夫がどうしてもフランスで働きたかったのには訳がある。

フランスが好きなのだ。

なんて書くと、あまりにも単純なんだけど、私の目から見て、彼はもちろんフランスが好きなのだが特に

“フランス語”が好きなのだ。


彼がフランス語にかける姿勢は並ではなかった。


大学の第二外国語でフランス語を取った彼は、卒業してからもどこかフランス語教室に行く訳でもなく、NHKラジオ講座を聞いていた。

はじめはともかく、しばらくするとテキストも買わなくなり、そして40度の熱がある時にも私と大ケンカした時もそれを聞かない日はなかった。

通勤時間に暗唱し、お風呂に入っている時、何か聞こえてくるので”何?”と驚いて近くに行ってみると、ずっとフランス語で独り言を言っているのだった。




普段フランス語を話す機会は全く無いので、長野オリンピックの時にボランティア通訳をすると言って、会社を何日も休み、行ってしまった。
ボランティアなので、もちろんお金はもらえないけれど、仏検、 DELF,DALF,,,などを無料で受験できるという特典が付いたのだ。
"
無料”という言葉が大好きな彼はそれからしばらく会社から帰ってからも猛勉強していた。会社から帰ってきて、真夜中が過ぎてもフランス語をやっている彼。



そして彼は、仏検1級、DELF.DALF,通訳案内業に合格した。
しかも、特別賞の設定されている仏検、DALF,DELFは白水社賞、東京日仏学院賞などの優秀賞で表彰された。
 
東京日仏学院賞の特典というのは、1学期間東京日仏学院に無料で通えるというものだったのだけど、
「でも、交通費はかかるなー。」と言いながら、彼は商業フランス語を選択し、その後その試験にも合格した。


その後、仏検1級合格者体験記を書いて、その翌年の仏検の解答用紙にも載った。


そんな中、会社はフランスには所長クラス以外は日本人駐在員を置かないと決めたのだった。




時代が違っていたら??

フランスに行ける可能性が高いと思い選んで入った会社・・・。

彼の仕事は経理だから、フランス語の経理の本だってよく読んでいた。

これだけの努力が報われないということがあるの?



私だったら、その会社の決定の後、フランス語の勉強なんて止めてしまうに違いない。

しかし、彼は、フランスに行かせられないと言われたその日さえもフランス語を勉強していた。