以前、仕事関係の飲みの場で

酔っ払ったある男性が

とんでもないことを言い出した。

 

A子ちゃんは俺のことが好きだったんだよねー。

 

周りが盛り上がる。

 

えー、マジでー!

 

調子に乗って、詳細を説明するその男性。

 

A子ちゃんはもちろん、その場にはいない。

 

そんなこと、こんな飲み会でバラすなんて……。

 

無粋の極みだ。

 

私は、酔っ払った頭でそう思った。

 

 

 

 

ところで、

私が20代の頃に勤めていた会社に

とっても素敵な女性がいた。

 

当時、40代後半くらいだったと思う。

高校生の息子さんがいる、シングルマザー。

 

いわゆる"美人"じゃないけれど

ファッションセンス抜群で

雰囲気が女っぽく、とっても目をひく人だった。

 

そして、とにかくモテることで有名だった。

 

女っぽさと、圧倒的な包容力。

それでいて、結構ハッキリものを言う潔さ。

 

若いうちは

絶対太刀打ちできない魅力って

こういうことなんだろうな、と当時思ったものだ。

 

 

 

 

ある日、ランチを食べていたとき

その方がこんなことを言った。

 

始まらなかった恋ほど、色っぽいものはないわよね。

 

恋は一度始まってしまうと

現実的で色っぽくない部分が増えてくる。

 

だから、始まらなかったのは

考えようによっては、とても贅沢な思い出だと。

 

彼女はこう続けた。

 

だから私は

私を好きだと言ってくれた男のことは

死ぬまで忘れないわ。

 

なんてかっこいいの。

 

それに比べ冒頭の男性ときたら……。

 

始まらなかった恋。

 

確かにそれは、

ぞんざいに扱おうと思えば、扱える。

 

でもだからこそ、その扱いには

その人の賢さとか、奥深さとか

そういう人としての資質みたいなものが

顕著に表れるんじゃないかと思ったのだった。

 

 


 

4月19日に書籍が発売になりました。

あちこちでレビューや感想を書いてくださっている方が増えていて、とても嬉しいです。ありがとうございます!

 

 

 

Twitterフォロー、ありがとうございます。

 


Facebookで、リリーの日常更新中!