間に壁がある気がすること。今まで意識的に甘えることができなかったこと。進一に嫌われないように付き合ってる自分が嫌なこと・・・。
香帆は全てを黙って聞いていてくれた。