どっちも辛い | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

ゆいに促されて一緒に入る小百合。
今日も、ゆいにもたれてニコニコ笑ってる。

ゆいは小百合をチラ見して
「で、今日はどうしたの?」

「うん・・・。ななっちね、竹本君が自分のことを思えば思うほど辛いって」
「うん」

小百合は、菜々に話したことの全てをゆいに話した。

「そっか。菜々ちゃん、小百合への気持ちに踏ん切りをつけに来たんだね」
「うん。私があまりにもななっちと竹本君をくっ付けようとするから、どうして?って聞かれたの」
「うん。どうして?」

「それはね、竹本君とゆいが似てるから。好きな人には一生懸命で大切に思ってくれる気持ちが溢れてて。ゆい?あのね、竹本君がななっちのこと話す時ってゆいに似てるんだ。
あの時は相手がななっちだって知らなかったから、そこまで好きになる相手って誰なんだろうって。
それが、ななっちだって分かった時、竹本君ならななっちのこと大切にしてくれるだろうなって思って。それで」

ゆいは、小百合を抱きしめた腕を変えて
「そうだったんだ。私は竹本君と似てるんだ」
「ゆい、そういう意味じゃないの。竹本君ね、ななっちが交際をOKした時、涙ぐんでたの。
あの時のゆいみたいだなって。
私ね、ゆいのこと、どうしてもっと早く好きにならなかったんだろうって。
好きじゃ無かった時間が凄く勿体ない気がしたんだ。
もっと早く好きになればその分楽しい日々が過ごせたのにって」

「小百合、でも、その時期があって今があるんだし、悔やむことはないよ」
「うん」

「小百合、のぼせる前に出よう」

ゆいは小百合の髪を拭きながら
「菜々ちゃんは小百合の話を分かってくれたの?」
「うん。それでね・・・」
「うん」

ゆいは少し乱暴に髪を拭いて、
「こっちも拭いてあげる~❤」と言って、小百合の体も拭き始めた。
「ゆい~、くすぐったいって!ちょっと!」
「良いじゃん。拭かせてよん❤」

「分かった、分かった」

小百合は、
「ななっちね、もう、さゆっちって呼ぶの止めるって言うの。今までこの呼び名で私を独占してた気持ちだったけど、今日で踏ん切り付けたいからって」
「それで、小百合は何て?」
「私は、今まで通り呼んで欲しいし、私は今まで通りななっちって呼ぶよって」

「うん、そうだね。呼び名を変えなくたって、菜々ちゃんはもう大丈夫だよ」

「それでね、最後に、一度でいいからギュッてしていい?って」
「してあげたの?」
「うん。抱きしめながら『ありがとう』って言われたの。だから私も受け止めて背中を擦ってあげた。ななっち、泣いてた」

「そう。菜々ちゃん、辛かったね。でも、小百合も同じように辛かったはず」
「だからね、最後にひとことだけ、ちゃんと言ったの」

「私のこと好きになってくれてありがとうって。これからも大切な親友として付き合っていきたいって」
「菜々ちゃんは何て?」
「私の気持ちに逃げないでいてくれてありがとうって・・・」

「小百合?どうしたの?」
小百合はゆいの胸で大泣きした。

小百合の気持ちが分かるゆいは黙って泣き止むまで、小百合を抱きしめた。

「ゆい、ゴメン。ありがとう」
「ううん。大好きな人を諦めなきゃいけないことがどんなに辛いことか。小百合は最後まで菜々ちゃんのことを思ってたんだね。うん、それでいい。それでいいんだよ、小百合」

小百合はりおに会って、言われた一言の返事をしたこともゆいに話した。
「そう。りおの思い過ごしだったってことね。でも、りおがそう思うってさ~、小百合がそういう言い方をしてたってことでしょ?もぉ~。小百合は誰にでも優しくするから!だから誤解されちゃうんじゃんか!」

「だって、良いと思って言ったんだもん。そんな風に思うことがおかしいよ。
でも、それでゆいが悲しむなら、ゴメン。気をつける」

「すっかり遅くなっちゃったね。歯を磨いて寝ますか?」

二人は並んで歯を磨きながら、明日のことをベラベラ喋っていた。

ゆいがベッドの上で、クリームを塗ろうとフタを開けると
「ゆい?今日付けるの?」
「ん?どうかした?あ~、今日は止めとく。明日の朝にしようかな」
小百合は部屋の灯りを消してベッドに入った。

「小百合、おいで。私は小百合に辛い思いはさせない。でも、もしそうさせてしまったら、その時は私を叱ってほしい。その何倍も何十倍も小百合に愛で返したい」

「ゆい?あり得ないことだと分かってるけど、もし私がゆいへの気持ちを諦めなきゃいけなくなったらって想像したら、凄く怖かった。生きてられないって思った」

小百合はゆいにぴったりくっついて何度も名前を呼んだ。
「小百合、私は小百合にそんなこと言わせない。絶対に。だから私に付いて来て。ずっと一緒だから」

ゆいは小百合を抱きしめ、優しくキスをした。
「小百合、今日は小百合が寂しくないようにずっと小百合のこと愛してあげる」
「ゆい~!」
「小百合、大好きだよ。いっぱい、いっぱい愛してるから」

その夜、小百合はゆいからたくさんの愛をもらった。